チャットボットの費用対効果はどう測る?試算方法と導入効果を高めるためのポイント

問い合わせ対応にチャットボットを導入することで、業務効率や顧客満足度の向上、さらにはサービス品質やコンバージョン率の改善といったさまざまな効果が期待できます。
「導入したらどれくらいの効果が見込めるのか?」と、費用対効果が気になっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、チャットボット導入時に確認しておきたい費用対効果の試算方法と、導入効果を高めるためのポイントについて詳しく解説します。
導入後の効果を最大化するためにも、ぜひこの記事を参考にしていただけたら幸いです。
Index
チャットボットの主な種類
チャットボットは、仕組みや機能、対話方法、AIの有無によって大きく以下の2つに分類されます。
- シナリオ型チャットボット
- AI搭載型チャットボット
これらを組み合わせたハイブリッド型も存在しますが、それぞれの特性によって導入コストや運用性が異なるため、導入前にはしっかりと確認しておく必要があります。
以下、それぞれの主な特徴をご紹介します。
シナリオ型チャットボット
あらかじめ設定されたシナリオをもとに、ユーザーの質問に回答するのがシナリオ型チャットボットです。 シナリオとは、ユーザーの課題を解決するまでのフローを指し、選択肢形式でやりとりが進みます。
初期費用を抑えやすい反面、用意された内容に沿っての対応となるため、AI搭載型と比較すると柔軟性が乏しいといえます。柔軟性を上げるために選択肢を多くしすぎるとユーザーが途中で離脱する原因になることもあるため、対応の範囲や内容は絞られる傾向にあります。
AI搭載型チャットボット
AI搭載型は、ユーザーの入力内容をAIが解析し学習させたデータの中から適切な回答を提示するチャットボットです。 シナリオ型と比較すると、より柔軟で自然な対話ができます。また、蓄積されたデータをもとに学習・改善を繰り返すことで、回答精度も向上します。
チャットボット導入・運用にかかる費用
チャットボットの費用対効果を判断するには、まずはどの程度の費用がかかるのかを把握することが必要です。費用は主に以下の3つに分けられます。
- 初期費用
- 月額費用
- オプション費用
それぞれの内容について説明します。
費用①初期費用
導入時に発生する初期費用には、システム設計や設定、サポートなどが含まれるケースが一般的です。 AIチャットボットは設定が複雑なため、シナリオ型に比べてやや高めの傾向があります。
シナリオ型チャットボットでは初期費用が無料のプランもありますが、サポートが限定的になることが多いので、内容をしっかり確認しましょう。
費用②月額費用
月額費用は、クラウドサービスとしてチャットボットを運用するための料金です。
チャットボットの多くはクラウド型の提供形態であるため、クラウド環境の利用料として、月額費用を支払うケースが一般的です。
AIの有無や他システムとの連携機能などによって価格帯は変動するため、価格だけで判断せず、自社に必要な機能が含まれているかどうかを重視しましょう。
費用③オプション費用
チャットボットツールの中には、さまざまな追加オプションが用意されているケースがあります。具体的なオプション内容としては、以下のとおりです。
- シナリオ設計支援
- 運用状況の分析レポート
- アカウント数や利用回数の追加
- 運用コンサルティング
- 他ツールとの連携
- 有人チャットへの切り替え など
これらの費用は、基本プランに含まれる場合もありますが、別途追加費用が発生することもあります。ツールによってオプション費用の有無や料金が変わるため、あらかじめベンダーに確認することをおすすめします。
チャットボットの費用対効果の試算方法

チャットボットの費用対効果は、以下の指標から評価できます。
- 重要業績評価指標 (KPI)の選定と効果測定
- 投資収益率(ROI)の計算
- チャットボットの利用率
- コンバージョン率
- 問い合わせ対応の削減時間
- ユーザーの満足度
詳しく見ていきましょう。
重要業績評価指標 (KPI)の選定と効果測定
AIチャットボットの導入目的に応じて、適切な重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)を設定しましょう。重要業績評価指標とは、組織の目標達成に向けたプロセスの進捗管理に役立つ指標で、回答精度・応答時間・ユーザー満足度などを測定するのに大切なものです。
特に、回答率と解決率は、チャットボットの対応品質を評価するのに重要な指標であり、以下のように測定してチャットボットの知識量や効果を評価します。
【チャットボットの回答率=(回答を提供した会話数 ÷ 総会話数)× 100】
【チャットボットの解決率=(問題が解決された会話数 ÷ 総会話数)× 100】
投資収益率(ROI)の計算
費用対効果を測るうえで、投資収益率(ROI:Return on Investment)の算出も有効です。投資利益率は、企業が投資した費用に対して得られる利益の割合を示す指標であり、かかる費用と期待される効果に基づいて、算出することが可能です。
投資収益率の算出方法は以下の計算式で成り立ちます。
【投資利益率(ROI)=(得られた利益 – 投資した費用)÷ 投資した費用 × 100】
例えば、100万円を投資してチャットボットを利用し、20万円の利益が得られた場合、投資利用益は20%になります。
チャットボットの利用率
自社のWebサイトを訪問したユーザーのうち、チャットボットを利用した件数を確認しましょう。
これは、チャットボットの利用率を把握するための指標となり、利用者が極端に少ない場合は、「チャットボットの場所が分かりづらい」などの理由が考えられます。
その場合は、表示方法や場所を改善するなど、チャットボットへの導線を見直す必要があります。
チャットボット経由のコンバージョン率
コンバージョン率は、チャットボットの利用により、ユーザーの行動を促すことができたのかを示す指標です。具体的には、以下の行動を引き出せたのかを測ります。
- 商品の購入
- サービスの申し込み
- 会員登録
- 問い合わせ
- 資料請求・ダウンロード など
コンバージョン率の求め方は下記のとおりです。
【コンバージョン率=コンバージョン数÷サイトへの訪問数(セッション数)×100】
問い合わせ対応の削減時間
チャットボット導入前に比べて、問い合わせ対応時間をどれだけ削減できたのかを確認することで導入効果を測定できます。オペレーターの対応時間や電話やメールへの問い合わせ件数が大幅に少なくなったと分かれば、導入効果があったといえます。
特に、チャットボット導入の目的を「有人対応時間の削減」としていた場合は、対応時間や件数の変化を定期的に振り返ることが、運用の見直しにもつながります。
ユーザーの満足度
ユーザーの満足度も効果測定において重要な指標です。
例えば、チャットボットの利用後に「この回答に満足しましたか?」という簡単なアンケートを実施し、「はい」か「いいえ」などの選択肢を提示し、ユーザーにどちらかを選んでもらうことで満足度を測定します。
チャットボットの導入成果を最大限引き出すためのポイント

費用対効果を最大化するためには、導入前の準備と導入後の運用体制が鍵を握ります。
以下の5つのポイントを意識してみましょう。
- 導入の目的や自社の課題を明確にする
- 長期的な視点で考える
- 担当チームを作って運用する
- ユーザーが使いやすいような工夫をする
- 継続して精度を向上させる
それぞれ詳しく説明します。
導入の目的や自社の課題を明確にする
チャットボット導入後の費用対効果を高めるためには、導入目的や自社の課題を明確にしておくことが重要です。
これらが曖昧な状態で導入すると、自社に必要な機能が搭載されていないツールを選択してしまう可能性があります。
そのため、まずは導入目的や課題をしっかりと洗い出し、適当なツールを選びましょう。また、導入前に具体的な目標値を設定しておけば、導入後の効果測定や改善活動を効率的に進めることができます。
長期的な視点で考える
チャットボットの導入は、短期的な効果だけでなく年単位などの長期的な視点で考えることが重要です。
「費用が安い」などの目先のメリットだけで判断してしまうと、期待した効果が得られず、導入目的が果たせなくなるといった懸念があります。
長期的に見て得られるメリットが大きいと判断できるのであれば、それは十分に費用対効果の高い投資と言えるでしょう。
担当チームを作って運用する
チャットボットの効果を最大限に引き出すためには、適切な社内運用体制が不可欠です。チャットボットの管理・運用を担当する専門のチームを作り、以下の業務を行いましょう。
- 教育・トレーニング
- ガイドラインの作成
- 他部署との連携体制の構築
社内に専門知識を持つ人材がいない場合は、アウトソーシングするのも方法の一つです。ベンダーによってはこれらの業務を包括的に請け負うサポート体制を整えている場合もありますので、社内のリソースに不安がある場合は一つの選択肢として検討することをおすすめします。
ユーザーが使いやすいような工夫をする
チャットボットを利用する際、ユーザーは何を聞いたら良いのか分からず、途中で諦めてしまうことがあります。
コンバージョン率を高めるためには、ユーザーが迷わないように、先回りしてサポートすることが大切です。具体的には、入力欄の近くに質問の例を表示したり、よくある質問の選択肢をあらかじめ表示させたりするなどの工夫が考えられます。
ユーザーが使いやすいように工夫することで、チャットボットの効果を最大限に引き出すことができるでしょう。
継続して精度を向上させる
ユーザーからの問い合わせに対して、チャットボットが正確に回答し、疑問を解決することで、顧客満足度が向上し、最終的には売上アップにも繋がることが期待できます。そのためには、チャットボットの精度を常に高めていく必要があります。
AI搭載型のチャットボットの場合、運用開始後もお客様からの質問データを分析し、AIに学習させ続けることが重要です。加えて、新しい製品情報、サービス内容の変更、キャンペーン情報などを迅速にAIの知識ベースに追加・更新し、常に最新かつ正確な情報を提供できるようにすることも不可欠です。学習とデータの更新を繰り返すことで、AIはより適切な回答ができるようになります。
チャットボットの効果測定を行い、費用対効果を高めよう
チャットボットは、問い合わせ対応の効率化や顧客満足度の向上など、様々な効果が期待できるツールです。もし、自社の課題解決に役立ちそうであれば、ぜひ導入を検討してみてください。
ただし、チャットボットは「導入しただけで終わり」ではありません。導入効果を得るためには、効果測定をしっかりと行い、定期的に見直しや改善を続けることが重要です。
チャットボットの導入には費用がかかりますが、長期的な視点で運用し、自社のニーズに合ったチャットボットを選び、継続的に精度を高めていくことで、費用対効果の高い運用が実現できるはずです。
CAT.AIでは、専門のアナリティクスセンターにて、CX(カスタマーエクスペリエンス)視点から日々のAIや対話ログの解析を行い、品質向上やシナリオ改善のご提案といった運用サポートを提供しております。
チャットボットやボイスボットなどは、本記事でご紹介した通り、導入後の効果測定と運用改善が費用対効果を高める上で極めて重要です。単にツールを導入するだけでなく、しっかりと成果に繋げたいとお考えでしたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
CAT.AIが、導入企業様の運用サポートをどのように行っているか、ぜひ以下の事例記事もご参考になさってください。
この記事の筆者

株式会社トゥモロー・ネット
AIプラットフォーム本部
「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、生成AIと連携したサービス「CAT.AI GEN-Bot」を筆頭に6つのサービスが含まれ、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。