IVRとは?電話自動応答システムの導入方法やメリットについて解説します
IVRとは、コンピューターが電話応答を自動で行うシステムであり、コールセンターを始め、多くの業種で導入されています。
今回は、IVRの基本的な仕組みを始め、導入するメリット・デメリット、具体的な活用方法、IVRを選ぶ際のポイントについて解説します。記事後半では、IVRに似たおすすめのシステムについても解説しますので、IVR導入を検討されている方の参考になれば幸いです。
IVRとは
IVRとは「Interactive Voice Response」の略であり、電話自動応答システムを指します。
顧客からの電話に自動音声でガイダンスを流したり、必要に応じてオペレーターに転送したりする仕組みで、カスタマーサポートなどで多く導入されています。
以前はビジネスフォンに専用装置を設置するタイプが一般的でしたが、インターネットを介して手軽に利用できるクラウドタイプを導入する企業も増えています。
IVRの仕組み
IVRは、着信時にあらかじめ用意しておいた音声ガイダンスを流し、発話者にプッシュボタンで選択してもらい、選択された番号によって着信先を振り分けることができる仕組みです。
「Aのご用件の方は1を、Bのご用件の方は2を‥‥‥」といったようにガイダンスを作成します。番号ごとに適切な窓口へ着信を振り分けるほか、簡単な問い合わせに対しては音声ガイダンスを流して応答する使い方もできます。
IIVRの種類
IVRは、以下の3つの種類に分けられます。
- オンプレミス型
- クラウド型
- ビジュアル型
それぞれ特徴が大きくことなりますので、自社で導入するイメージを持ちながら読み進めていただくと良いかと思います。
1.オンプレミス型
自社にIVR専用の装置を設置するタイプのIVRです。
独自にシステムを構築するため、社内のニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできることや、社内で管理している顧客情報と連携しやすく、電話番号をそのまま利用できることがメリットです。ただし、環境構築に数か月以上かかることや、設備の用意が必要であること、専用機の導入や専用回線の設置工事費・サービスの月額利用料など、システムの維持・運用にかかるコストが高くなるという点に注意が必要です。
2.クラウド型
インターネット回線を利用するタイプのIVRであり、専用装置を設置する必要がありません。
そのため、初期費用を抑えられ、利用開始までの時間も短縮できます。IVRの機器はクラウド環境にあるため、インターネット環境があればどこからでも接続可能です。オンプレミス型と比べて導入から運用までのハードルが低く、コールセンターでもクラウド型を使う企業が増えています。一方で、長期間利用した場合にオンプレミス型よりも維持費が高くなる可能性があることや、オンプレミス型と比較するとセキュリティリスクがあることもデメリットです。
ただし、個々のクラウドサービス上でセキュリティ対策は施されており、コールセンターで導入されているIVRの過半数がクラウド型であると言われています。
3.ビジュアル型
電話ではなくスマートフォンやパソコンなどの画面上でメニューを選択してもらい、自動応答するタイプのIVRです。
通常のIVRのように音声ガイダンスを終了するまで聞かずとも、視覚的に操作できるため聞き逃すこともなく、多くのユーザーにとって使いやすいシステムと言えます。また、チャットボットやFAQへの案内にも利用できるので、問い合わせをせずとも顧客自身が問題解決できる仕組みも作りやすいです。。しかし、開発コストがかかることや、専用アプリのインストールが必要な場合もあるといった課題もあります。
VRUとの違い
VRUは「Voice Response Unit」の略であり、音声応答装置などを指します。
IVRは一般的な自動音声での応答を意味しますが、VRUは発信者の情報を保管し、それに応じた誘導を行うといった、個別の保管情報の有無に違いがあります。
IVRの機能
IVRの代表的な機能を4つご紹介します。
- 音声ガイダンス機能
- 番号分岐機能
- 電話転送機能
- SMSでの自動応答機能
音声ガイダンス機能
着信した際に自動で音声案内を流す機能です。
例えば、営業時間外にかかってきた電話に対し、受付時間の案内や緊急対応についての案内などを流すことができます。また、問い合わせ内容が簡単だったり定型的な場合にあらかじめ用意した回答を流し自動応答することや、混雑時には新たにかけ直してもらうように自動音声で依頼するといった使い方も可能です。
番号分岐機能
電話をかけてきた顧客に目的に合わせて番号を選択してもらい、自動で該当部署に振り分ける機能です。別名シナリオ分岐・着信フローなどとも呼ばれ、複数のオペレーター間でたらい回しにすることなく、目的の部署にスムーズに誘導することができます。
電話転送機能
会社などの固定電話にかかってきた電話を、自宅やスマホなどの携帯電話に転送できる機能です。営業時間外の緊急対応が必要な際に活用したり、在宅でも電話業務を行うことができるようになります。
SMSでの自動応答機能
顧客からの着信時に記録された携帯電話番号に、SMS(ショートメール)を送信する機能です。予約日時などのリマインドや、回線混雑時に画面上で対応が可能な特設サイトのURLを自動送信するといった使い方ができます。
IVRのメリット
ここではIVR導入によって得られるメリットをご紹介します。
代表的なメリットは以下の4つです。
- 機会損失の防止
- オペレーターの負担軽減
- 顧客満足度の向上
機会損失の防止
IVRは24時間365日、夜間や営業時間外などオペレーター不在時でも対応が可能なため、受付時間内に電話がかけられないといった顧客にも対応できます。
例えば、よくある問い合わせには音声ガイダンスで自動応答することや、資料請求の案内を行うといった使い方ができるほか、緊急連絡先に転送する機能を活用するなど、取りこぼしをなくし、機会損失を防ぐことに繋がります。
オペレーターの負担軽減
IVRの音声ガイダンスで、適切な担当部署への自動振り分けや自動応答ができるため、窓口間違いや業務に不要な電話への応対の負荷や取り次ぎにかかる労力や時間を軽減・短縮できます。
オペレーターの負荷が軽減され、業務効率化にもつながり、必要な業務に専念しやすくなります。
顧客満足度の向上
IVR導入により、担当部署へスムーズに案内されることや、営業時間外でも自動応答で回答を得られるといった顧客体験は満足度の向上にも繋がります。
不要な待ち時間やたらいまわしを防ぎ、簡単な問い合わせへは自動応答の回答ですばやく問題解決でき、すぐにオペレーターにつながらなくても折り返しの予約ができるなど、顧客の不安を軽減する効果が期待できます。
IVRのデメリット
IVRには以下の2つのデメリットがあります。
- 顧客がストレスを感じる可能性がある
- 正確なシナリオ設計が求められる
以下で詳しく解説します。
顧客がストレスを感じる可能性がある
IVRは音声ガイダンスを最後まで聞かないと進めない、聞き漏れがあった場合には最初から聞き直しが必要など、顧客がストレスを感じる可能性があります。
ガイダンスの質問が多い場合は担当者に繋がるまでに時間がかかり、混み合っている時間帯には番号を選択したあとに待たされる場合もあります。
こういったデメリットによって、顧客の利便性を損ね満足度を下げる要因となるため対策が必要です。
適切なシナリオ設計が求められる
IVRの利用にはシナリオ設計が必要ですが、設計が適切でなければ効果を発揮することができません。
IVRによる案内先が大まかすぎても、複雑すぎても顧客が判断できなくなってしまう可能性があり、結局「その他のお問い合わせ」を選ぶ人が増え、オペレーターへの入電が集中してしまいます。
利用者が最終目的までスムーズに進めるような、適切なシナリオ設計が必要不可欠です。
IVRの具体的な利用場面
ここでは具体的にIVRがどのような場面で活用されているかをご紹介します。
コールセンター
最もIVRが活躍しているのは、コールセンターではないでしょうか。前述のように、音声のガイダンスを使い自動でアナウンスをしたり、問い合わせ内容ごとに適切な担当部署に振り分けるなどの役割を担っています。
郵便局や宅配業者
郵便局や宅配便の再配達受付サービスにも、IVRが利用されています。
利用者は専用ダイヤルに問い合わせ、再配達の希望の時間帯を指定したり、受取先を変更したりすることができます。
病院・クリニック
病院やクリニックといった医療現場でもIVRを活用することができます。
患者が集中する時間帯は電話が取りにくいことや、電話対応に追われていると患者を待たせしてしまうこともあります。予約など自動案内で対応できるものをIVRが担い、必要な場合のみスタッフが対応をすることで、業務の効率化と患者の待ち時間のストレス軽減が期待できます。
宿泊施設・ホテル
IVRを滞在日時や連絡先などといった、予約情報の入力に役立てることができます。
音声案内に従い、宿泊予約に必要な情報を入力してもらうことができれば、予約受付業務を効率的に行うことができます。また、顧客情報の入力ミスや漏れのリスク軽減にも効果的です。
IVRの選び方
ここではIVRを選ぶ際のポイントについてご紹介します。
- 種類を決める
- 必要な機能を確認する
- 使いやすさを考慮する
- サポート体制が充実しているか確認する
1.種類を決める
まずはそれぞれの特徴を考慮し「オンプレミス型」「クラウド型」「ビジュアル型」の中で、自社に合ったものを決定します。
特徴の他にも、自社の顧客層が使いやすいかという点も考慮すると良いでしょう。
2.必要な機能を確認する
自社に必要な機能が限られている場合には、最低限の機能だけが備わったものを選定することで、使いやすさや費用の削減に繋がるかもしれません。
ただし、価格が安いという理由だけで選定してしまうと、あとから必要な機能が出てきた場合に対応出来ない、といったことにもなりかねません。
まずは自社に必要な機能がしっかり備わっているか、将来的に機能の追加が可能か、また不要な機能が必須で付いていないか、などといったところにも注意して選定するようにしましょう。
3.使いやすさを考慮する
運用側、利用者側が共に使いやすいと感じるIVRが理想的です。
運用側の使いやすさでは、カスタマイズを自社で行う必要があるか、プロバイダーによってカスタマイズしてくれるかといった点にも違いがありますが、どちらが使いやすいと感じるかは、運用者によって異なります。
利用者側では、音声ガイダンスや操作が分かりやすいものに設定できるか、といったところがポイントです。定型的なセリフの言い回しが分かりやすいか、変更できるかといったところにも確認すると良いでしょう。
4.サポート体制が充実しているか確認する
導入後のサポート体制が充実しているかといったところも重要なポイントです。
エラーが発生した際のみサポートをしてくれる場合、操作方法を含め利用方法の提案なども行ってくれる場合など、ベンダーによってサポート体制はさまざまです。
特に初めてIVRを導入する場合にはサポートが不可欠ですので、自社にとって必要なサポートが備わっているものを選定するようにしましょう。
IVRに似たおすすめのシステム
電話対応での業務効率化を検討している方には、以下のようなシステムもおすすめです。
- ボイスボット(音声対話AI)
- チャットボット(テキスト対話AI)
ボイスボット(音声対話AI)
ボイスボットは、音声認識と対話型AIなどの技術を活用し、対話をするように音声で自動応答するシステムです。
こちらも主に電話対応に用いられており、IVRとの大きな違いは利用者が番号を選択して操作を進める必要がないところです。
ボイスボットは顧客の発話内容をAIが分析し、導き出した回答を音声で伝えるため、人と会話をするように応対することが可能で、よりスムーズな顧客対応が実現します。
チャットボット(テキスト対話AI)
チャットボットは自然言語処理やAIを活用し、チャット上で自動応答するシステムです。
お客様が入力した文章(テキスト)の意図をAIが解析し、テキストで回答します。主にスマートフォンやPCの画面上でコミュニケーションを行います。
ボイスボットとチャットボットでは、音声対応かテキスト応対かという違いがあります。
どちらにしても、顧客から多く寄せられる質問などに対し24時間自動で対応することができ、多くのコールセンターで活躍しているシステムです。
電話対応の業務効率化を検討されている方にはおすすめのシステムですので、こちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。
自社にあったシステムを導入し業務効率化をはかろう
IVRには「オンプレミス型」「クラウド型」「ビジュアル型」の3種類があり、それぞれ特徴が異なります。
IVRの種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
オンプレミス型 | ・顧客情報と連携しやすい ・セキュリティに強い ・電話番号をそのまま利用できる | ・初期費用が比較的高い ・設備の用意が必要 ・構築に数か月を要する |
クラウド型 | ・ネット環境があれば導入できる ・初期費用が比較的安い | ・長期利用すると維持費が高額になる可能性がある ・比較するとセキュリティが弱い |
ビジュアル型 | ・WEB上で利用できる ・テキストチャネルにもスムーズに振り分けることができる | ・設置場所が重要 ・場合によってはお客様をチャネル間でたらいまわしにしてしまうリスクがある |
導入する種類によってメリット・デメリットはさまざまですが、IVRを導入することで業務効率化や顧客満足度の向上などが期待できます。
しかし適切なシナリオ設計でなければ、かえって利用者のストレスになってしまう可能性もありますので、導入するにあたっては注意が必要です。また、電話対応の業務効率化を検討されている場合には、ボイスボットやチャットボットといったシステムも有効です。
さまざまなシステムと比較し、自社に合った方法を検討されてみてはいかがでしょうか。
トゥモロー・ネットが提供するCAT.AIは、ボイスボット(音声対話AI)とチャットボット(テキスト対話AI)を同時に利用できる最新の「ナビゲーション型」対話AIです。双方の利点を最大限に活かし、わかりやすくナビゲーションし、AI対応の完了率を向上していきます。
簡単にデモ体験も実施いただけますので、チャットボットの導入をご検討の際は是非お問い合わせください。
この記事の筆者
株式会社トゥモロー・ネット
AIプラットフォーム本部
「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、生成AIと連携したサービス「CAT.AI GEN-Bot」を筆頭に6つのサービスが含まれ、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。