【導入の参考に】ボイスボットの仕組みと作り方をレクチャー
ボイスボットは業務効率化や顧客満足度向上、DX促進を目的にコールセンターを中心に導入が進んでおり、関心を持っている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ボイスボットの基本的な仕組みを始め、活用事例やシナリオの作り方、ボイスボットを選定する際のポイントについて解説します。
ボイスボットを導入する際の参考にしていただけたら幸いです。
ボイスボットとは
ボイスボットは対話型AIや音声認識、自然言語処理などの技術を用いて、電話対応を自動で行うシステムです。高度なAI技術や効果的なシナリオ設計により、人間と話をしているような自然な会話をすることができます。
ボイスボットの基本的な仕組み
ボイスボットは顧客が電話をかけた際、事前に設定されているシナリオを元に自動で応答します。顧客が発話すると内容を瞬時にテキスト化した上で解析を行い、最適な答えを導き出します。導き出した答えをテキスト化し、読み上げることで顧客に回答するという仕組みです。
ボイスボットに使われている代表的な技術
前述のような仕組みを実現するために使われている、代表的な技術は以下のようなものがあります。
- 音声認識
- 自然言語処理
- 音声合成
それぞれ詳しく解説します。
音声認識
音声認識とは、人が発した音声を認識しテキストに変換する技術です。多くの企業で開発が進んでおり、メーカーによって強みが異なります。具体的には住所の認識に強いものや短いフレーズの認識に強いものなど、それぞれの製品により特徴が異なります。
自然言語処理
自然言語処理とは、私たちが日常で使っている言語や音声を認識し、理解、生成する技術です。話し言葉など自然言語特有の曖昧な表現も解析し、発話者の意図を理解することができるため、検索エンジンなどにも搭載されています。
音声合成
音声合成とは、人間のような音声を人工的に生成する技術です。この技術も多くの企業で開発が進んでおり、性別や方言にも対応できるものもありますが、音声合成技術の本来の目的である「スムーズに伝える」という点では、現在の技術はどれもクオリティが高く、どの製品でも全く問題ないと言えるレベルまで上がってきています。
チャットボットやIVRとの違い
類似のシステムとしてチャットボットやIVRが挙げられますが、その特徴は大きく異なります。それぞれのシステムとの違いは以下のようなものです。
ボイスボット | チャットボット | IVR | |
入力方法 | 音声 | テキスト | プッシュボタン |
出力方法 | 音声 | テキスト | 音声 |
ボイスボットは基本的に全て音声でやり取りが可能なことに対し、チャットボットはテキスト上でのやりとりとなるため、電話から入ってきた問い合わせにはチャネル変更の誘導をしなければ対応ができません。IVRは音声での返答は可能ですが、情報の入力はプッシュボタンでの選択肢から選ぶ必要があります。
ボイスボットは顧客の発話内容に沿って柔軟に対応できるため、より円滑で顧客目線に立ったスムーズな案内ができることが大きなメリットです。
ボイスボットの活用事例
ボイスボットはコールセンターを始め、さまざまな業種で活用されています。ボイスボットの活用事例には以下のようなものがあります。
- コールセンター
- 飲食店
- 宿泊施設
- 自治体
それぞれ詳しく解説します。
コールセンター
よくある問い合わせや注文受付など、内容が複雑ではないものをボイスボットが自動対応することによって、オペレーターは個別対応が必要なケースに注力することができます。オペレーター一人当たりの応対件数を減らすことで、業務の負担軽減と効率化に繋がります。
飲食店
飲食店での電話対応にもボイスボットが活躍しています。具体的にはボイスボットは24時間365日応対が可能なため、営業時間外の予約電話にも対応することができ機会損失を防いでいます。また、繁忙時間帯の電話対応をボイスボットが担うことで、スタッフは店舗のお客様対応に注力できるようになり、ここでも業務の負担軽減と効率化に役立っています。
宿泊施設
宿泊施設の予約システムにボイスボットを導入することで、認識ミス防止と業務効率化に繋がります。具体的にはボイスボットが希望日時やプラン、名前のヒアリングまでを自動で行うことで、その後のコールバックをスムーズに行い、一件あたりにかける時間短縮に役立っています。
自治体
自治体の受付時間は基本的に朝8時30分から夕方17時などと限定されていることが多いため、受付時間内に問い合わせや手続き依頼が殺到したり、時間内に来庁困難な住民もいたりという課題があります。
そこでボイスボットが24時間365日自動返答できると、職員はその他の業務にあてる時間を確保でき、住民は時間を問わず問い合わせることができるようになり、職員の負担軽減と業務効率化、住民の満足度向上に役立っています。
ボイスボットに必要なシナリオ設計について
ボイスボットが電話対応をするためには、シナリオ設計が必要です。ボイスボットに必要なシナリオは以下の2つです。
- AIが応答するためのシナリオ
- AIが内容を理解するためのシナリオ
それぞれ詳しく解説します。
AIが応答するためのシナリオ
まずはAIが応答するためのシナリオが必要です。AIは設計したシナリオに沿って発話者と会話を進めていきますので、より自然でストレスの少ないやりとりを実現するには、出来るだけ会話が簡潔になるようなシナリオ設計を意識すると良いでしょう。
AIが内容を理解するためのシナリオ
ボイスボットは音声だけで内容を理解する必要があるため、正確に認識する工夫が必要です。内容を正確に認識するためのポイントとしては、
- 聞き取れない場合は内容を聞き返すようにする
- できるだけ簡潔なやりとりになるようにする
といった2点を意識すると良いでしょう。
ボイスボットの効果を高めるシナリオ作りのポイント
ボイスボットは製品の技術性能だけではなく、シナリオ設計が非常に重要です。効果的にボイスボットを活用させるシナリオ作りのポイントは、主に以下のようなものがあります。
- ガイダンスは出来るだけ短くする
- 音声認識精度を上げる
- 必要な場合は有人対応に切り替える
それぞれ詳しく解説します。
ガイダンスは出来るだけ短くする
長すぎるガイダンスは顧客のストレスとなり、離脱の原因になります。ボイスボットのガイダンスは可能な限り短く、簡潔になるよう意識すると良いでしょう。
音声認識精度を上げる
正確に音声を認識するためには、話し言葉など特有の「表現の揺れ」の対応や、認識ミスを防ぐことが必要です。音声認識精度を上げるためには、以下のような方法があげられます。
- 固有名詞や話し言葉を辞書に登録しておく(辞書登録機能)
- 誤変換を防ぐために名前はカタカナで表記する(人名カタカナ変換機能)
- 数字はボタンで入力してもらう(番号のプッシュ入力機能)
- 音声ログを記録し、内容を顧客に確認してもらう(フォローアップ機能)
これらの機能の有無は製品によっても異なるため、事前に確認することをお勧めします。
必要な場合は有人対応に切り替える
すべての対応をボイスボットで完結することが最適だとは限りません。ボイスボットでは対応が困難なケースや、顧客が有人対応を求めるケースもあるでしょう。
必要な場合は有人対応にすぐに切り替えるシナリオ設計も、顧客と円滑にコミュニケーション取るために必要です。
ボイスボットを選定する際の比較ポイント
ボイスボットは製品によって精度や特徴、使いやすさも異なります。ここではボイスボットを選定する際に比較すべきポイントについて解説します。比較すべきポイントは主に以下のようなものがあげられます。
- 他システムとの連携性
- 自動学習機能の有無
- フォローアップ機能の有無
- 音声認識精度アップを補助する機能の有無
- 同時接続件数の上限
- サポート体制
- 管理画面の使いやすさ
自社の状況によって必要な機能は異なりますので、導入後をイメージしながら読み進めていただくと良いでしょう。それぞれ詳しく解説します。
他システムとの連携性
ボイスボットは、自社で導入している基幹システムとの連携性を考慮して選定することが大切です。例えば、ボイスボットの対応履歴を顧客管理システムと連携することで、住所変更や日時予約など個別の手続きができるようになり、さらなる業務効率化や顧客の利便性・満足度向上を見込めます。
自動学習機能の有無
自動学習機能とは、AIがデータや経験から自動的に学習・改善を行う機能です。自動学習機能がついていないボイスボットの方が安価な傾向にありますが、回答精度を上げるためには人の手による頻繁な管理が必要となり、メンテナンスコストがかかります。顧客からの問い合わせに柔軟に対応するためには、自動学習機能がついたボイスボットが理想と言えるでしょう。
フォローアップ機能の有無
フォローアップ機能の有無および効率的に使えるかを確認すると良いでしょう。ボイスボットでは氏名の漢字や住所の建物名など、音声認識で100%正確に認識することは難しい面があります。そのため、ボイスボットで受け付けた内容をショートメッセージなどで顧客に送信し、確認や修正ができるといったフォローアップ機能があると、誤認識の防止や顧客の安心感に繋がります。
音声認識精度アップを補助する機能の有無
前述の「音声認識精度を上げる」でお伝えした機能が付いているかも重要なポイントです。フォローアップ機能のほかには、辞書登録機能、人名カタカナ変換機能、番号のプッシュ入力機能が挙げられます。認識精度の低さは利用率の低下に繋がるため、できるだけ正確に認識できるような補助機能がついていると良いでしょう。
同時接続件数の上限
顧客からの入電に対して、同時に接続できる件数は製品によって異なります。自社の状況により必要件数は異なりますので、あらかじめ入電件数を把握し、必要な同時接続件数を満たしているボイスボットを選定するようにしましょう。
サポート体制
ベンダーによるサポート体制がどの程度充実しているかによって、ボイスボットの使いやすさは変わります。サポート体制はベンダーによって異なり、システムトラブルの際にすぐに原因を調査・対応してくれる体制があると安心です。
また、シナリオ構築の相談や使い方など運用中の不明点をすぐに聞くことができるとスムーズな運用に繋がり、ボイスボット導入の効果も発揮しやすくなるでしょう。
管理画面の使いやすさ
ボイスボットの使いやすさは製品の仕様や、管理者の知識量によっても異なります。操作に自信が無いということであれば、難しいコードは使用せず直感的に操作できる製品を選ぶと良いでしょう。製品によってはデモ体験が行えるものもありますので、導入前に必ずデモ体験をすることをおすすめいたします。
ボイスボットへの理解を深めて効果的に運用しよう
ボイスボットは、人が対応しているかのようなコミュニケーションを自動で行うことができるツールです。ボイスボットを効果的に活用するためには、搭載された技術だけではなく、どのようなシナリオ設計をするのかが重要です。
シナリオ設計をする際は可能な限り簡潔なやりとりになるよう意識し、できるだけ正確に聞き取るための工夫も必要となります。また自社の状況によって、どのような機能を持ったボイスボットにメリットを感じるかは異なりますので、デモ体験をしながら製品についてしっかり理解してから導入することをおすすめいたします。
ボイスボットを試すならCAT.AIがおすすめ
CAT.AIはボイスボット(音声対話AI)とチャットボット(テキスト対話AI)を同時に利用できる最新の「ナビゲーション型」対話AIです。双方の利点を最大限に活かし、わかりやすくナビゲーションすることで、AI対応の完了率を向上していきます。
簡単にデモ体験も実施いただけますので、チャットボットの導入をご検討の際は是非お試しください。
この記事の筆者
株式会社トゥモロー・ネット
AIプラットフォーム本部
「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、生成AIと連携したサービス「CAT.AI GEN-Bot」を筆頭に6つのサービスが含まれ、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。