AI電話対応システムとは?導入メリットから従来のIVRとの違いまで解説

投稿日 :2025.07.29  更新日 :2025.07.30

電話対応において、「担当者が他の業務に集中できない」「営業時間外は対応できない」「IVRのプッシュ操作が分かりにくく顧客が離脱してしまう」といった課題を多くの企業が抱えています。

このような状況を打開する解決策として注目されているのが「AI電話対応システム」です。

この記事では、そうした企業の電話対応業務を根本から効率化する「AI電話対応システム」について、その基本的な仕組みから導入のメリット、従来のIVRとの決定的な違いまで、初めての方にも分かりやすく解説します。

本記事をお読みいただくことで、AI電話対応システムがどのように機能し、企業にどのような価値をもたらすのかを具体的に理解することができますので、是非最後までお目通しください。

AI電話対応システムとは?基本的な仕組みと機能を解説

AI電話対応システムとは、人工知能技術を活用して電話による顧客対応を自動化するシステムです。従来の自動音声応答(IVR)とは異なり、顧客の音声を理解し、自然な会話形式で対応できる点が大きな特徴です。

システムの基本的な仕組みは以下の通りです。

  1. まず、AIが顧客の「声」を「音声認識」技術でテキストに変換します。
  2. 次に、そのテキストの意味を「自然言語処理」で理解し、適切な回答を生成します。
  3. 最後に、「音声合成」技術で自然な音声として顧客に回答を返します。

この一連のプロセスがリアルタイムで実行されることで、人間のオペレーターと会話しているような自然な対話が実現されます。

AI電話対応システムの主要機能

AI電話対応システムは、主に以下の3つの機能によって高度な応対を実現しています。

音声認識と自然言語処理機能

システムの根幹をなすのが、顧客の話す言葉を正確に捉え、その意図を理解する機能です。最新の音声認識技術は以前と比べて大きく進化しており、関西弁や東北弁といった主要な方言や、ある程度の滑舌のばらつきにも対応可能な精度を備えています。

また、電話回線特有のノイズ環境下でも一定の認識精度を維持できるよう、各社でノイズ除去や音響モデルの最適化が進められています。

ただし、方言が強い発話や音質が著しく悪い環境では、依然として誤認識が生じる可能性があるため、システム設計上の工夫も重要です。

そして自然言語処理技術により、単に単語を拾うだけでなく、文脈全体から顧客の本当の意図や感情を読み取ります。曖昧な表現の解釈や、学習が必要となりますが、業界特有の専門用語にも対応可能です。

インテリジェントルーティング機能

インテリジェントルーティングとは、顧客からの電話を、その内容に応じて最適な担当者や部署へ自動的に振り分けるシステムです。例えば、「技術的な質問」「料金プランの相談」「クレーム」といった問い合わせ内容をAIが自動で分類し、適切な専門オペレーターへ直接転送します。

さらに、顧客の電話番号から過去の問い合わせ履歴や契約情報を参照し、「VIP顧客」や「緊急度の高い要件」を優先的に繋ぐことも可能です。繁忙期には、オペレーターの対応状況に応じて負荷を分散させるなど、コールセンター全体の業務効率を最適化します。

学習・改善機能

AI電話対応システムの大きな特徴は、運用を続けることでAIが学習し、賢くなっていく点です。機械学習のアルゴリズムにより、日々蓄積される対話データから新しい質問のパターンや単語を学習し、継続的に応答精度を向上させます。

また、システム管理者による手動でのチューニングや、複数の回答パターンを試して効果を測定するA/Bテスト機能なども備わっています。

定期的なアップデートにより、AIの応答精度や機能が継続的に改善される点も、大きな魅力のひとつです。

ビジネスにおける活用例

AI電話対応システムは、さまざまな業務を自動化し、企業の生産性向上に貢献します。

  • 予約受付・変更
    飲食店やクリニック、宿泊施設などで、24時間365日、予約の受付や変更、キャンセル対応を自動化。応答時間の短縮や、予約の取りこぼし防止による機会損失最小化に繋がります。
  • よくある質問への回答
    営業時間や店舗へのアクセス、商品の仕様など、頻繁に寄せられる質問にAIが即座に回答。担当者の問い合わせ対応負荷を大幅に軽減します。
  • 資料請求の受付
    顧客の氏名や連絡先、希望する資料の種類などをAIがヒアリングし、受付処理を完了させます。

【徹底比較】AI電話対応システムと従来のIVR、決定的な5つの違い

電話の自動応答システムとして、従来から「IVR(自動音声応答)」が利用されてきました。AI電話対応システムはIVRと混同されがちですが、この2つは全く異なるシステムです。

ここでは、AI電話対応システムとIVRの違いについて整理していきます。

IVR(自動音声応答)とは?

IVRは Interactive Voice Response の略称で、日本語では自動音声応答とも言われます。

「〇〇に関するお問い合わせは1番を、△△に関するお問い合わせは2番を…」という音声ガイダンスに従い、ユーザーが電話機のプッシュ操作を行うことで、目的の窓口に振り分けられるシステムです。

便利なシステムではありますが、IVRは決められたシナリオ以外の複雑な問い合わせには対応できず、ユーザーが求める情報にたどり着くまでに何度もプッシュ操作が必要になることも少なくありません。IVRは一方通行のコミュニケーションになるため、顧客のストレスや離脱に繋がりやすいという課題もあります。

5つの観点で比較!AI電話対応システム vs IVR

AI電話対応システムとIVRは、その仕組みと提供できる価値が全く異なります。両者の決定的な違いを5つの観点で比較してみましょう。

比較観点AI電話対応システムIVR
①対話方法音声による自然な会話プッシュボタン操作 / 限定的な単語認識
②シナリオの柔軟性AIが発話やキーワードを理解して対応あらかじめ決められた分岐しか選択できない
③顧客体験(CX)対話型のやりとりと、意図理解による柔軟な対応一方通行で柔軟性がなく離脱に繋がりやすい
④対応できる業務範囲一次受付や簡易受付振り分けや自動アナウンス
⑤データ活用通話内容をテキスト化・分析可能通話ログ(発着信履歴)程度の取得に留まり、詳細な分析は困難

AI電話対応システムは、単に音声を再生するだけのIVRとは異なり、お客様の話す言葉を「理解」し、双方向の「対話」ができる点が最大の違いです。これにより、IVR特有の「何度もボタンを押させられる」「操作を間違えたら最初からやり直さなければならない」といった顧客のストレスを解消し、よりスムーズで満足度の高い体験を提供します。

以下の記事でボイスボットとIVRの違いについてもご紹介していますので、あわせてご参考にしてください。

ボイスボットとは?IVRとの違いと導入メリット

ボイスボットとIVR、チャットボットの違いや、メリット・デメリットについてご紹介します。

なぜ今、AI電話対応システムを選ぶべきなのか?

比較表でご覧いただいた通り、両者には機能面に大きな差があります。今、多くの企業が従来のIVRからAI電話対応システムへと移行を進めているのには、明確な理由があります。

その最大の理由は、顧客が求める「体験価値(CX)」が大きく変化したことにあります。

現代の顧客は、用件を解決できるだけでなく、その過程がスムーズでストレスフリーであることを重視します。「待たされる」「何度も同じ操作をさせられる」といったIVR特有の機械的な体験は、顧客満足度を下げ、企業のイメージを損なうリスクもあります。

また、深刻化する人手不足も、AIへの移行を後押ししています。限られた人員で高品質なサービスを維持するためには、単に電話を振り分けるだけでなく、より幅広い業務を自動化できるAIの能力が不可欠です。

AI電話対応システムはIVRの単なる後継ではありません。顧客と従業員、双方の満足度を高め、変化の激しい時代を勝ち抜くための「戦略的ツール」として、選ばれているのです。

導入で何が変わる?AI電話対応システムの5つのメリット

AI電話対応システムを導入することで、企業は具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。

メリット1:抜本的な業務効率化

AI電話対応システムの導入により、従業員が電話の一次対応から解放され、本来注力すべき専門的な業務や創造的な仕事に時間を使えるようになります。

例えば、カスタマーサポートの担当者が複雑な問い合わせへの丁寧な対応に時間をかけたり、店舗スタッフが接客や商品管理といった本来の業務に専念したりできるようになり、企業全体の生産性が大幅に向上します。

また、電話対応による業務の中断がなくなることで、集中力を必要とする作業の質も向上します。

メリット2:コスト削減効果

電話対応のための人件費削減は、AI電話対応システム導入の大きなメリットです。オペレーターの採用・教育にかかるコストを大幅に削減できるほか、離職に伴う再採用コストも不要になります。

長期的な視点で見ると、システムの導入により業務の効率化が進み、限られたリソースでより多くの業務をカバーできるようになるため、短期間で投資回収が見込めます。その後も、継続的にコストパフォーマンスの高い運用が可能となります。特に、電話対応業務が多い企業ほど、費用対効果が高くなります。

メリット3:24時間対応による機会損失の防止

営業時間外の問い合わせや予約の電話を取りこぼすことがなくなり、ビジネスチャンスの最大化に繋がります。特に、夜間や休日に問い合わせが多い業種では、売上向上に直結する効果が期待できます。

時間を問わず連絡ができる窓口があることは、顧客に安心感を与え、信頼度向上にも寄与し、長期的な顧客関係の構築に貢献します。

メリット4:応対品質の標準化

担当者による対応のムラや知識不足による案内の誤りがなくなり、常に一定の品質で顧客対応ができるようになります。新人とベテランの対応差がなくなることで、顧客満足度の安定化が実現できます。

また、コンプライアンス遵守や正確な情報提供が徹底されるため、企業のリスク管理にも効果的です。

メリット5:顧客満足度の向上

「すぐ繋がる」「待たされない」「会話形式で自然に問い合わせができる」といったストレスフリーな体験が、顧客満足度の向上に直結します。従来のプッシュ操作による煩わしさが解消され、より快適な顧客体験を提供できます。

顧客の利便性向上は、リピート率の向上や口コミによる新規顧客獲得にも繋がり、長期的な事業成長を支える重要な要素となります。

AI電話対応システム選定のポイント

AI電話対応システムの選定にあたって、重要な3つの評価基準についてご紹介します。

技術面での評価基準

音声認識精度の確認が最も重要です。各種方言、年齢層、通話品質別の認識率を具体的に測定し、実際の利用環境での性能を確認しましょう。応答速度も重要な要素で、1-2秒以内の回答開始が理想的です。

その他、多言語対応をさせたい場合は対応可能言語数と翻訳精度、セキュリティレベル(暗号化方式、アクセス制御、監査ログ)も確認が必要です。既存電話システムとの連携可能性、クラウド/オンプレミスの選択基準、障害時のバックアップ体制についても事前に検討しておきましょう。

運用面での評価基準

業界特有のカスタマイズ要件への対応力を重視し、CRM・ERPシステムとの連携機能を確認しましょう。管理画面の使いやすさと権限管理、導入後のサポート体制(サポート内容、専任担当者の有無)も重要な選定基準です。

その他、スケーラビリティ(同時通話数の拡張性、季節変動への対応)、シナリオ追加・修正のしやすさ、管理者の運用負荷軽減策(ワークフロー機能など)、運用マニュアルの充実度、定期的な運用レビューサービスの有無も検討しましょう。

コスト面での評価基準

初期費用の内訳(システム構築費、カスタマイズ費、研修費)と月額費用の構造(基本料金、従量課金、オプション料金)を詳細に確認しましょう。従量課金制度の詳細(通話時間、処理件数、利用者数別)を把握し、3-5年間など長期的な視点での評価が必要です。

隠れコスト(追加カスタマイズ、サポート費用)の確認方法も事前に把握し、総コストでの比較検討を行いましょう。

導入前に知っておきたい注意点

AI電話対応システムは万能ではありません。クレーム対応や個別の複雑な相談など、人間の感情に寄り添う必要がある対応は、依然として人の役割であることを理解しておく必要があります。

システムの学習した範囲外での対応は困難なため、オペレーターとの適切な役割分担が重要です。AIが対応できる範囲を明確にし、必要に応じて人間のオペレーターにスムーズに引き継ぎができる体制を整備しましょう。

また、導入初期は想定していた精度が出ない場合もあるため、継続的な調整と改善が必要であることも念頭に置いておきましょう。

まとめ

AI電話対応システムは、従来のIVRが抱えていた課題を解決し、「業務効率化」と「顧客満足度の向上」を両立する、企業の新たな力となります。音声認識技術の進歩により、自然な会話形式での対応が可能となり、顧客体験の質的向上を実現できます。

顧客満足度を向上させるためには、自社の課題に適したシステムの選定と、AIの精度の確認、継続的な学習と改善が不可欠です。また、高度なAI技術を活用したとしても、学習した範囲外での対応は難しいため、オペレーターとの適切な連携が必要です。

しかし、従来の単純な一次受付・簡易受付を行うだけのシステムでは、抜本的な業務改革・課題解決に繋がらないという現実があり、より高度なAIによる自動化が求められています。

こうした次世代型のAI電話対応を実現するソリューションとして、柔軟かつ高精度な音声対話を可能にする「CAT.AI CX-bot」が注目されています。

トゥモロー・ネットが提供するCAT.AI CX-botは、独自開発のCXマルチモードAI®により、従来のボイスボット単体では困難だった複雑な問い合わせにも対応可能です。 ボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供し、聴覚と視覚の両方でユーザーをナビゲーションすることで、初めて利用するユーザーでも直感的に操作できる画期的なシステムです。

東京ガス、ダイキン、MS&ADインシュアランスグループなど大手企業での導入実績もあり、AI単独での完了率67%→90%という大幅な改善を実現しています。自社開発のSTT(音声認識)とNLP(自然言語処理)エンジンを搭載し、継続的な運用改善サポートにより品質向上を実現する点も大きな特徴です。

活用事例については以下の資料でご紹介していますので、是非ご参考ください。

CAT.AI 事例集

本資料では、CAT.AIを導入し、AIとCXデザインを融合させて成果を出している3社のリアルな取り組みを紹介します。

この記事の筆者

TOMORROWNET

株式会社トゥモロー・ネット

AIプラットフォーム本部

「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、複数AIエージェントが連携し、業務を自動化する「CAT.AI マルチAIエージェント」など、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。

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