RAGとは?生成AIと連携したチャットボットの回答精度を向上させよう

投稿日 :2025.03.13  更新日 :2025.09.11

近年、生成AI技術は飛躍的に向上しており、ビジネスでも活用されるようになってきました。特に生成AIと連携したチャットボットは「顧客対応の自動化」や「業務効率の向上」などに大きく貢献するシステムとして、多くの企業で導入が進んでいます。

ただし、効果を十分に得るためには、チャットボットの「回答精度」が一つのポイントになります。回答精度とは、ユーザーの疑問に対して正確かつ適切な回答を提示できる割合のことです。

回答精度の向上には日々のメンテナンスが必要不可欠ですが、「できるだけ手間をかけずに精度を高めたい」と考える方が多いのではないでしょうか。そこで有効なのが「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」と呼ばれる技術です。

本記事では、生成AIと連携したチャットボットにおけるRAGのメリット・課題・活用例を解説します。さらに、RAG単体では難しい複雑な業務の自動化を補完する仕組みとして、マルチAIエージェントの活用例にも触れ、実務でどのように役立つかをイメージできる内容にしています。

RAGとは

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は「検索拡張生成」とも呼ばれ、生成AIが回答を提示する際に参照するデータを「学習済みデータ以外にも拡張」する技術です。

標準的なLLM(大規模言語モデル)は、学習済みデータに基づいて自然な会話を生成しますが、オープンな情報をそのまま利用するため、誤情報や不確かな情報を生成してしまうことがあります。

RAGを活用すると、知っている情報や学習したデータだけではなく、例えばリアルタイムの情報や組織固有の情報を反映した回答、信頼できるデータを参照し回答を生成できるようになります。

APIとの違い

前段で解説した通り、RAGは生成AIが回答を作る際に、外部の信頼できる情報を参照できる技術です。
では、従来の方法、たとえばAPI連携とは何が違うのでしょうか。

外部システムと接続して情報を取得するタイプのAI(API連携型)は、検索した情報をそのまま提示するだけで、文章として組み立てて回答することはできません。

例えば、「日本の総理大臣は誰ですか」と質問した場合、単に「〇〇です」と名前だけを返すのが情報の「提示」です。
一方、RAGを活用すると、関連情報を組み合わせて「〇〇です。この方の経歴は…」のように文章として回答できます。

ファインチューニングとの違い

RAGと関連する用語として「ファインチューニング」があります。AIの一般的なチューニング方法で、既に学習しているAIに追加データを学習させ、精度を高める手法です。

ファインチューニングの場合、外部のデータベースではなくモデル内に必要なデータを組み込むため、回答内容が安定しやすく、 企業ごとの専門性の高いチャットボットに育てたい場合にも適しています。
ただし、回答精度を高めるには「質の高いデータを大量に用意すること」や「継続的なメンテナンス」が必要です。

RAGをチャットボットに活用するメリット

RAGの基本的な知識をご紹介いたしましたが、次はチャットボットにRAGを活用するメリットについて解説します。RAGをチャットボットに活用する主なメリットは以下の通りです。

  • 最新情報に基づいた回答が得られる
  • 学習メンテナンスの手間が少ない
  • 多様なニーズに対応できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

最新情報に基づいた回答が得られる

RAGはデータベースの情報の更新に基づき、最新の情報を反映した回答を生成できます。金融など最新の市場動向を踏まえた分析を求める場合や、最新トレンドなどの情報を参照したい場合などに、有効です。

学習メンテナンスの手間が少ない

RAGでは、モデルを再学習させずとも、データベースの更新だけで内容が回答に反映されるため、学習メンテナンスの手間が少ない傾向にあります。

そのため、従来のAIチャットボットで課題となる「運用中のメンテナンス負担」を大幅に軽減できます。

多様なニーズに対応できる

RAGは複数のデータベースを統合して参照することが可能です。これにより、過去の問い合わせ履歴や製品情報、マニュアルなど複数のデータベースの情報を参照し、幅広いユーザーの質問やニーズに柔軟に対応することが可能になります。

RAGを活用したチャットボットの活用例

RAGはさまざまなシチュエーションで活用されていますが、今回はチャットボットにおける代表的な活用例をご紹介します。主な活用例は以下の通りです。

  • カスタマーサポート
  • 社内ナレッジ
  • マーケティング

それぞれ見ていきましょう。

カスタマーサポート

RAGを活用したチャットボットをホームページやアプリに設置し、顧客対応に活用できます。RAGは複数のデータベースを検索して回答を生成できるため、FAQや製品情報を組み合わせた多角的な対応が可能です。これにより、ユーザー満足度の向上が期待できます。

社内ナレッジ

RAGを活用したチャットボットは社内でも活用できます。業務に関するマニュアルや顧客情報、経理関係に至るまで企業が持つデータベースを検索できることで、追加情報の学習などのメンテナンスの手間を最小限にし、最新情報を共有できるようになります。

マーケティング

顧客の動向や要望を即座にキャッチすることが、マーケティングでは大変重要となります。顧客からの問い合わせ履歴などを蓄積したデータベースを検索できるようにすることで、最新情報に基づいたマーケティング分析が可能になります。

RAGの課題

RAGは企業にとって多くのメリットを与える技術ですが、課題も存在します。主な課題は以下です。

  • データの品質に依存する
  • 回答の生成に時間がかかる
  • 専門的な知識を要する

それぞれ詳しく説明します。

データの品質に依存する

RAGはデータベースの更新情報を参照して回答を生成します。そのため、データの品質が低い場合、回答精度に直接影響します。誤った情報や古い情報が含まれていないかなど小まめにチェックすることが不可欠です。

また、生成AIの課題であるハルシネーションの懸念はRAGでも完全には防げません。ハルシネーションとは、生成AIがあたかも正しい情報であるかのように誤情報を生成することを指します。

RAGは抑止効果がありますが、情報の正確性や最新性に依存することを理解しておく必要があります。

回答の生成に時間がかかる

RAGは外部のデータベースを検索するため、回答を生成するまでに時間がかかることがあります。特に複数のデータベースを検索する必要がある場合は、その傾向が強くなります。

社内的な利用では、影響が少ない場合もありますが、社外的な利用の場合は回答までに時間がかかりすぎてしまうことで顧客の離脱や、満足度低下に繋がってしまう恐れがあります。

専門的な知識を要する

RAGは外部のデータベースの参照や、そこで得た情報を元に回答を生成するまでの工程が複雑であるため、導入には専門的な知識が必要です。

自社で環境を構築する場合は高度な知識が必要ですが、RAG対応のチャットボットツールを活用することで、専門知識がなくても導入や運用を行いやすくなります。

生成AI×RAGの活用範囲と自動化の限界

RAGは生成AIと組み合わせることで非常に強力な回答生成が可能で、単一の質問への回答や文書処理など、情報検索や回答生成に関する業務では大きな効果を発揮します。しかし一方で、複数の業務やシステムをまたいだ一連の業務フローを自動化するのは難しいという制約があります。

例えば、カスタマーサポートでの問い合わせ対応を考えてみましょう。RAGを活用すれば、過去の問い合わせ履歴や製品情報をもとに的確な回答を生成できます。しかし、その回答結果を自社のCRMシステムに登録したり、対応状況を関係者に通知したりする、といった一連の処理はRAG単体では自動化できません。また、複数のシステム間でデータを連携させながら承認フローを回す場合や、レポートを生成して関係部署に送付する場合も、RAGだけでは対応が難しいのです。

さらに、RAGはあくまで情報検索と回答生成に特化しているため、業務の進行管理や条件分岐を伴う複雑なフローの制御には限界があります。そのため、単体で利用する場合、特定のタスクには優れたパフォーマンスを発揮しますが、業務全体の自動化や複数のシステム間の統合には別の仕組みやツールの補完が必要になります。

このように、RAGは情報検索・生成AIの強力な能力を持つ一方で、業務プロセス全体を横断する自動化やシステム連携の処理には限界があることを理解しておくことが重要です。導入を検討する際には、RAGを中心に据えつつも、業務フロー全体をカバーできる仕組みを組み合わせることが成功の鍵となります。

複数AIエージェントで実現する業務自動化の新しい形

こうしたRAG+生成AIの限界を補うために注目されているのが、マルチAIエージェントと呼ばれる複数のAIエージェントを連携させて業務全体を自動化する仕組みです。

従来のチャットボットやRAG単体では、質問に対する回答の生成や文書作成は得意でも、問い合わせ対応の結果を社内システムに登録したり、レポートを関係者に通知したりといった複数ステップにまたがる業務フローの自動化は難しいという課題がありました。

一方、マルチAIエージェントでは、それぞれのエージェントが得意な処理を分担しながら、業務フロー全体をシームレスに実行できます。  

例えば、あるエージェントがデータ検索や回答生成を担当し、別のエージェントが社内システムへの登録や通知処理を担当する、といった形です。このように役割を分担することで、RAG単体では難しかった「情報生成」と「業務自動化」の両立が可能になります。

マルチAIエージェントの仕組みを踏まえることで、RAGや生成AIを使った業務自動化の可能性をイメージしやすくなります。

RAGの活用から一歩進めた業務自動化のイメージ

生成AIとRAGを組み合わせることで、最新情報に基づいた高精度な回答生成や、複雑な情報検索の自動化が可能になります。しかし、単体のRAGでは複数ステップにまたがる業務全体の自動化には限界があります。

こうした課題を補うのが、マルチAIエージェントです。  

マルチAIエージェントとは、複数のAIエージェントが連携して業務を自動化する仕組みで、リードエージェントが司令塔となり、各エージェントが得意分野を分担して動きます。たとえば、データ検索、回答生成、社内システムへの登録、通知処理など、複数のタスクを同時に進めることができます。

この仕組みによって、単体のRAGや生成AIでは難しかった複数ステップにまたがる業務の自動化が可能になります。問い合わせ対応の結果を社内システムに反映したり、レポート作成後に関係者へ自動で通知するといった一連の業務も、シームレスに進められるようになります。つまり、RAGの強みである「高精度な情報生成」と、業務フロー全体の効率化・自動化を同時に実現できます。

当社で提供しているCAT.AI マルチAIエージェントは、この概念を実際の業務に落とし込んだソリューションです。複雑な業務フローの自動化を支援し、複数のAIエージェントが高度に連携しながら、効率的かつ正確にタスクを進めることができます。 この記事でRAGの強みや限界、マルチAIエージェントによる課題解決のイメージをつかんだ方は、ぜひCAT.AI マルチAIエージェントの資料をご覧ください。自社業務の自動化可能な部分や、複数のAIエージェントを連携させた運用方法、効率化・自動化の検討材料として役立てることができます。

CAT.AI マルチAIエージェント 資料ダウンロード

柔軟な対話力と高い処理能力で、自然な会話を通じてユーザーを分かりやすく解決に導き、企業の業務効率化と顧客満足向上を支援します。

この記事の筆者

TOMORROWNET

株式会社トゥモロー・ネット

AIプラットフォーム本部

「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、複数AIエージェントが連携し、業務を自動化する「CAT.AI マルチAIエージェント」など、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。

一覧へ戻る

お問い合わせ・
資料請求

ご不明な点や気になることなど、
なんでもお気軽に
お問い合わせください。

まずはお問い合わせ
簡単でも体験
簡単デモ体験
お問い合わせ