自治体のチャットボット導入は本当に効果が出る?失敗しないための考え方と設計のポイント

投稿日 :2025.03.18  更新日 :2026.04.24

国のDX推進方針を背景に、多くの自治体でデジタル活用が進んでいます。その中でも、住民からの問い合わせ対応を効率化する手段として、チャットボットの導入を検討する動きが広がっています。

一方で、実際に導入を検討する段階になると、「どこまで任せられるのか」「本当に業務負担は減るのか」「生成AIは活用すべきなのか」といった疑問に直面する担当者も少なくありません。導入事例やメリットは多く紹介されていますが、自庁の課題に本当に合うのかを判断するのは簡単ではないのが実情です。

本記事では、自治体におけるチャットボット活用を、機能紹介ではなく“設計の視点”から整理します。できることと難しいこと、生成AI活用の可能性と注意点、単体導入の限界までを順に解説し、庁内で検討を進める際に押さえるべき論点を明確にします。

なぜ今、自治体にチャットボットが求められているのか

自治体でチャットボット導入が進む背景には、いくつかの構造的な課題があります。

問い合わせ増加と電話集中の課題

少子高齢化や制度の複雑化により、住民からの問い合わせ内容は多様化しています。特に転入・転出、戸籍関連、給付金、子育て支援などは、時期によって問い合わせが集中します。繁忙期には電話がつながりにくくなり、窓口の待ち時間が長くなることも珍しくありません。

実際に、戸籍関連の問い合わせをAIで24時間受付する実証に取り組む自治体もあり、電話負荷の分散を図る動きが見られます。こうした取り組みは、問い合わせ対応の「入口」を広げる試みといえます。

参考:【事例】自治体窓口を変えるAIチャットボット導入プロジェクト|CoLabMix

職員負担と業務効率化の必要性

問い合わせ対応は、目に見えにくい業務負担です。電話対応や窓口対応は、他の業務と並行して行われることが多く、集中力の分断や残業の増加につながるケースもあります。

チャットボットは、以下のような業務を補完する役割が期待されています。

  • 定型的な質問への一次回答
  • 開庁時間外の簡易受付
  • 必要な手続きページへの案内

ただし、すべてを代替するのではなく、役割を整理することが前提になります。

「情報はあるのに伝わらない」ホームページの限界

多くの自治体ではホームページを整備していますが、「情報はあるが見つけにくい」という声もあります。制度が複数部署にまたがる場合、住民がどのページを見ればよいか分からないこともあります。

チャットボットは、検索の補助として機能する側面がありますが、ここにも設計上のポイントがあります。


尚、チャットボットの種類(シナリオ型・AI型・LLM型)や選び方について知りたい場合は、以下記事も参考になります。
関連記事:チャットボットとは?種類の違いと選び方をわかりやすく解説

自治体チャットボットで整理すべき対応範囲とは【自動化できる業務・できない業務】

導入を検討する際に重要なのは、「チャットボットに何を任せられるか」と「どこまで人が対応すべきか」を明確に整理することです。ここでは、対応範囲を判断するためのポイントを具体的に見ていきます。

定型的な問い合わせは自動化できる

チャットボットが特に力を発揮するのは、定型化された質問への対応です。例えば、次のようなケースが挙げられます。

  • ごみ分別や収集日の確認
  • 申請手続きの流れの案内
  • 窓口の受付時間や必要書類の案内

粗大ごみ受付のように手順が決まっている業務では、チャットボットと電話を組み合わせることで問い合わせ対応を効率化する自治体の取り組みもあります。このような業務は、自動化によって住民への案内スピードを上げつつ、職員の負担を軽減できる領域です。

個別事情や複雑な相談は人による対応が必要

一方で、住民一人ひとりの状況や複雑な制度を横断する質問は、チャットボットだけで対応するのは難しくなります。たとえば次のようなケースです。

  • 住民の状況に応じた判断が必要な相談
  • 複数制度にまたがる複雑な質問
  • 前提情報が不十分であいまいな表現を含む問い合わせ

こうした場合は、人による確認や判断が不可欠です。自動化できる領域とそうでない領域を明確に分けて設計することが、導入成功のポイントになります。

想定外の質問は運用と改善で対応する

シナリオ型のチャットボットでは、事前に想定した質問と回答を用意します。しかし、制度改正や社会状況の変化により、想定外の問い合わせが増えることがあります。その都度、シナリオを修正し改善していく運用が必要です。

  • 回答の漏れや誤りを定期的にチェックする
  • よくある質問を追加してシナリオを更新する
  • 職員によるフォロー体制を整える

このように運用・改善を組み合わせることで、チャットボットの効果を持続的に高めることができます。


ここで重要なのは、チャットボットですべてを完結させるのではなく、「自動化できる領域」「人が対応すべき領域」「運用でカバーする領域」を整理することです。この整理が、導入の設計を成功させる鍵となります。

自治体向けチャットボットの効果を左右する設計視点【導入前に考えるべきこと】

自治体での問い合わせ対応に活用されるチャットボットは、導入の仕方によって効果が大きく異なります。特に自治体チャットボットは、住民対応や職員の負担軽減を目的に設計することで、より実務的な効果を得られます。ここでは、効果を最大化するための設計の視点を整理します。

導入目的を明確にする

まず重要なのは、「何を解決するために導入するのか」を具体化することです。単にデジタル化の一環として導入しても、十分な効果は得られません。目的を明確にすることで、シナリオ設計やKPIの設定も自然に決まります。

  • 電話対応の件数を減らしたい
  • 窓口や電話の職員負担を平準化したい
  • 住民が必要な情報に迅速にアクセスできるようにしたい

例えば電話件数削減が目的であれば、自治体チャットボットに定型的な問い合わせを任せるシナリオ設計が中心になります。一方、住民利便性の向上が目的であれば、複雑な質問をどう振り分けるかまで設計に組み込む必要があります。

チャットボットと電話・窓口の役割分担を設計する

チャットボット単体だけに注目せず、電話や窓口、Webフォームとの役割分担も整理することが重要です。福祉関連の問い合わせでは、チャットと電話を組み合わせて運用する自治体もあります。

  • 定型的な問い合わせは自治体チャットボットで自動対応
  • 個別事情が関わる相談は電話・窓口で対応
  • 導線を整理し、住民が迷わず問い合わせできるフローを確保

このようにチャネルを横断して設計すると、住民にとって分かりやすく、職員負担も軽減されます。

データ活用と拡張性を見据えた運用設計

チャットボットを単体で導入すると、問い合わせデータが分断され、改善や分析の機会を逃すことがあります。持続的に効果を高めるには、将来的な拡張やデータ活用を見据えた設計が不可欠です。

  • 問い合わせ履歴を一元管理し、改善やナレッジ活用につなげる
  • シナリオ改善や生成AI活用の余地を確保
  • 部署横断での運用ルールを整備し、効果測定が可能な体制にする

この視点を踏まえることで、単なる問い合わせ自動化ではなく、住民対応全体の改善や業務効率化につながる自治体チャットボットの運用が可能になります。

チャットボットだけでは解決できない課題【自治体DXの視点】

チャットボットは便利なツールですが、単独で導入するだけでは自治体の課題がすべて解決できるわけではありません。運用方法やデータの扱いによっては、改善や住民サービス向上に十分活かせないことがあります。

データが分断されるリスク

チャットボットだけで運用すると、問い合わせ内容や回答のデータが各部署やシステムごとに分かれてしまうことがあります。その結果、どの質問が多いのか、どの回答がうまく機能していないのかを把握しにくくなります。分析や改善のサイクルが回らず、せっかくの自動化の効果が限定的になってしまいます。

チャネル連携がない場合の住民体験の問題

チャットボットだけで完結させると、電話や窓口、Webフォームとの役割分担が不明確になり、住民が問い合わせ先を迷うことがあります。例えば、チャットで対応できない質問を電話に誘導する仕組みがないと、住民は二度手間になり、利便性が下がってしまいます。複数のチャネルを組み合わせて、スムーズに案内することが大切です。

制度改正対応と運用体制の整備が属人的になる

チャットボットの回答は、制度や手続きの内容に基づいて作られています。しかし、制度改正や最新情報への更新が担当者の手作業に頼っている場合、属人的な運用になりやすく、住民に最新情報が届かないリスクがあります。更新手順や管理ルールを整備しておくことが、安定した運用には欠かせません。


チャットボットはあくまで一つの手段です。自治体DXの中でどの位置に置くかを考え、データ活用やチャネル連携、運用体制も含めた設計を行うことで、初めて長期的な成果につながります。

自治体におけるチャットボット導入の考え方

自治体向けのチャットボットは、住民対応の効率化や職員負担の軽減に有効な手段です。ただし、チャットだけを導入すれば解決するわけではありません。電話や窓口との役割分担を整理し、どの問い合わせをどのチャネルで受けるのかを設計することが重要です。生成AI(LLM)の活用も含め、全体設計の視点が成果を左右します。

CAT.AI マルチAIエージェント【電話とチャットを組み合わせた新しい問い合わせ対応】

CAT.AI マルチAIエージェントは、電話とチャットを組み合わせて活用できる仕組みを有しています。

たとえば、住民が電話をかけてきた際に音声AIが応答しながら、同時にチャット画面でも案内を表示できます。電話で説明を聞くだけでなく、画面上で手続きの流れを確認したり、選択肢をタップして進めたりできるため、複雑な内容でも理解しやすくなります。

チャット画面では、下記のような対応が可能で、住民が分かりやすく簡単に手続きができるような設計となっています。

  • テキスト入力による正しい住民情報の聴取
  • 図や画像を使った分かりやすい案内
  • カメラ機能を使って書類を撮影し、文字を読み取る(OCR)ことで情報を入力

電話だけでは伝えきれない内容も、画面を併用することでより正確に、スムーズに案内できます。さらに、LLM(大規模言語モデル)とも連携しているため、あらかじめ用意した分かりやすい案内に加え、想定外の質問にも柔軟に対応できる設計が可能です。

当社と自治体での実証事例(横浜市・豊橋市・習志野市)

① 横浜市

「転入・転出・転居に関する問い合わせ」について、CAT.AIの実証を実施。24時間対応と職員負担の軽減を目指した。
■関連プレスリリース:https://cat-ai.jp/topics/news-20231226/

② 豊橋市

「障害福祉分野の問い合わせ対応」において、CAT.AIを活用した実証を実施。福祉サービス案内の効率化と住民利便性の向上を目指した。
■関連プレスリリース:https://cat-ai.jp/topics/topic-news-20230912/

③ 習志野市

「マイナポイント関連の問い合わせ」を対象にCAT.AIを導入し、期間中の24時間対応を実施。問い合わせ集中への対応策として活用。
■関連プレスリリース:https://cat-ai.jp/topics/news-20230831/


具体的なCAT.AI マルチAIエージェントの仕組みや特長については、製品資料でまとめていますのでぜひご活用ください。

この記事の筆者

TOMORROWNET

株式会社トゥモロー・ネット

AIプラットフォーム本部

「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、複数AIエージェントが連携し、業務を自動化する「CAT.AI マルチAIエージェント」など、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。

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