AI電話対応とは?従来ボイスボットで失敗しがちな理由と、今選ぶべき設計の考え方

投稿日 :2025.07.29  更新日 :2026.01.30

コールセンターの現場における人手不足は、もはや「待ち時間の増加」というレベルを超え、事業継続性そのものを脅かすリスクとなりつつあります。この状況下、多くの企業が「AI電話対応(ボイスボット)」の導入に踏み切っていますが、成功事例ばかりではありません。

「導入したが、結局オペレーターへの転送が減らない」 「お客様がAIの案内にイライラして離脱してしまう」

こうした失敗の多くは、AIの認識精度ではなく、「音声だけで全てを解決しようとする設計」に根本的な原因があります。

本記事では、AI電話対応の定義を再確認した上で、なぜ多くのプロジェクトが頓挫するのか、その構造的な理由を解説します。その上で、業務の「完結率」を高めるための具体的な設計思想と、自社に最適なシステム選定のポイントを、現場目線で紐解いていきます。

AI電話対応とは何か

AI電話対応という言葉の定義は、技術の進化と共に大きく変化しています。 かつては「自動で応答する」「担当部署へ振り分ける」ことが主眼でしたが、現在では**「問い合わせを業務として完了させること」**を目的に設計される仕組みを指すようになっています。

単に音声を認識して答えるだけでなく、LLM(大規模言語モデル)による高度な意図理解や、CRM・予約システムなどの業務データとのリアルタイム連携を前提とし、人の手を介さずにタスクを完結させる「自律型エージェント」へと進化を遂げつつあります。

IVR・従来ボイスボットとの決定的な違い

AI電話対応の真価を理解するためには、IVR(自動音声応答)や、ひと世代前のボイスボットと「役割・設計思想」がどう違うのかを整理する必要があります。

IVR(自動音声応答)

  • 役割: あらかじめ決められた分岐ルール(「1番を押してください」等)に従って着信を振り分けること。
  • 設計思想: 業務の完了ではなく、あくまで「適切な人や窓口につなぐこと」がゴールです。

従来のボイスボット

  • 役割: 音声対話による一次対応や、定型的な簡易受付の自動化。
  • 設計思想: 音声認識を活用するものの、多くの場合「音声だけのやり取り」で処理を完結させようとする設計になっています。

音声のみに依存する設計では、「ID番号や住所などの数字・固有名詞の聴取」「確認事項が多く、処理が複数ステップにわたる業務」のような場面で正確性が担保できず、結果として途中まではAIだが、最後は人に切り戻すという事態が頻発します。

以下の記事でボイスボットとIVRの違いについてもご紹介していますので、あわせてご参考にしてください。

ボイスボットとは?IVRとの違いと導入メリット

ボイスボットとIVR、チャットボットの違いや、メリット・デメリットについてご紹介します。

LLM連携によって変わった「できること」と「設計の難しさ」

ChatGPTに代表されるLLM(大規模言語モデル)の登場は、AI電話対応の対話能力を劇的に向上させました。

LLMによって変わった「できること」

  • 柔軟性の向上: 「予約を変えたい」「来週空いてる?」といった、揺らぎのある話し言葉や曖昧な依頼を正確に理解できるようになりました。
  • 複合的な応答: 複数の情報を踏まえた回答生成が可能になり、スクリプト(台本)通りの棒読みではない、自然な対話が実現しています。

LLMでも残る「設計の難しさ」 

しかし、LLMを搭載すれば自動的に完結率(業務完了率)が上がるわけではありません。 どれほどAIの頭が良くても、以下の課題は「対話力」だけでは解決できないからです。

  • 音声認識の物理的制約: 通話環境によるノイズや、同音異義語の誤変換。
  • 業務フローの分断: AIが会話はできても、裏側のシステムに書き込む権限や経路がなければ、業務は終わらない。
  • 完了条件の曖昧さ: どこまで話せば完了とするかの定義が甘いと、AIは延々と会話を続けてしまう。

つまり、現在のAI電話対応において成否を分けるのは、AIの賢さそのものよりも、「音声の限界やシステム連携の制約を踏まえた上で、どこまでをAIで完結させるか」という設計力にあるのです。

なぜAI電話対応は「期待外れ」になりやすいのか

急速に普及が進むAI電話対応ですが、導入企業の担当者からは「思ったほど完了率が上がらない」「お客様から怒られてしまう」という落胆の声が後を絶ちません。 しかし、その原因の多くはAIの「賢さ(知能)」不足ではありません。

最大の要因は、「電話(音声)というチャネルが持つ物理的な不確実性を無視した設計」にあります。 人間同士であっても聞き間違いや言い直しが発生する電話において、AIにだけ完璧を求めること自体に無理があります。ここでは、失敗プロジェクトに共通する2つの構造的な見落としについて解説します。

音声認識の限界を前提にしていない

最新のAIであっても、電話回線を通した音声認識には物理的な限界があります。ここを「AIが進化すれば解決するはず」と楽観視して設計すると、現場で必ずトラブルになります。

数字・型番・固有名詞の壁

例えば、「7(シチ)」と「1(イチ)」、「B(ビー)」と「D(ディー)」のような聞き分けは、ノイズが乗る電話回線では非常に困難です。また、無数にある人名や住所、アルファベット混じりの製品型番を、音声だけで一発で正確に伝えることは、顧客にとっても高ストレスな作業です。

「聞き返し」による離脱

認識ミスが起きるたびに、AIが「もう一度おっしゃってください」と繰り返す設計は最悪です。顧客の心理的許容度は数回で限界に達し、「使えない」と判断して電話を切るか、オペレーターへの転送を要求することになります。

「回答できる」だけで業務が終わらない

もう一つの失敗パターンは、AIを「話ができるFAQ」としてしか設計していないケースです。 対話が成立することと、業務が完了することはイコールではありません。

受付止まりの自動化の錯覚

「予約を変更したい」という顧客に対し、AIが「Webサイトから変更可能です」と案内して終わる場合、これは業務代行ではなく単なる「門前払い」です。顧客の「今、電話で済ませたい」というニーズは満たされていません。

バックオフィスとの分断

AIが注文を受け付けたとしても、そのデータが基幹システムやCRM(顧客管理システム)にリアルタイムで書き込まれていなければ意味がありません。後で人間が録音を聞いて入力し直したり、CSVデータを手動で取り込んだりしているのであれば、それは「デジタル化」されただけで、業務プロセス自体は分断されたままです。

AIがどれだけ流暢に話せても、顧客の目的(予約完了や変更処理)がシステム上で完結していないのであれば、それはDX失敗となってしまいます。

AI電話対応の完結率を高めるための設計の考え方 

AI電話対応導入後の「思ったほど自動化できない」「途中で有人対応に切り替わってしまう」という課題。 この原因を「AIの音声認識精度がまだ低いからだ」と結論づけてしまうのは早計です。多くの場合、真の原因は技術レベルそのものではなく、業務の完結を前提にしていないシナリオ構築にあります。

AIを単なる「電話受付機」で終わらせず、確実な成果を出すためには、以下の3つの視点で設計を見直す必要があります。

音声認識の限界を前提に設計することが完結率向上につながる

電話というチャネルにおいて、すべてを音声認識だけで処理しようとすれば、必ず誤認識や聞き返しが発生します。「住所をすべて口頭で言わせる」「長い製品型番を一息で読み上げさせる」といった設計は、AIにとっても顧客にとっても負担です。

実運用で重要なのは、音声認識が難しい場面を「どう気合で認識させるか」ではなく、いかに音声認識させずに済ませるかを考えることです。 例えば、認識難易度の高い情報の聴取はSMS(ショートメッセージ)送信によるスマホ入力へ誘導するなど、音声で粘らない設計を取り入れることで、結果として離脱を防ぎ、手続き完了までの到達率を高めることができます。

問い合わせを「最後まで終わらせる」前提で設計する

「AIで受付はしましたが、処理人が行います」では、DXとは言えません。 完結率を高めるためには、簡単な一次受付やヒアリングで終わらせるのではなく、処理・登録・変更・確認といった後続タスクまでをAIが一気通貫で完結させる前提で設計する必要があります。

  • 基幹システムとのAPI連携
    予約枠の空き状況確認や、変更データの書き込みをリアルタイムに行う。
  • 本人確認の自動化
    生年月日や会員番号の照合をAI上で行う。

このようにバックエンドの処理までAIに権限を持たせることで、「承りました(が、実は終わっていません)」という中途半端な状態を排除し、途中で人間にパスせざるを得ないケースを構造的に減らすことができます。

人に引き継ぐのは「失敗」ではなく設計の一部

「AI導入=100%自動化」を目指すあまり、AIが答えられない質問に対して無理に回答を生成させたり、頑なに自動音声内に留めようとしたりするのは良くありません。

AI電話対応において、オペレーターへの引き継ぎ(エスカレーション)は「失敗」ではありません。むしろ、「定型業務はAI、例外・感情的ケアは人」という最適な役割分担を実現するための重要な機能です。

  • AIが完結させる領域(予約、照会、資料請求など)
  • 人が対応すべき領域(クレーム、複雑な相談、緊急対応)

この境界線をあらかじめ明確にし、AIが対応困難と判断した瞬間にスムーズに人へバトンタッチする導線を敷いておくこと。これこそが、顧客にストレスを与えず、センター全体としての解決率と顧客満足度を最大化する現実的な設計です。

AI電話対応が向いている業務・向いていない業務

AI電話対応の導入を成功させるための第一歩は、「AIに任せるべき業務」と「人がやるべき業務」を見極めることです。 すべての問い合わせを無差別にAI化しようとすると、開発コストが肥大化するだけでなく、顧客体験を著しく損なうリスクがあります。ここでは、完結率を高めやすい業務の特徴と、逆にAIには不向きな業務の境界線を見ていきます。

AI電話対応が向いている業務

以下の4つの特徴を持つ業務は、AIによる自動化の適合性が高く、導入後に「業務完結率」や「コスト削減効果」が数字として表れやすい領域です。

① 完了条件が明確に定義できる業務

 「何をもってこの電話を完了とするか」のゴール地点が、システム的に判定できる業務は最もAIに適しています。例えば、予約の受付完了、プラン変更の反映、資料請求の登録完了などです。

「完了条件」が曖昧なままだと、AIはどこで会話を終わらせてよいか判断できず、不毛なやり取りが続く原因になります。Yes/Noで判定できるゴールがあることが大前提です。

② 処理フローがある程度構造化されている業務

会話の分岐が多少あっても、大枠の流れ(ヒアリング → 本人確認 → 要件特定 → 処理 → 完了)がロジックツリーとして整理できる業務です。

完全に定型である必要はありませんが、業務フローが可視化できていれば、AIのシナリオに落とし込みやすく、想定外のエラーを防ぎやすくなります。

③ 途中で情報の確認・入力・登録が発生する業務

単に質問に答えるだけでなく、電話対応の中で具体的な「処理工程」が含まれる業務こそ、AIが真価を発揮する領域です。例えば、会員番号の照合、希望日時の入力、解約申請の登録処理のような業務が該当します。

 「聞くだけ・答えるだけ」の案内業務よりも、「システムを動かす」業務の方が、人手による工数(入力作業時間)削減のインパクトが大きく、明確なROIが出ます。

④ 人に渡す前に「切り出せる工程」がある業務

業務全体をAIで完結できなくても、前捌きの部分だけを切り出せる業務も対象になります。例えば、用件の聞き取り(トリアージ)、本人確認、前提条件の整理などです。

 オペレーターが電話に出た時点で、すでに顧客情報と用件が画面に表示されている状態を作れれば、AHT(平均処理時間)を大幅に短縮でき、全体の効率化につながります。

向いていない業務の特徴

逆に、以下の性質を持つ業務を無理にAI化しようとすることは、コストパフォーマンスが悪く、推奨できません。

① ゴールが曖昧な業務(相談・判断・説得が主)

「どのプランが良いか迷っている」「なんとなく調子が悪い」といった、顧客自身も正解を持っていない相談業務です。

状況に応じた複雑な判断や、顧客の背中を押す提案(説得)は、AIよりも人間の共感力や営業力が価値を発揮する領域です。完了条件を定義しにくいため、AIは堂々巡りになりがちです。

② 感情対応が主目的の業務

謝罪が必要なクレーム対応や、不安を抱えた顧客への傾聴が求められるケースです。

怒っている顧客に対して機械的な音声で対応することは、火に油を注ぐ結果になりかねません。これらは「効率化」の対象ではなく、「顧客満足度維持」のために人がコストをかけるべき領域です。

③ 状況依存が強く、毎回処理が変わる業務

同じ「問い合わせ」でも、顧客の契約状況や背景によって対応フローが毎回バラバラになる属人性の高い業務です。

例外処理(イレギュラー)が多すぎる業務は、AIの学習モデルを構築するコストに見合いません。まずは業務プロセス自体の「標準化・整理」から着手する必要があります。

AI電話対応は、センター内のすべての業務を人間から奪うための魔法の杖ではありません。 「AIが得意な処理業務」と「人間が得意な感情・判断業務」を正しく切り分け、明確な完了条件を持って設計することで、はじめて「業務が終わらない」という課題を解消し、安定した完結率を実現できるのです。

AI電話対応で失敗しないための選定ポイント

AI電話対応システムの導入を検討する際、多くの担当者が「音声認識精度の高さ」や「機能の多さ」を比較検討します。しかし、カタログ上のスペック値だけで成否を判断することは危険です。

実際の運用において重要なのは、テスト環境での認識率ではなく、実際の業務フローの中で、問い合わせを完結させられるか、そして変化する業務に合わせて改善し続けられるかという点に尽きます。 導入後に形骸化させないために、必ず確認すべき3つの視点を解説します。

音声単体か、他チャネルと連携できるか

「電話対応の自動化」だからといって、音声だけのやり取りに固執する必要はありません。むしろ、音声のみに限定したシステムは、住所入力や約款確認といった場面で必ずボトルネックが生じます。

選定のポイント

音声認識が苦手な領域(複雑な入力、視覚的な確認)を、SMSやWebフォームといった「別の手段」にシームレスに切り替える機能が備わっているかを確認してください。 話して解決するだけでなく、スマホ画面で入力して完了させるという選択肢(マルチモーダル機能)があるかどうかは、業務完結率を左右する決定的な差となります。

シナリオ設計・改善を誰がどう回すのか

AI電話対応は、導入した瞬間が完成ではありません。実際に顧客の声を聴き、言い回しの揺らぎや離脱ポイントを分析し、チューニングを繰り返すことで初めて精度が安定します。

選定のポイント

 導入後の改善プロセスが具体的に提示されているかを確認します。

  • 運用体制: ベンダーが分析・改善に伴走してくれるのか、自社だけで行う必要があるのか。
  • ツールの操作性: 現場担当者がノーコードでシナリオを修正できるか、いちいちベンダーへの改修依頼(追加コスト)が発生するか。 ブラックボックス化せず、自社でPDCAを回せる、あるいは強力な伴走サポートがあるサービスを選ぶことが重要です。

将来的な業務拡張(AIエージェント化)が可能か

初期段階では「夜間の一次受付」や「FAQ対応」といった限定的な範囲からスタートする場合でも、導入するシステムが将来的な拡張性を持っているかは、投資判断の重要なポイントです。

選定のポイント

 単なる「自動応答ツール」で終わるのか、将来的に基幹システムやRPAと深く連携し、複雑な処理を自律的に行う「AIエージェント」へと進化できる基盤があるかを見極めます。 API連携の柔軟性や、生成AI(LLM)との統合ロードマップを確認し、ビジネスの成長に合わせて役割を広げていけるプラットフォームを選定することで、二重投資のリスクを防ぐことができます。

AI電話対応を成功させるために重要な視点とは

AI電話対応は、技術の進化によって導入しやすくなった一方で、「結局は人につながってしまう」という課題も多く残っています。

その多くは、音声認識の精度ではなく、業務の完結を前提に設計されていないことが原因です。

本記事で見てきたように、AI電話対応を活用するには、受付で終わらせるのではなく、処理や確認まで含めてどこまでをAIで完結させるのか、人に引き継ぐ部分をどう切り分けるのかといった設計の視点が欠かせません。

また、向いている業務を見極めたうえで、運用しながら改善し続けられるかどうかも重要な判断軸になります。こうした考え方を前提に設計されたのが、CAT.AI マルチAIエージェント for Voiceです。

電話対応を単なる音声応答としてではなく、問い合わせの受付から確認・処理・引き継ぎまでを含めた業務全体の流れの中で捉えることを前提としています。

音声対応に加え、業務フローや後続処理とのつながりまで考慮することで、導入後の運用や改善を見据えたAI電話対応を支援します。

AI電話対応を「つなぐ仕組み」ではなく、業務を最後まで終わらせる仕組みとして検討したい方は、下記の資料で具体的な設計や活用イメージをご確認ください。

この記事の筆者

TOMORROWNET

株式会社トゥモロー・ネット

AIプラットフォーム本部

「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、複数AIエージェントが連携し、業務を自動化する「CAT.AI マルチAIエージェント」など、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。

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