LLMにおけるRAGとは?生成AIの弱点を補う仕組みと3つのビジネス活用事例

投稿日 :2025.12.05 

「社内のマニュアルをAIに読み込ませて、業務を効率化したい」
生成AIの普及に伴い、こうしたニーズを持つDX担当者様が増えています。

ただし、一般的なLLM(大規模言語モデル)は学習済みデータに基づいて回答をするため、最新のニュースや、社内情報などに対応するには限界があります。そこで注目されているのが、これらの弱点を補う技術「RAG(検索拡張生成)」です。

本記事では、RAGがなぜビジネスに必要なのか、その仕組みをわかりやすく解説します。さらに、ヘルプデスクや顧客対応などの活用事例とスムーズな導入方法についてもお伝えします。技術の仕組みだけでなく、自社業務で生成AIをどのように活用できるかを具体的にイメージするきっかけとしてご活用ください。

そもそもRAGとは?LLMの弱点を補う技術

LLMを活用するうえで避けて通れない課題のひとつが「正確性」です。そこで注目されているのが、LLMに外部データを参照する仕組みを組み合わせる「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」という技術です。RAGでは、LLMが必要な情報を外部から探し出し、回答の裏付けとすることで、正確性の向上を図ります。

まずは、なぜLLM単体では業務での活用が難しいのか、その背景から見ていきましょう。

LLMが抱える「2つの弱点」とハルシネーション

ChatGPT、Geminiなどに代表されるLLMは、インターネット上の記事や書籍など過去の膨大なテキストデータを事前学習しており、自然な文章作成や要約などが得意です。しかし、ビジネスでの活用を考えた際に注意したい2つの弱点があります。

  • 情報の鮮度:学習データが過去のものであるため、最新のニュースや出来事の情報を認識していない
  • 情報の範囲:インターネット上に公開されていない、社内情報や製品情報などを取得できない

さらに、LLMには学習データにない内容でも、もっともらしい回答を作成するハルシネーションを起こすことがあります。正確さが重要な業務において、この弱点への対策は必須と言えるでしょう。

RAGは「必要な情報を調べて回答する仕組み」

LLMの弱点を補うため、RAGはLLMに「必要な情報をその都度検索して回答に活かす仕組み」を持たせる役割を果たします。

学習データだけに頼るのではなく、外部のデータベースを参照できるようにすることで、学習データにない情報や最新の事実に基づいた正確な回答が可能になります。

RAGが回答を生成する仕組みとファインチューニングとの違い

RAGは実際に裏側でどのような動きをしているのでしょうか。仕組みを理解しておくと、導入後の運用イメージが湧きやすくなります。また、よく比較される「ファインチューニング(追加学習)」との違いも整理しておきましょう。

情報の検索と生成のプロセス

RAGによる回答生成は、大きく分けて2つのステップで進行します。

  1. 検索:ユーザーから質問や指示があると、まず関連する情報をデータベースから情報を探し出します。
  2. 生成:検索で見つけた情報をヒント(コンテキスト)としてLLMに渡し、回答を作成させ、ユーザーに提示します。

このプロセスを経ることで、LLMは学習していない社内固有の情報であっても、検索結果を参照して正確に答えられるようになるのです。

RAGとファインチューニングの使い分け

AIに外部の知識を持たせる方法として、RAGのほかに「ファインチューニング」という手法があります。それぞれ得意なことが異なるため、目的によって使い分けるのがおすすめです。

  • RAG:質問に応じて外部データベースを検索し、最新情報や事実に基づいた正確な回答を生成する。情報更新が頻繁な場合や、学習データにない社内情報への対応に向く。
  • ファインチューニング:特定の業界知識や社内ドキュメントの内容をモデルに組み込み、専門用語や独自ルール、口調・文体を反映した回答を生成する。ドメイン知識の埋め込みにも有効。

情報の性質や業務用途に応じて、RAGとファインチューニングを使い分けることで、正確さと応答の質を両立できます。

RAGのビジネス活用例3選【業務効率化・CX向上】

次に、実際にRAGがどのような業務課題を解決しているのか、具体的なユースケースを見ていきましょう。

ケース1:社内ヘルプデスク(就業規則・経費精算)

【よくある課題】
総務や経理部門には、「有給休暇の申請期限はいつまで?」「タクシー代の精算ルールは?」といった、質問が日々寄せられます。担当者はその対応に追われ、本来の業務に集中できないという悩みがあります。

【RAGの活用例】
最新の就業規則や経費精算マニュアルをデータベース化し、RAGで検索できるチャットボットを導入します。従業員が質問すると、AIが該当する規定を参照し、「就業規則第〇条に基づき、申請は3日前までに行ってください」のように回答します。

結果として、担当者の負担が軽くなり、従業員も待ち時間なく疑問を解決できる環境が整います。

ケース2:技術サポート・保守業務(製品マニュアル検索)

【よくある課題】
保守メンテナンスの現場では、扱う製品の種類が膨大になります。

経験が浅い社員だと、トラブルシューティングのために分厚いマニュアルを探すだけで時間がかかり、現場対応の遅れに繋がります。

【RAGの活用例】
過去のトラブル対応履歴や製品仕様書をRAGシステムに連携させます。現場の作業員がスマホやタブレットで「エラーコードE-01の対処法は?」と入力すると、AIが過去の事例やマニュアルから適切な手順を即座に提示します。

ベテラン社員の知識や経験を参照できる状態を作ることで、属人化を解消し、サービス品質の均一化に繋がります。

ケース3:カスタマーサポート(ECサイト・FAQ)

【よくある課題】
ECサイトのカスタマーサポートでは、キャンペーン情報や商品の仕様変更が頻繁に発生します。オペレーターは複数のシステムを都度確認しながら対応する必要があり、問合せ対応に時間がかかります。

【RAGの活用例】
FAQや注文管理システムの情報をRAGで検索し、AIが正確な回答を自動生成する仕組みを導入。複雑なケースはスムーズに有人対応に引き継ぐためのフローも設定します。

これにより、一次対応の自動化でオペレーターの負荷を軽減し、回答スピードと正確性の向上にも繋がります。結果として、顧客満足度の改善に直結します。

RAGを業務利用するための3つのハードル

自社で導入しようと思っても、実際にゼロから構築するにはいくつかのハードルがあります。

データ整理と権限管理の難しさ

RAGはデータを入れれば良いわけではありません。参照元となるマニュアルが散乱していたり、内容が古かったりすれば、誤った情報を検索してしまいます。

また、マニュアルには閲覧制限が設定されていることも多いため、AIが参照する際にも同じセキュリティを適用する必要があります。つまり、「部長以上のみ閲覧可能」といった権限をどのように反映させるかが課題となります。

運用し続ける仕組みが必要

RAGはシステムを構築しただけでは十分に機能しません。回答精度を維持するためには、検索対象のデータの追加・修正や、うまく答えられなかった質問への対応など、継続的な運用が不可欠です。

社内だけで運用する場合、これらの作業が大きな負担となることがあります。

複数のAIツール・システムとの連携が必要

業務で活用する場合、単に質問に答えるだけでなく、検索結果をもとに申請や報告などの社内手続きに連携させたいケースもあります。

自社で構築する場合、こうした業務フローに対応するために複数のシステムやAIツールを統合する必要があり、設計や運用の難易度が高くなります。

「RAGを組み込んだソリューション」の活用が現実的

自社でゼロからの開発を行うのは、技術的な難易度も運用コストも高くなりがちです。そのため、すでにRAGの仕組みが組み込まれたパッケージ製品やプラットフォームを活用するのが、ビジネスにおいては現実的かつ効率的な近道です。

RAGの仕組みを“使うだけ”にできるメリット

専用のソリューションを利用すれば、データ投入後の設定や調整があらかじめ仕組み化されているため、立ち上げがスムーズです。複雑なシステム構築に時間を割くことなく、本来の目的である業務改善やサービスの品質向上に集中できます。

また、導入後のサポートやメンテナンスも実施してもらえるベンダーであれば、運用の負担も大幅に削減できます。

複数LLMを組み合わせた柔軟な構成が可能

RAGソリューションの中には、特定のLLMに固定されず、ChatGPT、Claude、Gemini、Llamaなど、複数のモデルから最適なものを選んで連携できるものがあります。

特定のLLMのみに依存すると、そのサービスの障害や仕様変更のリスクを抱えることになりますが、複数モデルに対応していればリスクを分散できます。また、「複雑な推論は高精度なモデル」「簡単な応答は軽量で安価なモデル」といった使い分けが可能になるため、企業にとってコスト最適化にもつながります。

RAGでLLMのポテンシャルを最大化しよう

RAGは、情報の正確性を高め、LLMを実務レベルで活用するために欠かせない技術です。
社内ナレッジをAIと連携させることで、検索時間を短縮し、従業員がより創造的な業務に集中できる環境を作ることができます。まずは、特定の業務範囲からスモールスタートで検証を始めてみてはいかがでしょうか。

ただし、自社でゼロからRAGを構築・運用するには、データ整備や権限管理、運用体制の構築など一定のハードルがあります。より効率的に、かつ安全にRAGを活用しながら業務自動化を進めたい場合は、すでにRAGの仕組みが組み込まれたソリューションを活用するのが手軽かつ効果的な方法のひとつです。

RAGを活用しながら、複雑な業務プロセスの自動化を目指すなら、トゥモロー・ネットの「CAT.AI」がおすすめです。

トゥモロー・ネットのCAT.AI マルチAIエージェント for Chatは、複数のAIエージェントやツールを統合的に活用し、高度な業務自動化を実現します。これにより、単一のAIツールだけでは対応しきれない複雑な業務フローにも対応可能となり、業務効率化の幅が広がります。

  • 役割分担と連携:ナビゲーションAI、生成AI、オペレーショナルAIなど、各AIエージェントが専門分野に特化し、リードエージェントの指揮のもとで連携します。これにより、複雑な業務や多段階のタスクもスムーズに処理できます。
  • オールインワンプラットフォーム:エージェントの管理からデータ分析まで一括で対応できるため、開発・運用・品質管理が1つの環境で完結し、運用コストの削減が期待できます。
  • 多様な生成AIとの連携:ChatGPT、Claude、Gemini、Llamaなど、複数の生成AIと連携できるため、柔軟な対応が可能です。

CAT.AI マルチAIエージェント for Chatがどのように自社の業務改善に活かせるのか、以下の資料で詳細の機能や活用例をご確認ください。

この記事の筆者

TOMORROWNET

株式会社トゥモロー・ネット

AIプラットフォーム本部

「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、複数AIエージェントが連携し、業務を自動化する「CAT.AI マルチAIエージェント」など、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。

一覧へ戻る

お問い合わせ・
資料請求

ご不明な点や気になることなど、
なんでもお気軽に
お問い合わせください。

まずはお問い合わせ
簡単でも体験
簡単デモ体験
お問い合わせ