AIエージェントの主な種類と特徴|最適な選び方を解説
「業務を自動化したいが、どのAIツールを選べばいいかわからない」
「機能や用途の違いがわかりにくい」というお悩みはないでしょうか。
AIエージェントには種類があり、単純作業に向いたものもあれば、複数のAIエージェントが連携して複雑な業務プロセスまで対応できるものもあります。正しく種類を選べば、自社の課題に応じた自動化が可能です。課題と導入するAIエージェントの種類が合わないと、思った効果が得られないことがあります。
本記事では、AIエージェントを「処理の仕組み」「役割の範囲」「AIエージェントの数」という3つの軸で整理し、「どの業務に、どの種類を選ぶべきか」という具体的な判断基準を解説します。自社の課題に最適なAIを見極め、導入を成功させるためのガイドとしてご活用ください。
Index
AIエージェントの「種類」を理解する重要性
AIエージェントの導入を検討する際、まず理解すべきなのが「種類」です。
「AIエージェント」という言葉は非常に広義に使われていますが、実際には解決したい業務課題によって、選ぶべきエージェントのタイプは大きく異なります。
ここでは、種類を考慮せずに導入した場合のリスクと、理解しておくメリットを解説します。
導入の失敗例:課題の複雑さとツールのミスマッチ
AIエージェントの種類や得意分野を考慮せず、漠然と導入してしまった場合に起こりうる失敗例を見てみましょう。
- 本来の課題
顧客からの受注処理(在庫確認〜納期回答〜システム登録まで)を全体的に自動化したい。 - 陥りがちな判断
「顧客への回答の自動化」という目前の課題解決を優先し、回答特化型(FAQボット等)の単一AIエージェントを選定したが、実際には在庫確認や、システム登録という作業も業務フロー上では必要だった。 - 結果
「納期はいつ?」という質問に対し、AIは「在庫状況によります」という一般論しか返せない。結局、顧客はオペレーターへの転送を希望し、在庫確認や登録作業は人が行うことになり、工数削減効果が限定的だった。
このケースの失敗原因は、AI自体の性能不足ではありません。「在庫確認からシステム登録」というプロセス全体の自動化が必要であるにもかかわらず、そのシステム連携の必要性を認識せず、「回答生成」という一部の機能に特化した種類を選んでしまったミスマッチが原因です。
種類を理解して導入するメリット
AIエージェントの種類を正しく理解することは、導入の失敗を防ぎ、期待した効果を得るために不可欠です。主に以下の3つのメリットがあります。
メリット1:課題と解決策の正しいマッチング
「単純な回答だけ自動化したい」のか「複雑な業務プロセスまで任せたいのか」によって、選ぶべき種類が明確になります。種類ごとの得意・不得意を知ることで、自社の課題解決に直結するツールを選定できます。
【具体例】
- 単純な質問対応のみ → 単一AI・FAQ特化型を選択
- 複雑な業務プロセスの完結 → マルチAIエージェント(複数AIが連携)を選択
課題とツールを正しくマッチングさせることが、導入効果を得るためのポイントです。
メリット2:コストの最適化
自社の業務内容や自動化の目的に応じて、必要な機能を適切に選ぶことで、導入時のコストを効率的に活用できます。これにより、短期間で効果を実感でき、運用負担も最小化できます。
【具体例】
- 定型業務にはシンプルな特化型AIを導入して、すぐに自動化の成果を確認
- 複数業務を扱う場合でも、まずは必要な機能だけを組み合わせて導入し、初期コストを抑えつつ効率的に運用
必要な機能を過不足なく導入することで、コストパフォーマンスを最大化できます。
メリット3:将来的な拡張性の担保
AIエージェントの種類を理解することは、将来のロードマップを描く上でも重要です。
単一の業務からスモールスタートする場合でも、将来的に業務範囲を広げる可能性があるならば、後から機能追加や他システムとの連携が可能なプラットフォームかを見極めておく必要があります。種類ごとの拡張性を知っておくことで、初期導入した資産を無駄にせず、スムーズに高度な自動化へ移行できます。
【具体例】
- まずは「特化型・シングルAI」として、特定の問い合わせへの自動回答のみを導入し、回答精度を検証する。
- 同じプラットフォーム上で在庫検索AIや予約登録AIを追加し、それらを連携させることで「マルチAIエージェント」へと進化させ、自動化の範囲を拡張する。
このように、将来的にマルチAIエージェントへ拡張できる基盤を選定しておくといった戦略的な導入が可能になります。
AIエージェントの分類
AIエージェントの種類は多岐にわたりますが、主に「仕組み」「役割」「AIエージェントの数」の3つの軸で分類できます。
それぞれの分類を知ることは、導入時のコスト感や自動化レベルを見極める上で重要な指針となります。
分類軸1:処理の仕組み
AIが「どのように判断して動くか」という軸です。業務の確実性と柔軟性のどちらを重視するかで選びます。
ルールベース型
事前に設定されたシナリオやルール通りに応答・処理します。「Aと聞かれたらBと答える」といった明確な手順がある業務に向いており、誤作動が許されない場面に適しています。
学習・予測型
過去のデータやLLMを用いて、未知の質問や曖昧な指示にも柔軟に対応します。「この傾向ならこう対応する」といった推論が可能で、複雑な文脈理解が必要な業務に適しています。
業務の正確性を重視するか、柔軟性を重視するかによって、ルールベース型か学習・予測型を選ぶ、といった形で、業務課題に応じて判断します。
分類軸2:役割の範囲
AIが「どの範囲の知識を持っているか」という軸です。専門性と対応幅のバランスに関わります。どちらにも得意・不得意な業務があるため、自動化させたい業務の幅にあわせて選びます。
特化型
経費精算、FAQ対応、日程調整など、特定のタスクに特化しています。導入が比較的容易で、特定の業務課題をピンポイントで解決するのに優れています。
汎用型
幅広い話題やタスクに対応できるエージェントです。
例えば、問い合わせ一次対応、資料作成支援など、複数のタスクをまとめてこなすような業務が得意です。
特定のタスクに集中させたいか、幅広い業務に対応させたいかで、特化型か汎用型を選択します。これも、業務課題に応じて最適な種類を選ぶ参考になります。
分類軸3:AIエージェントの数
業務を「単体で処理するか、連携して処理するか」という軸です。タスクの処理かプロセスの完結か、自動化したいレベルに直結します。
シングルAIエージェント
一つのAIが全ての処理を担当します。FAQ対応や単一システムへの入力など、処理が比較的シンプルで独立した業務の自動化に向いています。
マルチAIエージェント
複数のAIが役割分担し、連携して処理します。「受付AI」が要件を聞き、「在庫確認AI」がシステムを照会して、「登録AI」が手続きを行うといったように、複数の専門AIが連携することで、複雑な業務フローを完結させることができます。
単独で処理すれば十分な業務なのか、複数のステップやシステム連携が必要なのかに応じて、シングルAIかマルチAIを選ぶ、といった判断基準になります。
【ケース別】業務課題から選ぶAIエージェントの種類

前述した分類軸を踏まえ、実際のビジネスシーンではどのような種類のAIエージェントが活用できるのでしょうか。具体的な業務シナリオとセットで紹介します。
1. 定型業務の自動化(ルールベース・特化型)
ルールベース・特化型のシングルAIエージェントがおすすめです。
- 特徴
設定されたルールや手順に従って処理を実行します。 - 適した業務
手順が明確で、繰り返し実行される定型的なタスク。 - 具体例
社内FAQ対応、経費申請の初期チェック、定型データ入力。
手順が明確な定型業務には、柔軟性よりも「正確性」と「コスト効率」が重視されます。
例えば、社内規定に基づくFAQ対応であれば、創造的な回答は不要であり、決まった答えを返すことが求められます。この場合、高機能な学習型AIやマルチエージェントはオーバースペックになってしまうこともあります。
特定のタスクに特化し、ルールの通りに動くAIエージェントを選ぶことで、低コストかつ確実に自動化できます。
2. 高度な顧客対応(学習・予測型)
生成AIなどの学習・予測型の単一AIエージェントがおすすめです。
- 特徴
動作は過去のデータや学習結果に基づき処理されます。 - 適した業務
顧客の意図や状況を理解し、柔軟に対応する必要があるタスク。 - 具体例
コールセンターでの問い合わせの一次切り分け、Webサイトでの商品レコメンド。
顧客の曖昧な発言を理解したり、文脈を読んで適切な提案をしたりする必要がある場合、LLMなどを搭載した学習・予測型のAIが効果的です。
顧客の意図を汲み取り、自然な対話を行うことで、顧客体験(CX)を向上させることができます。業務範囲が限定的なら特化型、幅広い問い合わせを受けるなら汎用型を選択します。
3. 複雑な業務プロセスの自動化(マルチAIエージェント)
複数のステップや判断が必要なケースではマルチAIエージェントがおすすめです。
- 特徴
複数のAIエージェントが役割分担して連携し、広範囲の業務に対応します。 - 適した業務
複数ステップや判断を含み、システムをまたいで完結させる必要がある複雑な業務。 - 具体例
受注処理(在庫確認 → 納期回答 → 注文登録)、人事・経理の承認フロー自動化。
単一のAIエージェントでは、顧客対応と在庫システム操作と配送手配といった異なる専門スキルを同時に進行するのは困難です。
このような複雑なプロセスを自動化するには、それぞれの業務を得意とする複数のAIエージェントが連携しながら業務を進める「マルチAIエージェント」が最適です。
ケース別おすすめAIエージェント構成まとめ
これまで解説した3つの軸を組み合わせると、業務課題ごとに適した構成は以下のようになります。
定型業務の自動化(経費精算、FAQなど)
- [ルールベース] × [特化型] × [シングルAI]
- 正確性とコストパフォーマンスを最優先する構成です。
高度な顧客対応(接客、レコメンドなど)
- [学習・予測型] × [特化型 or 汎用型] × [シングルAI]
- LLMを活用し、対話の柔軟性を重視する構成です。
複雑な業務プロセスの自動化(受注処理、手続き代行など)
- [学習・予測型] × [マルチAIエージェント]
- 複数のAIが連携し、システム操作を含めた一連のフローを完結させる構成です。
業務の複雑さや求められる柔軟性に応じてこれらの要素を適切に組み合わせ、過不足のない構成を見極めましょう。
自社に最適なAIエージェントの「種類」を選ぶポイント
多様なAIエージェントの中から、自社に最適な種類を選ぶためには、どのような点に注意すべきでしょうか。3つの選定ポイントを解説します。
1. 自動化したい業務の複雑さ
自動化したいのが単発のタスクなのか一連のプロセスなのかを確認しましょう。
プロセス全体(例:受付から登録完了まで)を自動化したい場合、シングルエージェントでは機能不足になる可能性が高いため、マルチエージェント対応のプラットフォームを選ぶと良いでしょう。
2. 既存システムとの連携
AIエージェントの能力を最大限活かすには、社内の各種システム(CRM、在庫管理、RPA、基幹システムなど)とスムーズに連携できることが重要です。
AIが判断した内容を実際の業務に反映させるには、「API連携が可能か」「既存ツールと統合的に運用できるか」が重要です。システム連携がスムーズに行えることで、AIが判断した内容を即座に業務に反映でき、自動化の効果を最大化できます。
3. 学習・生成の範囲
LLMを活用する場合、どの程度の情報を参照し、どれくらい生成できるかを確認することが重要です。
具体的には、過去のデータやナレッジをどこまで参照可能か(RAG等の活用)や、誤った情報の生成(ハルシネーション)を防ぐ仕組みがあるかをチェックしましょう。
自動化したい業務のリスク許容度に応じて、生成AIの活用度や精度が適切かを判断する必要があります。
自社の課題に最適なAIエージェントを選ぼう
本記事では、AIエージェントの主な種類について、分類軸や業務シーンを交えて解説しました。
AIエージェントは種類によって得意・不得意があります。「自社が自動化したい業務は、単純なタスクか、それとも複数のシステムが絡む複雑なプロセスか」を明確にすることが、最適なエージェントを選ぶ第一歩です。
特に、本文中でもご紹介したように、従来の単一AIでは難しかった複数のシステム連携や判断など、複雑な業務プロセスの自動化には複数のAIエージェントが役割を分担して連携する「マルチAIエージェント」というアプローチが有効です 。
トゥモロー・ネットが提供する「CAT.AI マルチAIエージェント for Chat」は、まさにそうした高度な業務支援を実現するために設計されたプラットフォームです 。
複数のAIエージェントがそれぞれの役割を担い連携して動作するため、複雑な業務プロセスでも個々の処理を最適化しながら全体を正確に進められます。
また、オンプレミスやクローズド環境での運用にも対応できる設計のため、セキュリティを確保しつつ現場の運用ルールに沿った柔軟な活用が可能です。タスク管理やデータ連携など幅広い業務フローに対応できる点も特長です。
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複数のAIエージェントが連携して対話・判断・処理を自動化。企業の業務効率化と顧客満足向上を支援します。
この記事の筆者

株式会社トゥモロー・ネット
AIプラットフォーム本部
「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、複数AIエージェントが連携し、業務を自動化する「CAT.AI マルチAIエージェント」など、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。

