AIエージェントサービスの種類と機能|自社の課題を解決する最適なソリューションの見つけ方
企業のDX推進が進む中で、自律的にタスクを実行するAIエージェントは、高度な業務支援ツールとして注目されており、導入を検討する企業も増えています。
しかし、AIエージェントサービスにはさまざまな種類があり、自社の課題を解決するには、それぞれの特性を理解したうえで、自社に適したサービスを選択することが重要です。
本記事では、AIエージェントサービスの種類とそれぞれが持つ機能、そして導入効果を高めるための選び方のポイントを解説します。
Index
人間の代わりに業務を遂行!AIエージェントの3つの特徴
AIエージェントとは、人間が設定した目標を達成するために、自ら必要なデータを集め、そのデータをもとに最適なタスクを選択・実行するプログラムのことです。
企業活動においては、業務プロセスを最適化し、生産性や企業価値の向上を実現するために活用されつつあります。
主な特徴として以下の3点が挙げられます。
- 自律性
- 高度な自己学習能力
- マルチモーダル対応
それぞれ詳しく説明します。
自律性
AIエージェントは自律的に動作するシステムです。
人間の指示に従ってタスクを実行する生成AIとは異なり、AIエージェントは設定された目標を達成するために、人間の指示なしに状況を分析し、最適な行動を自律的に判断・実行するのが特徴です。
そのため、定義されたルールに従うだけでなく、状況に応じた柔軟な対応が可能で、より複雑な課題解決やプロジェクトの管理を効率的に行うことができます。さらに、特定の作業に対して自動的に優先順位を設定し、リソースを割り当てる、といったことも可能です。
高度な自己学習能力
AIエージェントの中には、機械学習や強化学習の技術を活用し、ユーザーの行動や環境に応じて継続的に判断精度を高められるものもあります。
従来の生成AIは、大量のデータから学習しコンテンツを生成していましたが、AIエージェントはそれにとどまらず、タスクを実行した後、その結果を自ら評価したりフィードバックを受けたりすることで継続的に判断・行動を最適化できるのです。
これにより、個々の状況や好みに合わせた柔軟な提案が可能になり、業務効率やサービス品質の向上が期待できます。
ただし、すべてのAIエージェントが自己学習機能を備えているわけではなく、設計・運用方法によってその性能には差がある点を押さえておきましょう。
マルチモーダル対応
AIエージェントは複数の情報を同時に扱える「マルチモーダル」という特徴も持っています。テキストだけでなく、画像や音声、動画など複数のデータを同時に処理し、統合的に分析することが可能です。
例えば、カスタマーサポート業務において、顧客の音声による問い合わせをリアルタイムで解析し、適切な解決策を自動提案します。
さらに、顧客の話し声から感情も分析し、より適切な対応を実行するといった、より高度な意思決定が可能になります。
関連記事:AIエージェントとは?仕組みと特徴について解説します
AIエージェントサービスの種類と役割

AIエージェントサービスにはさまざまな種類があり、企業の目的やニーズに応じて、自動化の効果を最大限に得るためには自社に適したサービスを選択することが重要です。
AIエージェントは機能や動作原理によって、以下のように複数の種類に分けられます。
- 単純反射型エージェント
- モデルベース反射型エージェント
- 目標ベース型エージェント
- 効用型エージェント
- 学習型エージェント
- 階層型エージェント
- マルチエージェントシステム
ここからは、AIエージェントサービスの7つの種類について、それぞれ詳しく解説します。
単純反射型エージェント
最も基本的なAIエージェントが「単純反射型エージェント」で、他と比べてシンプルな仕組みになっています。
自ら学習して判断基準を変化させるのではなく、あらかじめ設定されたルールや条件に従って意思決定を行うAIエージェントです。定型的な業務を効率化したい場合や、企業のルールが明確に定義されている場合に役立ちます。
一方で、自ら学習して判断基準を更新することはなく、すべての意思決定は事前に設定された条件に基づいて行われるため、あらかじめ設定された規則以外の事象が起きると、対応できないケースもある点に注意が必要です。
【具体例】
スマートフォンの画面の明るさ自動調整、エアコンの温度自動制御、コールセンターのIVR(自動音声応答システム)、ルールベースのチャットボットなど。
モデルベース反射型エージェント
モデルベース反射型エージェントは、外部環境から得られる情報をもとに現在の状態を推定するだけでなく、その先の展開も予測しながら行動を決定するAIエージェントを指します。
過去の行動や経験を記憶して、現在の状況に似ている事例がないかを照らし合わせ、最適な手段を導き出せるのが特徴です。これにより、リスク管理や需要予測などが可能になります。
【具体例】
自動運転車が周囲の車の動きを予測して安全な車線変更を行う、商品の売れ行きを予測して在庫量を調整するなど。
目標ベース型エージェント
目標ベースエージェントは、あらかじめ設定された目標達成に向けて予測・検討を行い、最適な行動を実行するAIエージェントです。
将来の状態を考慮せずに行動する単純反射型エージェントと異なり、明確に定義された目標の達成に焦点を当てているため、状況や環境の変化にも応じた対応ができます。
また、現在の行動から将来の結果を予測して意思決定するため、より柔軟なアプローチに繋がります。
【具体例】
お掃除ロボットが「部屋全体をきれいにする」という目標のために効率的な掃除ルートを計画・実行するなど。
効用型エージェント
効用型エージェントは、複数の選択肢から最も有益な結果(効用)を選択するAIエージェントです。
目標を達成するためだけでなく、その選択肢の“どれが最も望ましいか”や“どれくらいのリスクがありそうか“を数値化し、評価することで最も効果的で満足度の高い行動を自律的に選択できることが特徴です。
状況に合わせた最適な選択肢に導くため、将来的な満足度や成長性、リスクなど、さまざまな指標を複合的に評価して総合的な判断を行います。
【具体例】
投資AIが、リターン、リスク、安定性などを評価して最適な資産配分を提案するなど。
学習型エージェント
学習型エージェントとは、環境や過去の経験を通じて自ら学び、改善を行いながら、判断や行動パターンの最適化を図るAIエージェントです。
与えられたタスクを繰り返すことで、機械学習などの技術を活用して、結果を評価し、自身の内部モデルを更新することができるため、使えば使うほどパフォーマンスが向上します。
あらかじめプログラムされた知識に頼ることなく、自らの経験を通じて最適な行動パターンを導き出せるのが特徴で、環境の変化にも柔軟に対応できます。
【具体例】
迷惑メールフィルタが、ユーザーからの報告を学習して新しい手口の迷惑メールを自動でブロックするなど。
階層型エージェント
階層型エージェントとは、複数のエージェントを統合して複雑なタスクを処理するAIエージェントです。
上位エージェントから下位のエージェントに向かってレベルの異なる意思決定を行う構造になっており、上位が下位にタスクを割り当てています。下位のエージェントが担当したタスクを上位のエージェントが管理して全体の目標達成へと導きます。
タスクを管理しやすいサブタスクに分解することで、大規模で複雑なシステムでも効率的に管理できる点が特徴です。
【具体例】
スマート工場で、生産計画を立てる上位エージェントと、個別の機械を制御する下位エージェントが連携して稼働するなど。
マルチエージェントシステム
マルチエージェントシステムは、複数の自律的なエージェントが相互に連携しながらタスクを実行し、全体として高度な目的を達成するための仕組みです。
各エージェントはそれぞれ専門的なスキルや役割を持っており、互いに情報交換し、協力することで共通の目標達成を目指します。
そのため、単独のエージェントでは難しい、大規模な課題に対しても柔軟に対応できるのがメリットです。
【具体例】
オンラインの配車サービスで、多数の「車両エージェント」と「顧客エージェント」がリアルタイムで通信し、最適なマッチングを実現するなど。
AIエージェントを選ぶ際に注目すべきポイント

AIエージェントツールを選定する際には、さまざまな観点から総合的に評価することが重要です。これから紹介する選び方のポイントを踏まえて、自社に適したツールを選定しましょう。
自社の課題を整理する
まずは、AIエージェントの導入目的や自社の課題を明確にし、その目標達成や課題解決に貢献できる機能を保有しているか確認する必要があります。
自社の業務ニーズに合致していなければ、期待する効果は得られません。目的に応じた適切なAIエージェントの選定が、導入後の結果を大きく左右するため、導入そのものが目的にならないよう、あらかじめ運用計画を立てておきましょう。
AIエージェントサービスのタイプを確認する
サービスの提供形態という観点からも自社の目的に合ったサービスを選ぶことが重要です。
AIエージェントサービスのタイプとしては、主に以下が挙げられます。
- 対話型:ユーザーとの会話を通じて業務を支援するタイプ。
(例:チャットボット、音声アシスタント) - 業務支援型:バックグラウンドでタスクを自動実行するタイプ。
(例:データ入力、レポート作成の自動化) - 意思決定支援型:データを解析し、リスクや効果を見極めて最適な選択肢を提案するタイプ。
(例:市場分析、需要予測)
例えば、対話型のAIエージェントであれば、人とのコミュニケーションを必要とする業務に適しているため、カスタマーサポートや営業担当の業務支援として有効です。
対応させたい業務範囲を決める
システム導入前に、AIエージェントに対応させる業務範囲を決めておきましょう。
単なるFAQ対応にとどまるのか、対話から情報収集、手続き処理まで一貫して対応させたいのかは大きな違いです。
特定業務特化型か、汎用型かなどによっても導入・運用コストや難易度が大きく変わってくるため、業務プロセスのどこまでをAIエージェントで代替したいかに応じてシステムを選定する必要があります。
自動化させる範囲を広げると、効率性は向上しますが、同時にリスクも増大するため、企業それぞれがリスクを踏まえた選定と対策を行うのが不可欠です。
データ特性に応じた参照方法を選ぶ
AIの精度はデータ参照方法に大きく左右されるため、データ特性に応じた手法の選定が求められます。
例えば、顧客リストや商品マスタのように項目が整理された構造化データの場合は、内部データベースへ直接クエリを実行するのが効率的です。
しかし、マニュアルや議事録、メール文面などの非構造データが多い場合は、RAG(検索拡張生成)を活用した方が、関連性の高い情報を迅速に取得できるため、回答の正確性が向上します。
API連携を確認する
AIエージェント単体では実行できることに限界がありますが、API連携によって、業務範囲や精度を大幅に高められます。
API連携は、API(Application Programming Interface)を使って、異なるシステムやアプリケーション間でデータ等を共有し、連携させるものです。GoogleカレンダーやGoogleマップ、チャットツール、顧客管理システムなど業務で日常的に使っているツールとAIエージェントとをつなげることで、よりスムーズな運用が可能になるでしょう。
例えば、AIエージェントにAPIを連携させると、ただ会話をするだけでなく、会話の流れからGoogleカレンダーに予定を登録・確認するなど、業務効率が格段にアップします。
コストとサポート体制を確認する
導入や運用にかかるコストを確認し、それに対する費用対効果を想定して導入を検討することが重要です。費用対効果を検証するためには、PoCを行うことなどが有効です。
機能の充実度、オプションなどによって料金は大きく変わってくるため、搭載機能が自社にとって過不足がないかをチェックしましょう。
また、AIエージェント運用中にトラブルが発生したり、調整が必要になったりした場合に、すぐにサポートを受けられるのか、サポート体制を確認する必要もあります。
長期的・安定的に運用を行うために、サポート体制が充実しているかは非常に重要なポイントとなります。
AIエージェントの理解を深めて自社に適したソリューションを導入しよう
AIエージェントは機能や動作原理によって多様な種類があり、目的や業務の複雑性に応じた選定が成果を左右します。
例えば、単純なタスクの自動化であれば単一機能のエージェントで十分ですが、対話を通じて顧客の課題を把握し、そのまま予約や手続きの処理まで自動化させたいといった複雑なケースでは、本記事で紹介した複数のAIエージェントが連携する「階層型」や「マルチエージェントシステム」のような構造を持つソリューションが有効です。
そのような高度なニーズに対応する選択肢の一つが、弊社の「CAT.AIマルチAIエージェント」です。
CAT.AIマルチAIエージェントは、生成・ナビゲーション・オペレーショナルの各AIが役割分担し、リードエージェントの指揮のもとで自律的に連携・処理を行う次世代型ソリューションです。対話による課題把握から情報収集、手続き処理までを一気通貫で自動化し、複雑な業務にも対応可能です。チャットと音声の両チャネルをカバーし、シームレスな顧客体験を実現。柔軟な対話力と高い処理能力を兼ね備え、AIによる自然な会話を通じて企業の課題解決を支援します。
自社に最適なAIエージェントの導入を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
この記事の筆者

株式会社トゥモロー・ネット
AIプラットフォーム本部
「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、生成AIと連携したサービス「CAT.AI GEN-Bot」を筆頭に6つのサービスが含まれ、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。