なぜ顧客ロイヤリティが重要?コールセンターがファンを作るための3つの施策

現代のビジネスでは、競合他社と差をつけ、自社の収益を向上させるために「顧客ロイヤリティの向上」が重視されるようになりました。特に、顧客との接点が多いコールセンター業務においては顧客ロイヤリティを育む土壌としての役割がますます重要視されています。
本記事では、コールセンター業務における顧客ロイヤリティの基本から、計測する際の指標や具体的なアプローチまでを分かりやすく解説します。ぜひこの記事を参考に、顧客ロイヤリティの向上に繋げていただけたら幸いです。
Index
顧客ロイヤリティとは
「ロイヤリティ(loyalty)」は、愛着や忠誠心を意味します。顧客ロイヤリティとは、顧客が特定の企業やブランドに対して持つ愛着や信頼、親しみのことです。
顧客の企業に対する愛着や信頼の大きさを、ロイヤリティが高い、もしくは低い、と表現します。
顧客満足度との違い
顧客ロイヤリティと似ている言葉に「顧客満足度(CS)」があります。どちらも顧客と企業の関係性を示すものですが、重視される部分が異なります。
顧客満足度とは、企業やその企業が提供する商品・サービスに関して、顧客がどの程度満足したかを示すものです。売上や利益に繋げるために顧客満足度向上を掲げる企業は多いですが、高品質な商品・サービスがあふれる現代においては、顧客満足度が向上するだけでは顧客の購買行動や収益の伸びに繋がらないケースも増えてきています。
一方、顧客ロイヤリティは愛情や信頼といった感情面での結びつきが強いために、リピート率が高くなったり、購入金額が高価格帯でも納得して購入したりと、購買行動に結びつきやすい傾向にあります。
心理的ロイヤリティと行動的ロイヤリティ
顧客ロイヤリティには、以下2つの側面があります。
- 心理的ロイヤリティ
- 行動的ロイヤリティ
心理的ロイヤリティは、企業やブランド、商品、サービスに抱く感情面のロイヤリティで、信頼感や好感度などを指しますが、必ずしも商品やサービスの購買に結びつくものではありません。
一方行動的ロイヤリティは、商品やサービスを購入したり、他者に勧めたりするなどの行動的なロイヤリティを指します。購買に直結しやすい傾向にありますが、心理的ロイヤリティが低ければ、すぐに競合他社に流れてしまう恐れもあります。
つまり、この2つのロイヤリティは、どちらかが上がればもう一方が上がるというものではなく、それぞれを別のものとして意識し対策をとることが重要です。両方をバランスよく高めることで、高いロイヤリティに繋がります。
顧客ロイヤリティが重要視される背景
近年、マーケティングにおいて、顧客ロイヤリティの向上が重要な施策の一つとされていますが、なぜこれほどまで重要視されているのでしょうか。
顧客ロイヤリティの向上が求められる主な理由には、以下のようなものが挙げられます。
- 競合他社との差別化が難しくなっている
- 消費者の行動が変化している
- 新規顧客獲得よりもコストが低い
それぞれ見ていきましょう。
競合他社との差別化が難しくなっている
従来は消費者が実店舗で商品を手に取って選ぶことが一般的だったため、競合他社との差別化は「品質」や「価格」の向上によって実現されてきました。
しかし現在では、インターネットやSNSの浸透により、消費者は手軽に情報収集を行い、国内外を問わず幅広い選択肢の中から、自身のニーズや価値観に合致した商品やサービスを選べるようになっています。
単に機能面や価格だけでは優位性を示しにくくなった今、企業には「ブランドの魅力」や「体験価値」といった感情的価値の提供が求められています。
その鍵となるのが、顧客との継続的な信頼関係を築く「顧客ロイヤリティ」の向上です。ロイヤリティの高い顧客は、企業に対して強い共感や親しみを持つため、価格競争に左右されにくく、長期的な関係が築きやすくなると言えます。
消費者の購買行動が変化している
顧客ロイヤリティが重要視されるようになった背景には、消費者の購買行動が大きく変化してきたこともあります。
従来の消費者は、商品やサービスそのもの、つまり「モノ」そのものの品質や性能に価値を置く傾向がありました。そのため、企業側も顧客満足度を高めることを目的とした施策に注力してきました。
しかし近年では、「自分に合っているか」「使っていて心地よいか」「ブランドに共感できるか」といった体験や感情の価値を重視する消費行動が増えています。つまり、モノを「所有すること」から「利用すること」や「体験すること」へと、価値基準が移行してきたのです。
この変化に対応するためには、顧客一人ひとりにとって意味のある体験を提供し、企業と顧客の関係性を深める取り組みが求められています。顧客ロイヤリティを高めることは、こうした時代の変化に対応した戦略の一つと言えるでしょう。
新規顧客獲得よりもコストが低い
マーケティングの現場では、一般的に「既存顧客の維持は、新規顧客の獲得よりもコスト効率が低い」とされています。この考え方を表すものとして、「1:5の法則」や「5:25の法則」がよく引き合いに出されます。
「1:5の法則」は、新規顧客の獲得には既存顧客の維持に比べて最大で5倍のコストがかかるという経験則を指し、「5:25の法則」は、顧客離れを5%改善することで、利益が最大25%向上する可能性があるという考え方です。
つまり、限られた予算の中で効率的に利益を高めるには、既存顧客との関係強化に注力することが有効です。既存顧客はすでに企業や商品に一定の理解や信頼を持っているため、リピート購入やアップセルに繋がりやすく、結果として安定的な収益基盤の構築にもなるのです。
コールセンター業務における顧客ロイヤリティ向上のメリット

コールセンターは、顧客と直接的な接点を持つため、顧客ロイヤリティ向上のための重要な役割を担っています。そして、コールセンターでの顧客対応によって顧客ロイヤリティが向上すると、以下のようにさまざまなメリットをもたらします。
- 収益率が向上する
- リピート率が向上する
- 新規顧客の獲得にも繋がる
それぞれ詳しく説明します。
収益率が向上する
既存顧客は新規顧客と比較して購買意欲が高い傾向にあり、まとめ買いをしたり、単価の高い商品を購入したりと、一度の購入額も大きいケースが多いです。
例えば、化粧品を販売するブランドで顧客ロイヤリティを上げると、これまで化粧水を購入していた顧客が、次はファンデーションを購入してくれるなど、さらなる購買が生まれるといった好循環が期待できます。そのため、顧客ロイヤリティを高めると、結果的に収益向上も期待できます。
リピート率が向上する
ロイヤリティの高い顧客は、企業やブランドへの強い愛着や信頼感があるため、商品やサービスを繰り返し購入・利用してもらえる傾向にあります。
また、サブスクリプションサービスなどの会員サービスを提供する場合でも、企業やブランドに対して愛着を抱いていると、競合他社への乗り換えが比較的少なくなり、解約率低下にも繋がるでしょう。
新規顧客の獲得にも繋がる
顧客ロイヤリティが高いほど商品やサービス、ブランドに対する満足度が高いと言えます。そのため、自分が気に入った商品やサービス、企業について積極的に広めたいという意識がはたらく場合が多いです。
その結果、SNSや自社サイトなどにポジティブな口コミを投稿したり、家族や知人に直接紹介したりする傾向にあり、それが新規顧客獲得に繋がります。
顧客ロイヤリティの高さを判断する指標
ここでは、顧客ロイヤリティの高さを判断する際の指標について説明します。顧客ロイヤリティを計測する代表的な指標は、主に以下のようなものです。
- NPS
- LTV
- 顧客維持率(リピート率)
- 解約率
- 顧客満足度
それぞれ詳しく解説します。
NPS
NPSは「Net Promoter Score」の略で、行動ロイヤリティが高いユーザーの割合を洗い出す際に役立つ指標です。
NPSを計算するためには、まず「この商品やサービスを知人や同僚にどれぐらい勧めたいですか」という質問に対し、顧客に0~10の11段階で回答してもらい、回答結果から顧客を以下に分類します。
- 批判者・・・0~6点と評価している人
- 中立者・・・7~8点と評価している人
- 推奨者・・・9~10と評価している人
そして、以下の方法でNPSを算出します。
- NPS (%)=推奨者の割合(%)-批判者の割合(%)
LTV
LTVは「Life Time Value」の略で、顧客生涯価値を意味し、ある顧客から生涯にわたって得られる利益を指します。つまり、一度だけでなく、2回目以降の取引で得られる利益も含めて考えます。
LTVの高い企業は、単に新規顧客を獲得するだけでなく、長期的な視点で顧客関係の構築に力を入れていると言えるでしょう。
LTVの計算方法はさまざまですが、最も簡単な計算方法は、下記の通りです。
- LTV=平均顧客単価×収益率×購買頻度×継続期間
顧客維持率(リピート率)
顧客維持率はリピート率ともいい、ある期間内に継続してサービスを利用している顧客の割合を表す指標です。近年ではインターネットを介してすぐに購入できるようになり、商品やサービスの乗り換えハードルが低くなっているため、顧客維持の重要性が高まっています。
顧客維持率は以下の計算式で求めることが可能です。
- 顧客維持率(%)=(期間終了時の総顧客数-期間中に増えた新規顧客数)÷期間開始時の既存顧客数×100
解約率
解約率は、ある期間にサービスの利用を停止した顧客の割合を表す指標で、解約率が高いほど顧客ロイヤリティが低いと判断できます。解約率が高ければ売上が減少し、収益性にも悪影響を及ぼすため、注意が必要です。
顧客解約率の計算式は下記の通りです。
- 顧客解約率(%)=100% -顧客維持率(%)
顧客満足度
顧客満足度も顧客ロイヤリティを測るうえで重要な要素です。顧客満足度は1回の取引やサービスに対して満足度を表す指標で、継続性や愛着度などは加味されていないものの、満足度が高ければ顧客ロイヤリティが高いと推測できます。
調査はアンケートやインタビューなどの手法を使って行うのが一般的です。
コールセンターが顧客ロイヤリティを高めるための3つの施策

コールセンターにおける顧客ロイヤリティを高めるためには、顧客と良好な関係を築き、優れた顧客体験を提供し続けることが重要です。では、具体的にどのような施策をとれば良いのでしょうか。
ここでは、顧客ロイヤリティの向上に効果が期待できる3つの施策をご紹介します。
- 業務プロセスの見直し
- 人材育成
- DXの推進
それぞれ詳しく説明します。
業務プロセスの見直し
顧客満足度やロイヤリティの向上には、オペレーターの対応品質だけでなく、その背後にある業務プロセスの整備が不可欠です。まずは現行のオペレーションフローを可視化し、対応の遅延やミスが発生しやすいポイント、重複作業や属人化している業務など、非効率な部分を明確にする必要があります。
例えば、情報の引き継ぎに時間がかかっている、対応履歴の参照が煩雑、FAQやマニュアルが整理されていないといった課題は、業務効率を著しく低下させる要因です。
こうした課題に対し、対応フローの再設計などを行うことで、迅速かつ一貫性のある顧客対応が可能になります。さらに、プロセスが標準化されれば、オペレーターごとの対応品質のバラつきを抑え、全体のサービスレベルを安定させる効果も期待できます。
人材育成
応対品質を高めるためには、オペレーターのトレーニングや定期的なフィードバックなどを通した人材育成も重要です。
コールセンターは顧客からの問い合わせに回答するだけでなく、業種によっては受注業務を担ったり、商品販売の営業を行ったりします。
このように、顧客との距離が近いことから、対応力によっては顧客ロイヤリティの低下に繋がる恐れもあるため、オペレーターには十分な教育が必要なのです。
具体的には、以下のような人材育成方法があります。
- オペレーター基礎研修(ビジネスマナーなどを学ぶ)
- システム研修(業務で使うシステム操作を学ぶ)
- 電話対応研修(電話対応について学ぶ)
- 商品・サービス研修(取り扱う商品やサービスに関する知識を身につける)
DXの推進
DXを推進し、人工知能(AI)やITツールを導入することで、顧客のニーズをより正確に把握し、パーソナライズされた質の高い顧客対応ができるようになります。
さらに、オムニチャネル対応を強化すると同時に、チャネル間の連携をスムーズにとれるようにし、一貫した対応ができるようになれば、顧客体験の質向上にも結びつくでしょう。
ただし、DXの推進にはコールセンター業務における課題の洗い出し、明確な目標設定、システムやツールの選定、活用基盤の整理など、段階的に取り組まなければならないため、計画性を持って行う必要があります。また、DXは一度システムを導入して終わりではなく、効果を測定し、継続的に見直しや改善を行っていくことが成功の鍵となります。
顧客ロイヤリティの向上は企業の収益向上に繋がる!
価値ある体験を提供することで、顧客は企業に対して信頼感や安心感を抱き、その結果として自発的に他者へ推奨する行動へと繋がります。そして、こうしたロイヤリティの高い顧客は、企業の継続的な収益向上にも貢献します。
顧客ロイヤリティを強化するには、単に商品やサービスを提供するだけでなく、顧客一人ひとりに寄り添った体験の質を高めることが欠かせません。
特にコールセンターでは、顧客の悩みや課題を解決するのはもちろん、期待を超える喜びや驚きを提供することが、印象的な体験として顧客の記憶に残ります。
本記事で紹介したように、パーソナライズされた対応やスムーズで一貫性のあるオペレーション体制を整えることが、質の高い顧客体験の提供につながります。今一度、自社の対応を見直し、より良い顧客関係の構築を目指すことが大切です。
その取り組みを支援する有効な手段として、最新テクノロジーの活用も視野に入れることをおすすめします。
トゥモロー・ネットが提供するCAT.AI GEN-Botは、生成AIと連携し企業が保有するあらゆるデータベースに基づいてテキストだけではなく、画像やフォームも使いながら適切な回答を作成・提示し、パーソナライズした対応で問題解決に導くことができるシステムです。
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この記事の筆者

株式会社トゥモロー・ネット
AIプラットフォーム本部
「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、生成AIと連携したサービス「CAT.AI GEN-Bot」を筆頭に6つのサービスが含まれ、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。