失敗しない「社内AIエージェント」の選び方|導入目的の明確化から効果測定までの5ステップ

AIの活用が当たり前になった現代ビジネスにおいて、より進化した機能をもつAIエージェントの導入が、さまざまな企業で進められています。
AIエージェントを選ぶ際は、導入によって自社の課題を本当に解決できるのかをよく見極めることが重要です。
本記事では、AIエージェントを社内に導入する際の選び方や導入ステップをご紹介しますので、導入の参考にしていただけたら幸いです。
Index
AIエージェントとは
AIエージェントとは、目的を達成するために必要なタスクを自ら考え、人間の介入を最小限に抑えながら最適な手段を自律的に選択・実行できるよう設計されたシステムまたはプログラムを指します。
AIエージェントの大きな特徴は、単一のタスクをこなすだけでなく、与えられた目標に対して複数のステップから成る計画を自ら立案し、遂行できる点にあります。
AIエージェントは、従来のAIではできなかった複雑なタスクを自律的に実行できるため、業務効率を大幅に向上させるツールとして多くの企業で注目されています。
生成AIとの違い
AIエージェントと混同されがちなものに生成AIがあり、どちらも人工知能の一つですが、機能や役割が異なります。
AIエージェントは、複数のタスクを自律的に実行するのに対し、生成AIは、ユーザーからの指示に沿って新しくコンテンツを生成する技術で、文章、画像、動画、音声などの生成に特化しています。
例えば、AIエージェントは営業支援、カスタマーサポートなど、複雑で自律的なタスクの実行が求められる場面で効果を発揮します。一方、生成AIはクリエイティブなコンテンツ作成に強みを持ち、ユーザーの指示に基づき、質の高いテキストや画像などを生み出すことに特化しています。
AIエージェントは生成AIと組み合わせて使うこともできます。例えば、生成AIが企画案を作成し、それをもとにAIエージェントが目標達成に向けた最適な行動を判断・実行する、といった使い方です。それぞれの強みを活かすことで、より高度なデジタル変革が実現できます。
AIアシスタントとの違い
AIエージェントは、よくAIアシスタントとも混同されがちですが、それぞれ役割が異なります。
AIアシスタントはユーザーの指示を補助するのが主な役割で、例えば「顧客に合わせた営業メールを作成して」といった依頼に応じて動作します。
一方、AIエージェントの主な役割は、目的や目標を理解し、自律的な判断に基づいて一連のタスクを最後まで実行することです。例えば、メールの作成からCRMへの登録、送信までを人の介在なしに自動で行います。
自分で判断しながら業務を進めたい場合にはAIアシスタントが適しており、定型業務の自動化や業務全体の効率化を図りたい場合にはAIエージェントの活用が効果的です。
また、両者を組み合わせることで、AIアシスタントが営業資料を作成し、AIエージェントが顧客ごとにカスタマイズして送付する、といった連携も可能です。いわば、AIアシスタントがユーザーとの対話窓口(フロント)を担い、AIエージェントがその指示を受けて実務(バック)を遂行するような協業が実現できます。
AIエージェントの仕組み
AIエージェントは大きく以下3つのプロセスで構成されています。
- 認識(ユーザーの音声やテキストの指示、過去のデータなどを収集し、認識する)
- 判断(収集したデータをもとに、機械学習や自然言語処理機能を用いて最適な応答や行動を決定する)
- 実行(判断に基づきシステムの自動化を行ったりユーザーに回答を提示したりする)
まず、環境を認識してから得られた情報に基づいて行動を判断し、その判断に基づいて行動を実行します。
このサイクルを繰り返すことにより、タスクを自律的に実行し、学習しながら目標達成を目指すのです。
AIエージェントで何ができる?主な特徴を紹介
AIエージェントの仕組みや生成AIやAIアシスタントとの違いなどをお伝えしましたが、では、AIエージェントは具体的にどのような場面で役立つのでしょうか。
ここからは、AIエージェントの特徴を説明します。主な特徴は以下の通りです。
- 自立的な判断能力
- 高度な業務の自動化
- 継続的な学習と適応能力の進化
- 複数のシステムとの連携
それぞれ見ていきましょう。
自律的な判断能力
AIエージェントは、自律的に判断したり、管理したりする能力を持っています。
設定された目標を達成するため、事前にプログラムされたルールに従うだけでなく、詳細な指示がなくても、自ら最適な手段を選択して実行できる点が強みです。
この自律性があることにより、迅速かつ効率的な意思決定が行えるようになります。
高度な業務の自動化
AIエージェントはタスクの自動化に優れている点も特徴です。
例えば、会議のスケジュール調整や議事録の作成、メールの作成・送信など、業務プロセスの一部を自動化でき、人間が行う作業負担を軽減します。
単なる自動化ではなく、自律的に稼働や意思決定、学習を行い、自動化できるのがAIエージェントの強みです。
継続的な学習と適応能力の進化
AIエージェントは、実行したタスクから学習を繰り返しますが、継続的な学習により判断の精度を向上させることが可能です。
それにより、適応能力が向上し、判断や意思決定が進化し、環境の変化に応じて、より高品質な判断が下せるようになるでしょう。
例えば、医療現場で活用すれば、膨大な患者の診断データを解析し、最新の知識と技術を取り入れることで、医師の診断支援に貢献できます。
複数のシステムとの連携
AIエージェントは単独でも機能しますが、一般的に既存の業務システムやツールと連携して使うケースが多いです。
CRMやメールシステムなどさまざまなツールと連携させることにより、データの取得やファイル処理、アプリ操作など、複雑なタスクを実行することが可能です。
このように、他システムやツールとの連携によって能力が拡張され、業務フローの最適化を実現します。
社内にAIエージェントを導入する主なメリット
AIエージェント導入による最大のメリットは、定型的な業務やルーチンワークを自動化することによる、業務効率の向上と、それに伴う社員の負担軽減です。
ここでは、社内にAIエージェントを導入する具体的なメリットを2つご紹介します。
タスク処理のスピードと正確性の向上
従来のタスク処理では担当者の経験や直感に基づいて行ってきましたが、AIエージェントの活用により、根拠のあるデータに基づいて自動的に処理を行うことが可能です。
例えば、社内データやマニュアル、顧客との応対履歴などをAIエージェントが分析し、いま最も優先すべきタスクを自動的に判断できます。
さらに、AIエージェントが蓄積するデータから参照するため、担当者の経験や直感に依存しない、正確性の高い判断をスピーディーに行えるようになるでしょう。
複数業務にまたがる横断的な自動処理
AIエージェントを社内のツールを連携させ、業務の横断的な自動化ができる点も大きなメリットです。
例えば、会議のスケジュール調整、完了後に参加者へのメールを作成・送信、といった一連の業務をGoogleカレンダーやメール、CRMなどの複数のツールを横断して自動処理することができます。
担当者が面倒に感じやすいツール間の橋渡し的な業務をAIエージェントが担うため、担当者の負担が軽減するほか、別のコア業務に専念できるようになります。
社内AIエージェントの導入5ステップ

社内AIエージェントを導入する場合、以下のステップで進めると効果的です。
- 導入目的の明確化とツールの選定
- プロンプト・システム設計
- 社内運用体制とルールの構築
- スモールスタートでの実施
- 効果測定と継続的な改善
それぞれ詳しく説明します。
①導入目的の明確化とツールの選定
具体的な活用シーンが明確でないまま導入しても期待した成果が出ず、失敗に終わる可能性が高いため、まずは「AIエージェント導入によって何を解決したいのか」を明確にし、自社の業務プロセスを見直して課題や導入目的をリストアップしましょう。
例えば、以下のように現場で感じる悩みや課題に即した目標を設定するのがおすすめです。
- オペレーター向けの電話対応を補助するエージェント
- 営業担当者向けの顧客ニーズを分析・営業資料を作成するエージェント
そして、効果測定がしやすくなるよう「対応件数◯◯件」「一件あたりの対応時間平均◯◯分削減」など、明確なKPIを設定するのが有効です。
その後、自社の課題を解決できる、または目標を達成できるツールやフレームワークを選定します。
② プロンプト・システム設計
より多くの複雑なタスクをこなすAIエージェントを構築するためには、綿密なプロンプトやシステムの設計が不可欠です。
このように、高度に管理されたプロンプトを実装・運用することにより、エージェントの意思決定をより正確なものにできます。
- 目的・・・何を達成したいか(例:新商品を売り込みたい)
- 前提・・・背景や制約条件(例:BtoB向け・専門用語をなるべく控える)
- 形式・・・出力フォーマット(例:250文字の箇条書き)
- トーン・・・書き方の指示(例:丁寧に、かつ堅すぎない)
場合によっては役割や条件などの設定が必要ですが、大きくは上記をきちんと設定することで、精度の高いエージェントを構築できます。
③社内運用体制とルールの構築
ツールを導入したとしても、業務で適切かつ安全に活用できなければ意味がありません。そのため、明確な運用ガイドラインと継続的な監視体制の構築が不可欠です。
AIエージェントを扱う管理者と利用者の役割分担も明確にし、必要に応じて研修プログラムを整備したり、学習用のオンライン教材を整えたりするなど、教育体制も整えましょう。
そのほか、プライバシー保護とコンプライアンス対応をするため、国際的な法規制や企業のコンプライアンスに準拠したAIガバナンスを構築する必要もあります。
また、AIエージェントの導入を成功させるためには、経営層や管理職から現場担当者へのトップダウンで明確なゴールを提示し、現場を巻き込みながら進まなければならないため、経営層がAIエージェントに関する理解を深めるとともに、現場担当者の声をしっかり取り入れる必要があります。
④スモールスタートでの実施
AIエージェント導入によるリスクを最小化するためには、いきなり全社展開せずに、小規模スタートで進めることが重要です。
本格運用する前に小規模なPoCを行い、効果を確認してから段階的に全社展開を進めると、トラブルの抑制やスムーズな運用に繋がります。
成果を数値化して、課題や具体的な改善点を洗い出し、必要に応じてチューニングを行います。
PoCでの効果がしっかり確認できた段階で、他の業務への応用や他部署への展開を検討しましょう。
⑤効果測定と継続的な改善
テスト運用の結果をもとにAIエージェントの本格運用を開始します。
導入後には効果測定を行うほか、担当者からのフィードバックを受けながら、プロンプトの微調整やツールの見直しを行うなど、実行・検証・改善を続けることで、より実用性の高いAIエージェントに育てることが可能です。
また、業務環境や事業規模の変化、技術の進歩によりAIエージェントの機能や設定を更新し続けることで、より効果的な運用が可能になるでしょう。
社内AIエージェントの失敗しない選び方や比較ポイント
AIエージェントを社内で効果的に活用するためには、適切な製品を選ぶことが重要です。
ここでは失敗しないための選び方や比較ポイントを紹介しますので、判断材料にしてください。
自社の業務と適合性はあるか
AIエージェントは製品によって対応可能な業務領域に違いがあるため、最大限の効果を得るには自社の業務フローや目標に適合しているAIエージェントを選定することが重要です。
そのためにも、導入前にエージェントの機能と対応させたい業務を照らし合わせ、マッチしているかをよく確認しましょう。
例えば、問い合わせ対応のサポートが欲しい場合、顧客との対話履歴の管理やFAQの生成に優れる製品を選ぶのが有効です。
外部システム連携の柔軟性はあるか
AIエージェント導入による業務効率化を図るには、AIエージェントが既存システムとスムーズに連携できるかどうかが重要なポイントです。
API連携やMCP(Model Context Protocol:生成AIが外部のツールやデータソースと簡単につながるためのプロトコル)などのプラグイン対応の有無、業務プロセスとの統合性など、柔軟な連携がとれるかを確認しましょう。
また、企業の成長によってAIエージェントに求める機能や能力が変わってくるため、システムにカスタマイズ性があるか、機能を追加できるか、といった将来を見据えた拡張性もよく確認してみてください。
導入支援や運用後の充実したサポートがあるか
AIエージェント導入後も、迅速で充実したサポート体制が整っているかを確認しましょう。
具体的には以下の項目の確認が必要です。
- 対応方法の種類が豊富か(電話・メール・チャットなど)
- 日本語対応しているか
- 対応時間はどうか(24時間対応だと安心)
- 専任のカスタマーサクセス担当がいるか
特に、AIに関する知見が不足している場合は、導入支援が充実している製品を選ぶのが望ましいです。
自社に適したAIエージェントを導入して業務効率をアップさせよう!
AIエージェントは、与えられた目標達成のために、自律的に判断・行動する人工知能システムです。
社内に導入することで、タスク処理の正確性やスピードが向上したり、社内ツールと連携して複数の業務の横断的な自動処理ができたりと、業務効率化に繋がります。
効果的に運用するためには、自社業務との適合性や連携の柔軟性、製品自体の機能はもちろん、AIの技術者が少ない現場でも対応できるよう、サポート体制が充実しているものを選ぶと良いでしょう。
株式会社トゥモロー・ネットは、複数のAIエージェントが連携してタスクや問合せを自動化するマルチAIエージェント機能を実装した、AIコミュニケーションプラットフォーム「CAT.AI」の最新バージョンを、2025年7月に提供開始します。
業務用途に応じて専門性を持つ複数のAIエージェントがそれぞれ情報収集・判断・応答などの機能を分担して動作するもので、タスクの並行処理が可能となり、業務効率化を促進できます。シングルエージェントでは対応が難しい複雑な業務にも柔軟に対応できるため、問い合わせ業務の大幅な効率化を実現させたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事の筆者

株式会社トゥモロー・ネット
AIプラットフォーム本部
「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、生成AIと連携したサービス「CAT.AI GEN-Bot」を筆頭に6つのサービスが含まれ、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。