AI音声認識技術の現状と課題から考える!対話AIソリューション検討のポイント

投稿日 :2025.08.29 

コールセンターの応答率向上や記録業務の効率化を目指す企業にとって、音声認識は重要な技術です。しかし現状では、雑音や複数話者による精度低下や、専門用語・固有名詞の誤認識といった制約が依然として残っています。

たとえ音声認識で文字起こしが正確にできても、それだけでは業務は完結しません。実際には、本人確認や申請処理、データ登録、最終的な業務完了といった一連のプロセスを実行する必要があります。つまり音声認識はあくまで出発点にすぎず、業務を受付から完了まで導く別の仕組みが求められるのです。

そこで注目されているのが、音声認識を入口に意図を把握し、業務を支援する「対話AIソリューション」です。単なる文字起こしにとどまらず、業務効率化と顧客体験の両立を実現する仕組みとして導入が進んでいます。

本記事では、まずAI音声認識の仕組みや課題を整理し、その理解をもとに対話AIの特徴や活用例、導入事例を解説します。

本記事を読むことで、AI音声認識を業務にどう活かし、対話AIを導入することでどのような効率化や顧客体験向上が可能か、具体的にイメージすることにつながれば幸いです。

AI音声認識の基礎知識とディープラーニングによる技術進歩

音声認識技術は近年急速に進歩しましたが、業務で効果的に活用するためには、その仕組みを理解しておくことが重要です。ここでは、基本的な構造から進化の流れ、そして主要な活用分野を整理します。

AI音声認識とは何か

AI音声認識とは、人間の声をAI(機械学習モデル)で解析し、音響と文脈の両面から処理してテキストに変換する技術です。発話内容を文字データに変換し、その情報をもとに適切な応答や後続の処理に活用できる仕組みになっています。

AI音声認識の仕組み

その仕組みは大きく「音響モデル」と「言語モデル」に分けられます。音響モデルは音声波形を音素に変換しますが、それだけでは単語として不自然な並びになることがあります。

言語モデルでは、文脈に基づいて最も自然で意味の通じる単語列を推定します。たとえば「こうえん」と聞こえた場合に、「公園」と「講演」のどちらが適切かを前後の文脈から判断するのが言語モデルの役割です。

近年は音響モデルと言語モデルを統合したEnd-to-End方式が主流となり、音声入力からテキスト変換までを一貫して処理できるようになりました。これにより、従来よりも高精度かつ効率的に文字起こしが可能になり、業務上の情報取得や応答準備に役立てられます。

大規模データと深層学習による進化

近年の深層学習技術の改良により、音声の細かな特徴や会話のパターンを大量のデータから学習できるようになりました。その結果、従来よりも雑音や方言に強く、文脈を踏まえた認識が可能になり、精度は大幅に向上しています。

クリーンな音声では80〜98%の認識精度が報告されており、モデルによっては90%台後半に達するケースもあります。こうした進歩により、議事録作成やコールセンター業務など、実務での活用が着実に広がっています。

現在の主な活用分野

AI音声認識は、多様な業界で業務効率化や作業負担の軽減に活用されています。

  • コールセンター:顧客の問い合わせ内容を文字起こしし、オペレーターの対応を支援
  • 医療・製造業:診療記録や検査記録を音声入力で自動化し、手作業による記録の負担を削減

音声認識技術は単独でも業務効率化を実現しますが、さらに複雑な処理や対応完了までの自動化には、次にご紹介する「対話AIソリューション」が有効です。

AI音声認識の課題と限界から見えてくる対話AI導入の必要性

精度が向上しているものの、業務での安定運用にはまだ課題があります。雑音や方言に対する認識精度が改善されたとはいえ、医療や金融などの専門用語では誤認識が起こりやすく、単純な文字起こしだけでは対応が完結しません。こうした制約を補い、業務を最後まで自動化する仕組みとして、対話AIの導入が注目されています。

認識精度の限界と課題

方言・アクセントへの対応は、現在も音声認識における課題の一つです。標準語以外の発話では誤認識が発生しやすく、導入の際の障壁として指摘されるケースがあります。これは、音声認識の学習データが標準語に偏っているためで、方言に十分対応できていないことが背景にあります。

また、医療や法律、金融といった分野の専門用語や、企業名・地名などの固有名詞は、正確な認識が求められる一方で、通常の学習データだけでは対応が難しく、特別な学習や辞書登録が必要です。完全な精度を担保することが難しく、実務で安心して活用するには課題が残ります。

文字起こしだけでは業務が完結しない

音声を文字に変換しただけでは、依頼の意図を理解したり、適切な処理や応答を自動化することにつなげたりすることはできません。実務では、発話内容を正しく把握したうえで、業務フローに沿った処理や応答を自動化できる仕組みが求められます。

たとえば、顧客から「営業時間を知りたい」といった問い合わせがあった場合、単に発話を文字に変換するだけでは対応は完了しません。対話AIは、この発話の意図を理解し、事前に設定されたルールに従って「営業時間の案内」という適切な応答を提示することが可能です。さらに必要に応じて、次の問い合わせや関連情報への案内まで支援できます。

顧客体験向上に必要な文脈理解

現代の顧客は「すぐに」「簡単に」「正確な回答を得たい」と考えています。その期待に応えるには、過去のやり取りを引き継ぎつつ、発話内容の意図や文脈を正確に把握し、必要に応じて次の案内や手続きをスムーズに誘導することが求められます。

しかし、音声認識だけでは、発話をテキストに変換することはできても、文脈を理解して応答を選択したり、次のステップに進めたりすることはできません。このため、顧客の意図に沿った適切な対応や業務フローの完結までつなげるには、追加の仕組みが必要になります。

そこで注目されているのが、対話AIソリューションです。対話AIは、音声認識で得た内容をもとに文脈を理解し、ルールや業務フローに沿って適切な応答や案内を自動的に提示できるため、顧客体験を損なうことなく業務を完結させる支援が可能です。

AI音声認識を活用した業務自動化の事例

AI音声認識は単体では、話した内容を文字に変換することしかできず、発話の意図を理解したり、次に必要な応答や対応を導くことはできません。しかし、音声認識を基盤に対話AIや自動応答システム(IVRなど)を組み合わせることで、発話内容の意図を把握し、適切な応答や手順の支援まで行うことが可能になります。この仕組みにより、業務効率や対応の正確性の向上につなげられ、応答率の改善や記録作業の短縮、応対精度の向上などが期待できます。

ここからは、具体的にAI音声認識を活用した対話AIやIVRの事例と効果をご紹介します。

金融業界(クレディセゾン)|自動IVRによる問い合わせ分類

株式会社クレディセゾンは、さまざまな内容の問い合わせを的確に振り分けられず、オペレーターの負担が増えていました。そこでAI音声IVRシステムを導入し、顧客の発話を自動で35種類に分類して最適なチャネルへ振り分ける仕組みを構築しました。

この取り組みにより、オペレーターへの着信件数を30%削減でき、問い合わせ対応の効率化と顧客満足度の向上を同時に実現しています。

出典:株式会社クレディセゾン「AI音声IVRシステム導入について」

医療業界(岡山中央病院)|音声入力による記録時間の短縮

社会医療法人鴻仁会 岡山中央病院では、看護師やリハビリスタッフが診療の合間に電子カルテへ詳細な記録を手入力しており、日々の業務を圧迫していました。記録に追われて残業が常態化し、医療従事者が患者ケアに十分な時間を割けないことが大きな課題でした。

この状況を改善するため、同院は音声認識システムを導入しました。スタッフが話した内容が自動的にカルテへ反映されるようになり、約1.5時間かかっていた入力時間が40〜50分に大幅に短縮されました。その結果、時間外勤務が減少し、患者ケアに割ける時間を増やすことに成功しています。

出典:社会医療法人鴻仁会 岡山中央病院「音声認識システム導入効果について」

製造業(岐阜車体工業)|検査記録のハンズフリー化

自動車製造の品質検査では、作業中に記録を取る必要があり、その手間が効率を妨げるとともに、記録の正確性も確保しにくいという課題がありました。岐阜車体工業株式会社はこの問題を解消するため、音声入力によるハンズフリー記録システムを導入し、作業者が検査結果を声で入力できる環境を整えました。その結果、従来の所要時間の3分の2に短縮され、入力ミスも減少しています。

出典:岐阜車体工業株式会社「音声入力システム導入について」

不動産業界(レオパレス21)|リアルタイム文字起こしで応対品質を向上

株式会社レオパレス21は、全国のコールセンターで通話内容の記録作業と応対品質の向上に課題を抱えていました。同社は音声認識ソリューションを導入し、通話内容をリアルタイムで文字起こしし、FAQ検索機能と組み合わせて活用しました。

結果、オペレーターは通話中に自動で文字起こしされた内容を参照しながら適切な回答を提示でき、通話後の記録作業が大幅に短縮されました。年間で約2,633時間の作業時間と約460万円のコストを削減し、応対品質と業務効率の両立を実現しています。

出典:株式会社レオパレス21「音声認識ソリューション導入について」

音声×テキストのハイブリッド対話で業務完了まで導くCAT.AI CX-Bot

AI音声認識は、発話内容をテキスト化することは得意ですが、意図を理解して複雑な応答や手順に沿った対応を行うことはできません。 一方、既存の対話AI(ボイスボットなど)は、定型的な問い合わせや簡易対応には有効ですが、条件分岐が複雑なケースでは誤案内や途中離脱が発生しやすい課題があります。 

こうした課題を解決するのが、トゥモロー・ネットの「CAT.AI CX-Bot」です。

CAT.AI CX-Botとは

AI音声認識や従来のボイスボットでは対応が難しかった複雑な問い合わせにも対応できるのが、トゥモロー・ネットの「CAT.AI CX-Bot」です。

CAT.AI CX-Botの主な特徴

①音声×テキストのハイブリッド対応
音声認識の不確実さをテキストで補完します。また、カメラ、GPS、OCRなど様々なモードを標準で搭載し、AIによる対応範囲の幅を広げます。

②ユーザーに分かりやすいCXデザイン
コールセンターノウハウと独自のCX理論に基づき、顧客体験を最優先に設計された対話フローで、ユーザーを迷わせず解決に導きます。

③導入後も支える運用サポート
専門のアナリティクスセンターでデイリーで対話ログを解析し、継続的な品質向上を実現します。

たとえば、従来のボイスボットでは、漢字氏名・正しい住所・製品番号・お客さま番号などを正確に音声で聞き取ることが課題でした。CAT.AI CX-Botの音声×テキストのハイブリッド対応では、音声でナビゲーションを行いながら、音声認識が難しい場面ではテキスト情報を活用することで、AIによる自然な発話と、AIで最後まで対応を完結させるという2つを両立することが可能です。

CAT.AI CX-Botの導入実績と運用支援体制

AIソリューションは「導入して終わり」ではなく、その後の運用改善が成果を左右します。CAT.AI CX-Botは豊富な導入実績に加え、導入後も継続的な効果を生み出す支援体制を備えています。

空調メーカー業界(ダイキン工業)|繁忙期の問い合わせ自動化による応答率改善事例

【課題】

  • 年間180万件の修理受付・トラブル対応の入電
  • 夏季繁忙期(6〜8月)に待ち時間が長期化、人員確保も困難

【施策】

  • 修理受付や日程変更の問い合わせをAIが自動処理
  • 音声とテキストを組み合わせた対応フローを設計

【効果】

  • 繁忙期の約3万件の問い合わせをAIが処理
  • 応答率が約3%向上
  • AIが受付した案件のうち、96%が最後までエラーなく完了
  • 顧客満足度は4.5(5点満点)を達成

「繁忙期の問い合わせ約3万件をボイスボットで対応、AI対応完了率96%を達成」(ダイキン工業株式会社)

エアコンの修理受付やトラブル時の問い合わせ対応を自動化、対応範囲の拡大でさらなるCX向上へ

東京ガス株式会社|ガス開閉栓受付の自動化

【課題】

  • ガス開閉栓受付において繁忙期に入電が集中
  • オペレーターの業務負荷が大きく、顧客対応の品質維持が課題

【施策】

  • ボイスボットによる自動受付を構築

【効果】

  • AIが受付した案件のうち、最大96%が最後までエラーなく処理完了
  • 全体の35%以上は、オペレーターに引き継ぐことなくAIのみで完結
  • 繁忙期の業務負荷を軽減し、顧客満足度の向上を実現

MS&ADインシュアランス グループ|ロードサービス受付の自動化

【課題】

  • ロードサービスの依頼は夜間や休日を問わず発生
  • 突発的な問い合わせ集中により、オペレーターの負担が増大

【施策】

  • 受付業務の一部をAIに代替
  • 画像認識や位置情報と連携し、誤入力や確認漏れを防止

【効果】

  • ロードサービス受付の業務量の約13%をAIが自動化し、オペレーター約10人分に相当する負荷を削減
  • スピーディーで正確な顧客対応が可能に

「AIでロードサービスの受付自動化を実現」(MS&ADインシュアランス グループ)

オペレーター約10人相当の業務効率化により、応答率向上を実現

AI音声認識と対話AIで広がる業務効率化とCX向上

AI音声認識技術は進化を続け、多くの業務で活用されるようになりました。しかし、発話内容をテキスト化することにとどまり、意図理解や適切な応答・処理手順の支援までは行うことができません。

一方、ボイスボットなど対話AIを導入することで、定型業務の自動化をより幅広い領域で行うことができ、顧客対応の質や業務効率を向上させることが可能です。ただし、音声認識の誤認識や対応範囲の限界、運用上の工夫が必要であるなど、技術的・運用上の課題は残ります。

CAT.AI CX-Botは、音声とテキストのハイブリッド対応により、こうした課題を解決します。複雑な条件分岐や文脈理解もサポートし、問い合わせ受付から処理完了までを一貫して支援します。これにより、業務効率化と顧客体験向上の両立を支援します。

この記事を通じて、AI音声認識と対話AIの活用が、DX推進や顧客体験向上にどう役立つかのイメージにつながれば幸いです。

AI音声認識の技術を活用した、対話AIについてご興味をもっていただけましたら、CAT.AI CX-Botの資料にて詳細をご覧いただけます。ぜひダウンロードして、貴社の業務改革にお役立てください。

CAT.AI ご紹介資料

企業の皆さまやユーザーの皆さまのIT活用を円滑化する総合的なコミュニケーションプラットフォーム、「CAT.AI」シリーズのご紹介資料です。

この記事の筆者

TOMORROWNET

株式会社トゥモロー・ネット

AIプラットフォーム本部

「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、複数AIエージェントが連携し、業務を自動化する「CAT.AI マルチAIエージェント」など、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。

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