ダイキン工業株式会社
繁忙期の問い合わせ約3万件をボイスボットで対応、AI対応完了率96%を達成
エアコンの修理受付やトラブル時の問い合わせ対応を自動化、対応範囲の拡大でさらなるCX向上へ
導入サービス
CAT.AI CX-Bot
業種
空調メーカー業
活用対象
修理受付対応・不具合の相談・取り扱いの説明
ダイキン工業株式会社は、売上高世界No.1を誇る空調機器メーカーです。空調に関するあらゆる困りごとへのサポートを行っており、コンタクトセンターへの問い合わせ件数は年間180万件にのぼります。国内トップシェアを誇るエアコンに関する修理受付やトラブル時の対応といった問い合わせは、6月から8月にかけて特に集中する傾向にあり、繁忙期にあわせた人材確保が課題でした。センターの安定運営による顧客満足度の向上と業務効率化を目的に、2023年6月にAI自動化システム「CAT.AI CX-Bot(キャット エーアイ シーエックスボット)」を導入し、エアコン修理の受付・キャンセル・日程変更を始め、トラブル時の問い合わせ対応をボイスボットで自動化しています。
導入背景や抱えていた課題、運用シーンや導入後の効果、今後の展望などについて、サービス本部 コンタクトセンター 業務革新グループ 松葉様、帆谷様、サービス本部 西日本コンタクトセンター 技術相談グループ 平山様にお話を伺いました。
※記事中の肩書や内容はインタビュー当時(2024年10月22日)のものです。
課題
- エアコンに関する問い合わせが集中する繁忙期(6~8月)は、電話がつながりにくい状態となり顧客の待ち時間短縮が課題だった
- 繁閑差が大きく、コミュニケーターの確保が困難な上、繁忙期は短期間での採用・育成が必要
- 年間を通した均一なサービス提供が可能なコンタクトセンターの安定運営が課題だった
施策
- ボイスボット(音声)とチャットボット(テキスト)を一つのプラットフォームで同時に利用できるAI自動化システム「CAT.AI CX-Bot」を導入
- CX視点のシナリオ構築で、エアコンの修理受付・キャンセル・トラブル時の問い合わせ対応をボイスボットで自動化
効果
- 繁忙期の問い合わせ対応約3万件をボイスボットで自動化でき、つながりやすさ(応答率)が3%向上、お客様の待ち時間を削減
- 自社カスタマーサポートの顧客満足度調査で4.5(5段階評価)という高スコア獲得に貢献
繁閑差に応じた人材確保が課題、ボイスボット導入で安定運営を目指す。音声とテキストの同時利用と拡張性の高さが決め手
はじめに、担当されている業務内容を教えてください。
松葉氏:所属する業務革新グループは、持続可能な戦略的センターを目指し、中長期的視点でコンタクトセンター全体の運営改革を行う部署です。お客さまがあらゆる課題を解決できるデジタル基盤の構築や、サポートサイトの充実によるCXに関する取り組みの企画立案と推進を担当しています。
帆谷氏:松葉と同じ部署で、主に修理の受付などお問い合わせに関する自動化推進を担当しています。自動化推進の取り組みの一つとして、ボイスボットのブラッシュアップや、新しいシステムの導入に向けて、日々、現場とのすり合わせを行っています。
平山氏:技術相談グループという製品に関する問い合わせ対応を行う部署に所属し、DX推進が主な業務です。ボイスボットなど新たなチャネルの導入や、CX向上のためのツール選定などを担っています。
弊社サービスを導入する前に、直面していた主要な課題は何でしたか?それらの課題に対して検討した、または実施した解決策を教えてください。また、弊社の製品を選定いただいた理由もお聞かせいただけますか。
松葉氏:空調機を扱う会社のため、年間にいただくお問い合わせのお電話が6月から8月にかけて集中します。天気や気温によっても入電件数が大きく変わるため、月や日によっても繁忙と閑散の差が大きく、予測に合わせて人員を配置することが大変困難です。人員を配置していても、予期せずそれを上回る入電数に至ることもあります。繁忙期はお客さまをお待たせしてしまうことも多く、また、繁忙期にあわせた人材確保・育成が課題でした。
繁閑差に対応しながらも、いつでもお客さまの問い合わせに対応できるセンターの安定運営を実現し、さらなる顧客満足度の向上を目指すために、Web以外の新しいお客さまとの接点としてボイスボットの導入を検討していました。
きっかけは、「コールセンター/CRMデモ&カンファレンス」で「CAT.AI CX-Bot」のご講演を拝聴したことでした。今までは電話の自動応答とチャットボットは別物という認識でしたが、音声とテキストを一つのプラットフォームでスムーズに移行できるところに驚き、導入を検討することにしました。
検討する際にどのような点を重視されましたか?
松葉氏:比較検討時には5つの点を重視しました。1つ目はお客さまと自然で円滑なコミュニケーションができる音声認識の精度です。2つ目は、ボイスボットで対応できなかったときに、転送や引継ぎの対応が円滑に行えるかどうかです。3つ目は、弊社の他のシステムとの連携のしやすさです。4つ目は、内容のブラッシュアップやシナリオ修正などメンテナンスのしやすさで、トゥモローネットさんには多大なご協力をいただいています。5つ目は、回線数の追加など当社の運用に即した柔軟な運用が可能かどうかです。
「CAT.AI CX-Bot」は他社と比較して優位性があり、音声とテキストが一つのプラットフォーム上で運用できる点を始め、音声ガイダンス中でも発話を認識する途中通話機能や、カメラ機能が使えるなど独自の強みがあり、拡張性の高さという将来性も考慮して選択しました。
使いやすいシナリオ設計にこだわり改善を重ね、
問い合わせ対応ではAI対応完了率96%を達成
現在の弊社サービスのご利用シーンについてお教えください。
帆谷氏: まず昨年6月に修理受付のキャンセルから運用をスタートし、現在は修理受付・修理受付後の日程変更・不具合の相談や取り扱いの説明などの問い合わせに拡大しています。
▲受付フローイメージ
(左)音声での問い合わせからチャット併用に移る様子。
(中央)簡単な質問はボタン形式で回答できる設計で入力の手間を省く。
(右)日程もカレンダーから選択できるため、直接入力の必要がない。
運用開始までに大変だったことはありますか?また、運用する上で工夫されている点がありましたら教えてください。
帆谷氏:運用開始当初、ボイスボットに着信したあとの途中離脱が多く、修理受付のAI対応完了率は約30%と、対応完了までたどり着く件数を増やすことに苦労しました。修理受付は、コンタクトセンターで受付したあと、エンジニアがお客さまの元に訪問し、修理・完了する流れです。最初にお客さまと接するコンタクトセンターの対応時に、どれだけ正確な情報を入手できるかが最も重要です。そのため、ボイスボットでもコンタクトセンターで人が対応する場合と同じくらいの精度で情報収集することが求められます。修理受付の症状は様々あり、機種名もアルファベットが多く難しいため、途中離脱せず最後まで完了できるよう、シナリオの改善や音声認識の精度を高めるなどの改善を進めました。
例えば、トゥモローネットさんとの定例会で、お客様が途中で離脱された箇所のデータを元に作成いただいた対策案や、比較的年齢の高い社内メンバーに実際に使ってもらった感想から、ボイスボットからチャットボットへ移動するためのSMS操作が難しくて離脱が多いことが判明しました。よりわかりやすいシナリオへの変更や、発話例の追加など、細かいところの改善をトライ&エラーで行ってきました。
その結果、現在は修理受付のAI対応完了率は60%まで向上しました。シナリオ改善のアドバイスなど、工数をかけて対応いただいたことに非常に感謝しています。修理受付の改善を元に、キャンセルや日程変更も日々データを見ながら継続的にブラッシュアップし、キャンセル・日程変更は、AI対応完了率が約80%まで向上しました。AI対応で問い合わせを完結することにこだわって運用改善を重ねています。
平山氏:不具合や取り扱いの説明などの問い合わせ対応において特に注力した点は、チューニングです。最初は正しい回答に導けないこともありましたが、自動応答でどれだけ正しく回答できたか数値を見ながら、回答の精度を高めるようにチューニング作業を重ね、順調に運用できており、AI対応完了率は96%を達成しています。
繁忙期にボイスボットで約3万件を対応し、つながりやすさ(応答率)3%上昇、対応範囲の拡大でさらなるCX向上へ
弊社のセールスやサポート体制に対する評価を教えてください。
平山氏:導入後も、ボイスボットの利用状況の共有や回答精度を高めるためのチューニングにもご協力いただくなど、きめ細やかなサポートを受けています。定例会の開催を始め、サポート体制はかなり手厚いと感じています。
松葉氏:レスポンスが速く、エラーが起きたときの連絡やレポートの提案など非常に丁寧な対応です。また、音声認識率を高めるチューニングテストにおいて、工数削減の改良を行っていただくなど、弊社の課題に対して、解決策を親身に考えてくださり、大変助かっています。
帆谷氏:レポートも単に数値を示すだけでなく、それに対する複数の提案を用意していただき、選択肢を提供してくださる点や、自社のメンバーでは見つけられない課題を発見してくださる点がありがたいです。
導入後の効果について教えてください。
松葉氏:早く正確な回答がほしいお客さまに対して、お待たせすることなくボイスボットで回答を提示できたことが最大の成果だと思っています。今年の6月から8月は、ボイスボットで約3万件のお電話に対応しました。コンタクトセンターのつながりやすさである応答率を3%向上することができました。
早くお電話をお繋ぎすることは我々が取り組んでいきたい最重要課題でしたので、ボイスボットによってつながりやすくなり、助かっています。お客さまからも「早く対応してもらえて安心できた」「思っていたよりスムーズに用件が解決できてよかった」とご好評の声をいただいており、社内でも喜んでいます。
カスタマーサポートの顧客満足度への影響として、ボイスボットに限定した評価ではありませんが、エンジニアの修理対応や電話対応などについて5段階で評価をいただくアンケートをとっており、今年は5段階中4.5と昨年より高い結果でした。ボイスボット導入でつながりやすくなったことが、コンタクトセンター全体の満足度向上に寄与していると実感しています。
今後の展望について教えてください。
平山氏:不具合や取り扱いなどの相談窓口における、今後の計画は大きく3つあります。1つ目は問い合わせ対応範囲の拡大です。現在は、よくある問い合わせや回答が簡単なものに対応していますが、複合的な問い合わせや難しい問い合わせに対しても自動応答の範囲を拡大することで、更なるお客様満足度の向上と業務効率化につなげていきます。
2つ目は、音声認識精度の向上です。今も音声認識率90%台と高い精度を上げていただいていますが、さらに高めていきたいと考えています。3つ目は、AI対応完了率の向上です。ボイスボットでお困りごとが解決できずに再度お電話をいただく事になったお客様の数を減らす為に、案内内容の精度を更に上げていきます。
帆谷氏:自動化推進でさまざまな施策を進めていますが、コミュニケーターの対応を望んでお電話をかけていただくお客様もいらっしゃいます。一方で、知りたい情報を早く確認できるなどの理由からボイスボットを活用いただけるお客様も多くいらっしゃることが、これまでの取り組みから見えてきています。今後もボイスボットを始めとした社内外のデジタルチャネルの整備を加速して、デジタルを望まれるお客様にはデジタル、人の対応を好まれるお客様には高いスキルを持ったコミュニケーターによる温かみのある対応を行います。そして、人とデジタルをかけあわせたハイブリットな対応でさらなるCXの向上を目指していきます。