AIエージェントオーケストレーション入門:選定と活用のポイント

投稿日 :2026.02.27  更新日 :2026.02.27

AI活用の検討が進む中で、「AIエージェント」や「AIオーケストレーション」という言葉を目にする機会が増えています。単体のAIによる自動化だけでなく、業務全体を見据えた活用が求められるようになり、これらの概念をどのように理解すべきかが重要になっています。

AIエージェントは特定の業務や判断を支援・実行する存在として注目されていますが、実務では単体のAIだけで業務が完結するケースは多くありません。そこで鍵となるのが、複数のAIを連携させながら業務フロー全体を最適化する「AIオーケストレーション」という考え方です。

本記事では、AIエージェントとAIオーケストレーションの違いを整理しながら、業務への活用の考え方を解説します。単体導入に留めるのか、業務全体を見据えた設計に踏み込むのかといった判断の視点を整理することで、自社のAI活用の方向性を検討する材料として活用いただけます。

AIオーケストレーションとは

AIオーケストレーションとは、複数のAIを連携させながら業務全体を最適化する仕組み、あるいはその設計思想を指します。

単体のAIは、特定のタスクを効率化することに強みがあります。例えば、問い合わせに回答する、データを整理する、情報を検索するといったように、個別の役割を担うことに長けています。一方で、実際の業務はこうした単一の処理だけで完結することは少なく、複数の工程が連続しながら成り立っています。

たとえば顧客対応業務を考えると、問い合わせの受付から始まり、内容の理解や分類、必要な情報の検索、回答の作成、対応履歴の記録、さらには改善のための分析まで、いくつもの工程が存在します。それぞれの工程では求められる役割が異なり、同じAIですべてを担うよりも、適した機能を持つAIが連携する方が効率的な場合も多くなります。

AIオーケストレーションは、このような業務の流れ全体を前提に、「どこにどのAIを配置するのが最適か」「どの順序で処理を進めるべきか」といった視点で設計を行うものです。単体の自動化ではなく、業務を一連のプロセスとして捉えることで、部分最適ではなく全体最適を目指す点に特徴があります。

AIエージェントとAIオーケストレーションの違い

AIエージェントとAIオーケストレーションは、それぞれ担う役割や目的が異なります。

役割と導入目的の違い

AIエージェントは、特定の業務やタスクを処理する仕組みです。問い合わせ対応や情報整理など、業務の中の一工程を担い、実際の処理を進める役割を持ちます。

そのため、導入の主な目的は、業務の一部分を効率化し、現場の負荷を軽減することに置かれることが多くなります。具体的には、次のような改善が期待されます。

  • 特定業務の効率化
  • 負荷の軽減
  • 対応スピードの向上

一方、AIオーケストレーションは、複数のAIエージェントをどのように組み合わせ、業務として成立させるかを設計する考え方です。AI同士の役割分担や連携の流れを整理し、業務全体を機能させることを役割とします。

そのため、導入の目的は個別業務の改善にとどまらず、業務構造そのものを整えることにあります。例えば、次のような観点での改善が期待されます。

  • 業務フロー全体の最適化
  • 部門横断の連携強化
  • 将来的な拡張性の確保

得られる効果の違い

この役割と導入目的の違いは、導入によって得られる効果にも表れます。

AIエージェント単体の導入では、特定業務の効率化や対応スピードの向上といった、業務の一部分に対する改善が中心になります。問い合わせ対応の自動化や情報整理の迅速化など、限られた工程に対して即効性のある効果を得やすい点が特徴です。

一方、AIオーケストレーションを前提とした設計では、業務間のつながりまで含めた最適化が可能になります。単なる処理の効率化にとどまらず、業務全体の流れを整えることにつながります。

その結果、例えば次のような変化が生まれます。

  • 引き継ぎ負荷の削減
  • 判断プロセスの一貫性向上
  • 改善の全体への波及

こうした積み重ねにより、業務全体の生産性向上につながりやすくなります。

AIオーケストレーションは業務で何ができるのか

AIオーケストレーションは、単体AIでは難しい「業務のつながり」に働きかけることで、日々の業務の進め方そのものを変えていきます。ここでは、部門ごとにどのような変化が起きるのかを見ていきます。

コールセンター業務

問い合わせ対応においては、対応スピードと品質の両立が常に課題となります。
AIオーケストレーションを活用することで、単なる自動応答ではなく、複数のAIが役割を分担しながら対応プロセス全体を支える仕組みを構築できます。

例えば、問い合わせ内容の理解を担うAI、必要な情報を参照するAI、回答生成を支援するAI、履歴を整理するAIが連携することで、対応の流れそのものを支援できるようになります。
その結果、オペレーターの判断負荷を軽減しながら対応の一貫性を高め、対応時間の短縮と顧客体験の向上を両立しやすくなります。

企画・経営部門

意思決定のスピードが求められる場面では、情報の収集・分析・整理が分断されやすく、全体像を把握するまでに時間を要します。

AIオーケストレーションにて、データ収集を行うAI、分析を担うAI、示唆を整理するAIが連携し、意思決定に必要な情報を一つの流れとして整えられるようになります。
単なるレポート作成支援にとどまらず、意思決定プロセスそのもののスピードと再現性を高められる点が特徴です。

情報システム部門

社内問い合わせやシステム運用では、ナレッジの分散や対応の属人化が課題となることがあります。

AIオーケストレーションを活用することで、問い合わせ受付、ナレッジ検索、対応支援、履歴管理を担うAIが連携し、対応プロセスを一体化できます。
これにより、運用負荷の軽減だけでなく、知見の蓄積と再利用が進み、組織全体での対応品質の底上げにつながります。

営業・マーケティング部門

顧客情報の分析や施策検討では、複数のデータや判断が関係するため、検討プロセスが断片化しやすくなります。

AIオーケストレーションによって、顧客データの整理、分析結果の統合、施策立案を支援するAIが連携することで、意思決定までの流れを一貫して支えることが可能になります。
その結果、データ活用のスピードと質を同時に高められます。

このようにAIオーケストレーションは、単体のAIによる部分的な支援ではなく、複数のAIを連携させて業務の流れそのものを支える仕組みとして機能します。

AIオーケストレーションを検討する前に整理すべき業務設計の視点

AIオーケストレーションを検討する際には、「どのAIを使うか」だけでなく、業務の流れそのものを整理することが重要です。まずは以下のような視点から業務を見直すことが求められます。

判断が発生しているポイントを把握する

業務の中には、単純な処理で完結する工程と、人の判断が求められる工程が存在します。まずは、どこで対応内容の判断や選択が発生しているのかを整理することが重要です。

例えば、以下のような場面が該当します。

  • 問い合わせ内容に応じて対応を変えている
  • 状況に応じて参照すべき情報を選択している
  • データをもとに示唆を導き意思決定している

このような判断を伴う工程では、状況理解・情報参照・出力生成など複数の機能が関係します。そのため、単体AIによる部分支援よりも、役割分担されたAIの連携が効果を発揮しやすくなります。まずは、人が判断や選択を行っている工程を明確にすることが、AIオーケストレーションの適用可能性を見極める第一歩になります。

ボトルネックとなっている工程を特定する

次に重要なのは、業務全体の中で負荷が集中している部分を明らかにすることです。どこに時間や手間がかかっているのかを把握することで、改善の優先順位が見えてきます。

具体的には、次のような工程に着目します。

  • 対応に時間がかかっている
  • 情報収集に手間が発生している
  • 特定の担当者に依存している

こうしたボトルネックは、前後の工程と連動していることが多く、単体のAIでは解消しきれない場合があります。工程をまたいだ支援が必要になる場面では、オーケストレーションによる価値が生まれやすくなります。

業務の流れを整理する

業務は単独の作業ではなく、複数の工程がつながることで成り立っています。そのため、業務の流れを整理することも重要な視点となります。

例えば、次のような流れが考えられます。

  • 情報取得から判断、そして出力までの一連の流れ
  • 問い合わせ受付から内容理解、対応、履歴管理までの流れ

こうした工程を俯瞰して整理することで、どこで情報が受け渡されているのか、どこで手戻りが発生しているのか、どこに人の介在が必要なのかが明確になります。工程が連続する業務では、それぞれを個別に支援するだけでなく、流れとしてつなぐ設計が求められます。

AIエージェントとオーケストレーションをどう選ぶか|導入時の比較ポイント

実際に導入を検討する際には、AIの機能そのものだけでなく、「どのような設計思想で活用するか」を理解することが重要です。特に、単体のAIを活用するのか、それとも複数のAIを連携させる設計を前提とするのかによって、得られる効果や運用のあり方は大きく変わります。

単体AIか、連携型の設計かを見極める

単体AIの活用は、特定の業務課題をピンポイントで改善したい場合に適しています。例えば、問い合わせの一次対応やデータ整理など、明確に切り出せる工程に対して効果を発揮します。スモールスタートが可能であり、短期間で成果を確認しやすい点が特徴です。

一方で、業務全体の流れを見直したい場合には、複数のAIが連携する設計が視野に入ります。情報取得から判断、対応、記録といった一連の流れを支えることで、部分的な効率化にとどまらず、業務全体の最適化につながります。この違いを理解することが、選定の出発点となります。

運用面から見た検討ポイント

設計の方向性を考える際には、日常的な運用への影響も踏まえる必要があります。その際には、以下のような観点が重要になります。

  • 運用負荷
    日々の管理や調整のしやすさに関わります。単体AIは管理対象が限定される一方、連携型では複数の役割が関係するため、全体を見渡した設計が求められます。運用体制に応じた選択が重要になります。
  • 拡張性
    業務の変化に対応できるかどうかに影響します。特定業務に最適化された構成は短期的な効果が期待できる一方で、将来的な拡張が難しくなる場合があります。業務の進化を見据えた柔軟性が求められます。
  • コスト構造
    初期費用だけでなく、運用コストの観点も重要です。単体導入は初期投資を抑えやすい反面、追加導入が重なることで結果的にコストが分散する可能性があります。長期的な視点でのバランスを考える必要があります。

設計時に意識すべき注意点

最後に、導入の際には短期的な改善だけでなく、将来の運用を見据えた視点を持つことが重要です。そのためには、次のような点を意識する必要があります。

  • 部分最適に留まらない構成になっているか
    特定工程の改善だけに注力すると、全体の流れに新たな負荷を生む可能性があります。業務全体の整合性を意識することが求められます。
  • 将来の拡張を妨げない設計か
    新たな業務や役割が追加された際にも対応できる柔軟性が重要です。初期段階から連携を見据えた構成にしておくことで、後からの再設計を避けやすくなります。

このように、導入時には機能の比較だけでなく、業務全体への影響や将来の運用まで見据えた視点が重要になります。

AIオーケストレーションの理解を、実務でどう活かすか

ここまで見てきたように、AIオーケストレーションは単にAIを増やす考え方ではなく、業務の流れの中で役割を分担しながら連携させていく設計の視点です。単体のAIによる部分的な改善と、複数のAIを組み合わせた全体最適化では、得られる効果や適用範囲が異なります。そのため、「どのAIを使うか」だけでなく、「業務をどのように支える構造にするか」を考えることが重要になります。

こうした考え方を実務に落とし込む際のひとつのアプローチが、複数のAIが役割分担しながら業務を支えるマルチAIエージェントという仕組みです。単体のAIでは対応しきれない判断や連携を含む業務において、全体の流れを意識した支援を実現する選択肢となります。

トゥモロー・ネットのCAT.AI マルチAIエージェントでは、業務フローに沿って複数のAIが連携し、それぞれの役割を担うことで、部分的な効率化にとどまらない業務全体の改善を支援します。本記事で整理してきた「業務の流れ」「連携の必要性」といった視点を踏まえながら、実務に適用していくための具体的な形として位置づけることができます。

より具体的に、自社の業務にどのように適用できるのかを検討したい場合は、製品資料をぜひご覧ください。実際の活用イメージや設計の考え方を知ることで、単体AIとオーケストレーション型のどちらが自社に適しているのかを判断するヒントを得ることができます。

この記事の筆者

TOMORROWNET

株式会社トゥモロー・ネット

AIプラットフォーム本部

「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、複数AIエージェントが連携し、業務を自動化する「CAT.AI マルチAIエージェント」など、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。

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