【加入から請求まで】保険会社でのボイスボット活用例を紹介

投稿日 :2025.05.09  更新日 :2025.05.08

近年のAI技術の目覚ましい発展は、多くの産業で従業員の負担軽減や業務効率化を推進しています。特に保険業界では、顧客対応業務にボイスボットをはじめとするAIソリューションを導入する動きが活発化しており、その適用範囲は多岐にわたっています。

では、保険会社の業務において、ボイスボットは具体的にどのような場面でその真価を発揮するのでしょうか。

本記事では、保険会社におけるボイスボットの具体的な活用事例や導入のメリット、そして注意すべき点について詳しく解説します。

最後に、保険会社特有のボイスボットに関する課題と、それを解決できるツールについてもご紹介します。 ぜひこの記事を参考に、貴社でのボイスボット活用の可能性を探っていただけたら幸いです。

保険業界でボイスボット導入が進む背景

ボイスボットは多くの業界で導入が進んでいますが、特に保険業界はその傾向が顕著です。

保険業界は、他の業界と比較して電話による問い合わせ(架電・入電)の件数が多いという特性があります。加えて、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミック発生時や、大規模な自然災害発生後など、有事の際には保険金の請求や問い合わせが突発的に急増し、コールセンターの対応能力が飽和状態に陥りやすいという課題を抱えています。このような状況下では、既存のオペレーターだけでは対応しきれず、一時的な人員増強が必要となるものの、採用や教育には時間とコストがかかります。

こうした背景から、オペレーターの業務負担増加、顧客満足度の低下、そして増員に伴う採用・教育コストの増大といった課題を解決する手段として、高度な顧客サポートを自動化できるボイスボットへの期待が高まっているのです。

ボイスボットとは?

ボイスボットとは、AI(人工知能)や音声認識、自然言語処理などの先端技術を活用し、顧客からの電話問い合わせに自動で応答するシステムのことです。

仕組みとしては、まず顧客の声を音声認識技術でテキスト化し、次に自然言語処理でその内容を分析します。そして、内容に応じて回答を検索し、適切な回答を音声合成によって読み上げます。

ボイスボットは、オペレーターの業務効率化だけでなく、顧客にとっても「電話が繋がらない」といったストレスを軽減できるため、コールセンター業界で広く導入が進んでいます。

IVRとの違い

ボイスボットと混同されやすいものに「IVR(Interactive Voice Response)」があります。IVRは自動音声応答システムとも呼ばれ、プッシュボタン操作や簡単な音声認識に基づき、事前に録音された音声ガイダンスを流したり、適切なオペレーターに転送したりするシステムです。

ボイスボットがAIによって顧客の発言内容を理解し、会話形式で直接的に情報提供や問題解決を行うのに対し、IVRは主に、事前に用意された選択肢に沿った簡単な情報のアナウンスや、問い合わせ内容に応じた適切な窓口への振り分けといった役割を担います。ボイスボットはより柔軟で複雑な対話が可能である点が大きな違いです。

チャットボットとの違い

ボイスボットと比較されやすいものとして「チャットボット」があります。AIがリアルタイムで顧客とのやり取りを行う点ではボイスボットと同じですが、コミュニケーション手段が音声かテキストか、という点がボイスボットとチャットボットの違いです。

PCやスマートフォン画面などのWEBチャネルではチャットボットが適していますが、音声チャネルである電話での顧客対応の自動化はボイスボットが向いています。

保険会社がボイスボットを活用するメリット

保険業界特有の課題を踏まえると、ボイスボットの導入は以下のような大きなメリットをもたらします。

問い合わせ集中時にも対応可能な24時間365日受付体制の実現

ボイスボットを導入することで、人間のオペレーターを介さずに24時間365日、顧客からの問い合わせに対応できます。

これにより、大規模災害発生時や感染症拡大時など、保険金請求や問い合わせが殺到するような状況下でも、顧客を待たせることなく一次対応が可能となり、顧客満足度の低下を防ぎます。

また、営業時間外の問い合わせや夜間対応のための人員確保といった課題も解決できます。

業務効率化とオペレーターの戦略的業務へのシフト

定型的な問い合わせ対応や、保険金請求の初期受付、各種手続きの案内といった業務をボイスボットに任せることで、コールセンター全体の業務効率が大幅に向上します。

これにより、オペレーターは、より複雑な判断が必要な案件や、個別性の高い相談、あるいは高度な専門知識を要する業務に集中できるようになります。限られた人的リソースをより付加価値の高い業務に再配置できる点は、企業にとって大きなメリットです。

オペレーターの負担軽減と職場環境の改善

ボイスボットが定型的な問い合わせや一次対応を担うことで、オペレーター一人ひとりの対応件数を削減できます。

特に、有事の際に急増する問い合わせ対応のプレッシャーを軽減する効果は大きいでしょう。また、ボイスボットが事前に顧客情報や問い合わせ内容をヒアリングすることで、オペレーターは要点を把握した上で効率的に電話対応でき、通話時間の短縮にも繋がります。結果として、オペレーターの心身両面の負担が軽減され、働きやすい環境が整備されることで、人材の定着率向上も期待できます。

保険会社でボイスボット導入を検討すべきケース

貴社で以下のような課題やお悩みはありませんか?もし当てはまるものがあれば、ボイスボット導入が有効な解決策となる可能性があります。

  • オペレーターが不足している、または採用が難しい
  • オペレーターの業務負担が大きい
  • 入電ピーク時に顧客を長時間待たせることがある
  • 同じような内容の問い合わせが多い
  • 営業時間外の問い合わせ対応を求める声がある
  • 電話対応に追われ、他の重要業務に手が回らない

特に、定型的・簡易的な問い合わせが多い場合や、人的リソースをより有効活用したい場合に、ボイスボットは大きな効果を発揮します。ボイスボットは24時間対応してくれるため、顧客利便性の向上にも繋がります。

保険会社におけるボイスボット活用例7選

ここからは、保険会社におけるボイスボットの具体的な活用例を7つご紹介します。

1.請求書類の発送受付

  • 課題
    コールセンター混雑時や営業時間外に顧客からの書類請求受付に対応することができず、機会損失に繋がる。
  • ボイスボット活用
    24時間365日、自動で請求書類や関連資料の発送を受け付けます。
    氏名、住所、電話番号などの個人情報や、希望する保険商品名をヒアリングし、手続きを完了させます。
    機会損失を防ぎ、契約に繋がる可能性を高めます。

2.最適な保険プランの提案

  • 課題
    多種多様な保険商品の中から、顧客自身で最適なプランを見つけるのが難しい。
  • ボイスボット活用
    ボイスボットによるヒアリングや過去の問い合わせ履歴などからAIが顧客のニーズやライフスタイルを分析し、最適な保険プランを提案します。
    顧客の要望に合わせて保障内容をカスタマイズすることも可能です。

3.保険加入手続き(初期対応)

  • 課題
    新規申し込みの初期対応に人手と時間がかかる。
  • ボイスボット活用
    保険の新規申し込みに関する初期対応(必要情報のヒアリングなど)をボイスボットが担当します。その後の詳細説明や最終的な手続きはオペレーターが行う、といった連携が一般的です。
    どこまでをAIが対応させるか、目的やオペレーションに合わせて対応範囲を検討しましょう。

4.自然災害発生時の緊急対応窓口

  • 課題
    大規模災害発生時には問い合わせが殺到し、オペレーターだけでは対応しきれない。
  • ボイスボット活用
    緊急対策窓口としてボイスボットが一次対応を行います。被害状況などの必要項目を自動でヒアリングすることで、オペレーターの負担を大幅に軽減します。一旦受け付けてもらえるということで、災害時の顧客の不安解消にも繋がります。スピーディーな対応が求められる緊急時のBCP(事業継続計画)対策としても有効です。

5.本人確認業務

  • 課題
    本人確認が必要な問い合わせが多く、オペレーターの業務負担は大きいが、聞く内容は定型的である。
  • ボイスボット活用
    これまで担当者が対応していた本人確認業務の一部をボイスボットが代行します。これにより、オペレーターは他の業務により集中できます。ただし、個人情報保護の観点から、強固なセキュリティ対策が前提となります。

6.住所・電話番号変更受付

  • 課題
    住所変更などの手続きは件数が多く、オペレーターの工数を圧迫する。
  • ボイスボット活用
    引っ越しなどに伴う契約者の住所・電話番号変更手続きを自動化します。顧客はコールセンターの混雑状況や営業時間を気にせず、いつでも手続きを完了できます。
    大手保険会社では年間数万件に及ぶこともあるため、自動化によるオペレーターの工数削減効果は非常に大きいです。

7.保険料控除証明書の再発行

  • 課題
    年末調整時期(11月以降)になると、保険料控除証明書の再発行依頼が急増し、オペレーターの負担が増大する。繁忙期の人員確保が課題。
  • ボイスボット活用
    再発行手続きを自動化します。これにより、オペレーターの負担を軽減し、繁忙期の増員コストや研修時間の削減にも繋がります。

保険会社がボイスボットを導入する際の注意点

ボイスボット導入を成功させるためには、以下の点に留意しましょう。

顧客情報の正確なヒアリングとセキュリティの徹底

保険会社は極めて機密性の高い個人情報(氏名、住所、生年月日、証券番号、銀行口座情報など)を扱います。ボイスボットでこれらの情報を扱う場合、情報漏洩を防ぐための万全なセキュリティ対策が不可欠です。

さらに、保険業界の業務では、手続きを進める上で正確な顧客情報のヒアリングと顧客特定が必須となります。しかし、一般的な音声認識技術だけでは、漢字氏名、複雑な住所、英数字が混在するお客様番号などを正確に聞き取り、特定することが難しい場合があります。この音声認識の課題により、ボイスボットの対応範囲が簡単な案内業務や一次受付に限定されてしまうケースは少なくありません。

これが保険業界におけるボイスボット導入の大きなハードルの一つとなっていますが、チャットボットや入力画面なども同時に使用できるシステムであれば解決できる可能性が高くなります。

AIと人の適切な役割分担とシームレスな連携

全ての問い合わせにAIだけで対応できるわけではありません。複雑な相談、クレーム対応、あるいはデリケートな感情への配慮が必要なケースなど、AIでの対応が難しい、または不適切な場合は、スムーズに人間のオペレーターへ引き継ぐことができる体制を構築することが重要です。顧客がストレスを感じないような自然な連携フローを設計しましょう。

継続的なAIの学習とチューニング

AIは導入して終わりではありません。ボイスボットの応答精度を維持・向上させるためには、定期的なデータ学習やチューニングが欠かせません。顧客との対話ログを分析し、認識できなかった言葉や、誤った回答をしたケースなどを洗い出し、AIモデルを継続的に改善していく必要があります。利用率や正答率、顧客満足度などのKPIを設定し、効果測定を行いながら改善サイクルを回すことが成功の鍵です。

保険業界特有の課題と、それを解決する「CAT.AI CX-Bot」

保険業界におけるボイスボット活用には、「厳格な本人確認が必要な問い合わせがほとんどだが、聞く内容は定型的である。しかし、音声だけでは正確な情報ヒアリングと顧客特定が難しい。」という特有の課題が存在します。

トゥモロー・ネットが提供する「CAT.AI CX-Bot」は、この課題に対する強力なソリューションとなり得ます。CX-Botは、ボイスボット(音声対話AI)とチャットボット(テキスト対話AI)をシームレスに連携させた最新型の「ナビゲーション型」対話AIです。

一般的な音声だけのボイスボットでは、氏名の漢字や長い住所などを正確に聞き取れず本人確認業務がうまくいかないケースが多く見られます。結果として簡単な受付対応しか自動化できないという現実に直面することがあります。

CAT.AI CX-Bot は、この課題を解決します。

例えば、保険金の請求受付や契約内容変更時の本人確認業務において、お客様が電話で問い合わせてきた際、ボイスボットが応対を開始します。そして、氏名やお客様番号といった誤認識しやすい情報や、入力が複雑な情報については、お客様のスマートフォンにSMSでセキュアな入力フォームを送信し、テキストで正確に入力してもらうといった連携が可能です。

このように、ボイスボットの「会話による手軽さ」とチャットボット(テキスト入力)の「情報の正確性・視認性」を最大限に活かし、「聴覚」と「視覚」でわかりやすく「ナビゲーション」することで、初めて使うユーザーでも簡単かつ確実に手続きを進めることができます。これにより、保険業界におけるボイスボットの対応業務の幅を格段に広げ、より多くの業務プロセスを自動化・効率化することが可能になります。
AIボイスボット×チャットボットで新しい顧客体験を提供するCX-bot

また、以下では、保険請求受付対応を想定したCAT.AI CX-Botのデモ動画をご覧いただけます。

▲CAT.AI CX-Botデモ動画(保険請求受付)

以下からも簡単にデモ体験も実施いただけますので、是非お試しください。
ボイスボット×チャットボットの簡単デモ体験

ボイスボットの活用で業務効率化を目指そう

保険会社においては、請求書類の発送受付や加入手続き、各種変更手続きなどの人が行っていた業務の一部をボイスボットに任せることで、業務効率化や顧客満足度向上など、さまざまな効果が期待できます。

導入には費用がかかるほか、AIの精度向上のために定期的に学習させる必要がありますが、電話対応業務が多い企業など、導入ニーズがある会社であれば、ボイスボットの効果的な運用ができれば、大きなメリットが見込めます。

保険業界での売上向上を目指すのであれば、競合他社との差別化を図りながら、自社の目的に合ったサービスを選定し、より良いサービスを提供しましょう。

この記事の筆者

TOMORROWNET

株式会社トゥモロー・ネット

AIプラットフォーム本部

「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、生成AIと連携したサービス「CAT.AI GEN-Bot」を筆頭に6つのサービスが含まれ、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。

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