顧客満足度(CS)からカスタマーエクスペリエンス(CX)へ|コールセンターが実現する次世代の顧客体験とは

商品やサービスの機能や価格では他社と差別化しにくくなっている中で、顧客満足度(CS)だけにとどまらない顧客体験の質(カスタマーエクスペリエンス:CX)の向上が企業価値を左右する重要な指標となっています。
特に、顧客と企業の貴重な接点であるコールセンターにおける対応は、単なる問題解決窓口に留まらず、顧客に良い体験を提供することができれば、リピーターの獲得やポジティブな口コミの拡散、競合他社との差別化にも繋がるなど、CX向上において重要な役割を担っています。
本記事では、企業がCXを戦略的に取り入れるべき理由を踏まえたうえで、コールセンターを中心としたCX向上施策について、具体的な事例を交えながら分かりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください。
Index
カスタマーエクスペリエンス(CX)の概要
CXとはカスタマーエクスペリエンス(以下、CX)の略で、「顧客体験」あるいは「顧客体験価値」と訳され、顧客が商品及びサービスを購入・利用する際の体験だけでなく、購入前や購入後も含めた一連の体験全体を指します。
例えば、問い合わせ時のコールセンターの対応が良かったことで企業へ高い信頼を寄せたり、ネットニュースやコマーシャルを見てブランドの商品に関心を抱いたり、商品購入後も手厚いサポートを受けて感動したり、といった感情を伴う体験もCXに含まれます。
顧客満足度(CS)との違い
CXと混同されやすい用語として「顧客満足度(CS)」があります。どちらも顧客の満足度を高めるための重要な取り組みですが、その範囲や視点が異なります。
顧客満足度(CS)は、顧客の商品・サービスそのものに対する満足度を測るものであるのに対し、CXは商品やサービスに加え、顧客接点や感情など、顧客の全体的な体験価値に重きを置いている点が大きな違いです。
つまり、顧客満足度はCXの一要素であり、CXを包括的に捉えることで、顧客との長期的な関係性を構築できるようになります。
コールセンターでCXが重要視される理由
企業の持続的な成長には、商品やサービス自体の価値だけでなく、購入や利用に関する全てのフェーズで顧客に良質な体験を提供する必要があります。
そして、顧客との直接的な接点となるコールセンターにおいても、CXを意識した取り組みが求められているのです。
ここでは、コールセンターでCXが重要視される背景について解説します。
複雑化する顧客接点への対応
従来は実店舗での購入が主でしたが、インターネットが普及した現在では、オンラインショップやSNSなどから商品やサービスを購入・利用するケースが増加しています。
そして、企業への問い合わせも、従来の対面や電話などのアナログな方法から、Webサイトやアプリケーション、SNSを利用するなど、顧客接点のデジタルシフト化が加速しています。それに伴い、顧客目線での導線や検索効率などが求められています。
競合他社との差別化
競合他社との差別化を図るうえでも、CXを意識した取り組みが求められます。類似商品やサービスが溢れる現代社会において、競争優位に立つためには商品やサービスのみならず、購入前の不安解決、購入後のアフターサービスなど、顧客の体験価値を高める必要があるのです。
優れた顧客体験という付加価値をつけることで、他社と差別化され、自社商品・サービスを選択してもらいやすくなるでしょう。
口コミの影響力の高まり
SNSの普及により、誰もが手軽に口コミが行える環境になっています。口コミの拡散は企業にとって大きな宣伝効果となる反面、ネガティブな情報も広まりやすいといった側面があります。
そのため、CX向上に注力し、企業価値を高め、好意的な口コミを増やすことが企業のイメージにも直結するでしょう。
リピーターの獲得
コールセンターにおける優れた顧客体験は、リピーターやファンの獲得に繋がります。
さらに、リピーターを育成すれば、ロイヤルカスタマー(継続的に利用してくれる顧客)へ成長する可能性があり、リピート率や購買単価のアップなどが期待できます。
これにより、盤石な売上基盤が構築できるため、収益の安定化に繋がることが期待されます。
コールセンターにおけるカスタマーエクスペリエンスを向上させる方法

顧客と直接的な接点を持てるコールセンターは、問い合わせやアフターサービスなどさまざまなフェーズで顧客体験を提供できます。
そのため、部署内に留まらず、企業全体に影響を与えるケースも多く、良い顧客体験ができて企業価値が上がる場合もあれば、負の体験となって顧客離れに繋がる恐れもあるため、常に顧客目線で施策を行う必要があります。
ここでは、コールセンターでCXを向上させるための具体的な施策についてご紹介します。主な施策は以下の通りです。
- カスタマージャーニーマップを作成する
- ITツールを導入した顧客情報管理を行う
- オムニチャネル対応を強化する
- 顧客向け・オペレーター向けのFAQを充実させる
それぞれ見ていきましょう。
カスタマージャーニーマップを作成する
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品・サービスの購入、会員登録といった意思決定に至るまでのプロセスをまとめて可視化したものを指し、顧客体験を効率的にマネジメントし、マーケティング施策を適切に行うために用いられます。
カスタマージャーニーの作成により、「顧客の悩みは何か」「どのような情報を求めているのか」「どのような商品・サービスに興味を示すか」など顧客目線で考えられるため、結果として適切な対応を実現でき、顧客体験の向上が見込めるでしょう。
具体的な作成方法としては、「資料請求→問い合わせ→購入→アフターサポート」といった各ステップで顧客が感じる不満や期待を洗い出し、改善点を視覚化するなどがあります。
ITツールを導入した顧客情報管理を行う
顧客一人ひとりに合わせた対応を行うために、顧客管理システム(CRM)などのITツールを導入して顧客管理を行うことも有効です。これらのツールを活用することで顧客情報が一元管理できるようになり、情報共有の効率化や業務効率化に繋がり、ひいてはCX向上にも良い影響が期待できるでしょう。
CRMを含む、CX向上に役立つツールについては次項で詳しく解説しますので、ぜひそちらもご参考になさってください。
オムニチャネル対応を強化する
顧客が企業とコミュニケーションをとる際に、さまざまなチャネルがあれば、顧客はその中から好きなチャネルを選び、一貫性のあるサポートを受けられます。
そのため、顧客が自身の都合に合わせてチャネルを選択できるよう、電話やメールだけでなくチャットボット、SNSなど複数のチャネルを設けると良いでしょう。また、その際は複数のチャネルの移行がスムーズに行えるようにし、サポートが途切れないよう設計することも重要です。
顧客向け・オペレーター向けのFAQを充実させる
顧客向けのFAQ、オペレーター向けのFAQをそれぞれ充実させることもCX向上に繋がります。
例えば問い合わせが集中することで電話が繋がりづらい場合、顧客にストレスを与えてしまいます。そこで、顧客向けFAQを充実させることにより、顧客が自己解決できる体制を整え、問い合わせの手間の軽減が期待されます。
またオペレーター向けFAQも充実させることで、対応品質の平準化に繋がります。
CX向上に効果的なFAQの作成には、過去に寄せられた問い合わせなど、頻繁に寄せられる情報を洗い出すようにしましょう。
CX向上に繋がるツール
ここでは、CX向上に繋がる具体的なツールについて解説します。主なツールとしては以下が挙げられます。
- CRM(顧客管理システム)
- ボイスボット
- チャットボット
- ポップアップツール
- マーケティングオートメーション(MA)
- Web解析ツール
それぞれ詳しく解説します。
CRM(顧客管理システム)
CRM(顧客管理システム)は、「Customer Relationship Management」の略で、顧客との良好な関係を維持・構築することを目的としたシステムです。
具体的には、住所や氏名、購入履歴や問い合わせ履歴、Webサイト上での行動などの顧客情報を一元管理するシステムを指し、顧客との関係を向上させるアプローチとして有効です。
これまで一部の担当などに依存していた顧客管理が一元化できるため、情報共有が容易になります。その結果、よりスムーズで高品質な顧客対応が可能になり、顧客満足度と生涯顧客価値の向上に繋がります。
ボイスボット
ボイスボットは、人工知能(AI)を活用した自動音声対話システムを指し、音声認識や自然言語処理などの技術を活用して自動応答を行えるものです。
コールセンターにボイスボットを導入すると、顧客からの入電に自動応答させることができるほか、問い合わせ内容によってはボイスボットだけで問い合わせ対応を完了させることも可能です。
人手不足による待ち時間の解消にも繋がるため、顧客のストレスを大きく軽減でき、CX向上にも大変有効です。
チャットボット
チャットボットは、顧客からの問い合わせに対して、テキスト上で自動的に応答するプログラムを指します。
チャットボットは大きく「シナリオ型」と「AI型」の2つに分けることができ、シナリオ型は事前に登録したシナリオをもとに、問い合わせ内容に対応する回答を自動で返す仕組みです。AI型は顧客のメッセージをAIが解析し、膨大な学習データなどをもとに適切な回答を返す仕組みです。
チャットボットは電話やメールと比較して待ち時間がほぼなく自己解決ができる傾向にあるため、顧客の満足度低下の防止に繋がります。さらに、顧客との対話データを蓄積して顧客のニーズや行動傾向を分析することもできるため、パーソナライズされた情報やサポートの提供に役立ちます。
ポップアップツール
ポップアップツールは、サイト上でユーザーの行動や状況に合わせ、適切なタイミングでポップアップを表示する機能です。具体的には、クーポンやキャンペーン案内、問い合わせへの誘導、サポート対応など、様々な目的で利用できます。
顧客の行動に基づいたポップアップでの情報提供やサポートを自動で行うことで、カスタマイズした対応や離脱防止に繋がります。
ただし、表示タイミングが悪いポップアップや閉じづらいポップアップは、かえってユーザーのストレスとなる恐れがあるため、導入する場合は、顧客にとって有益な情報を提供し、ストレスを与えない設計にする必要があるでしょう。
マーケティングオートメーション(MA)
マーケティングオートメーション(MA)は、マーケティング活動に関わる業務を自動化できるツールです。
例えば、ユーザーが特定のキーワードで検索した際に自動で広告を表示するようにしたり、特定の条件を満たしたユーザーに対してのみメールを自動配信したりする機能があります。
このように、顧客の属性、行動、興味関心などを分析し、顧客が興味を持ちそうな情報をピックアップして適切なタイミングで顧客にアプローチするため、効率的なマーケティング活動が可能となります。
Web解析ツール
自社の運営するWebサイトなどのアクセス状況や、顧客のサイト上での行動などを解析するもので、主にCX向上施策に関する仮説検証をするために活用されるツールです。
Web解析ツールの導入でサイトへの訪問者数やPV(ページビュー)数やUU(ユニークユーザー)数、滞在時間、訪問者の行動などを細かく分析することができます。
それにより、サイトの課題や改善するためにすべき行動が明確になるため、顧客が求める体験に近づけることができ、CX向上に繋がります。
コールセンターの顧客体験を向上させ、企業価値を高めよう!
顧客接点が多様化し、競争が激化する現代社会においては、商品やサービスそのものの品質や価格だけでは、他社と明確な差別化を図るのが難しくなっています。こうした背景から、購入前から購入後まで、あらゆるフェーズで顧客に「良質な体験」を提供することが、企業成長のカギとなっています。
特に、問い合わせやサポートといった顧客との直接的な接点においては、その対応の質が顧客満足だけでなく、企業への信頼やブランドイメージに直結します。
そのため、ただ最新のツールを導入するだけでは不十分です。重要なのは、顧客の視点に立ったシナリオ設計と、導入後の運用改善をCXの視点で継続的に行うことです。
コールセンターにおけるCX向上には、顧客がストレスなく自己解決できる環境の整備や、多様なチャネルでの一貫したサポートが求められます。しかし、これらを人的リソースだけで実現するには限界があります。
トゥモロー・ネットが提供するCX-Botは、音声対話(ボイスボット)とテキスト対話(チャットボット)の強みを組み合わせた、「ナビゲーション型」の対話AIです。
例えば、FAQだけでは解決が難しい複雑な問い合わせに対しても、音声とテキスト(入力フォームや選択肢の提示など)を組み合わせることで、ユーザーを段階的にナビゲートし、自己解決を促進します。また、複数のチャネルを跨いだ際の情報連携もスムーズに行えるため、顧客はどのチャネルから問い合わせても一貫したサポート体験を得られます。音声とテキストの両方を活用し、「聴覚」と「視覚」の両面からユーザーをガイドすることで、初めての方でも直感的に操作でき、ストレスなく課題解決へと導きます。
CXを意識した体験設計において、CX-Botは単なる自動応答ツールではなく、「顧客に寄り添う案内役」として機能します。
AIボイスボット×チャットボットで新しい顧客体験を提供するCX-bot
導入をご検討の方に向けて、シナリオ設計のポイントや運用改善の資料をまとめています。是非ご活用ください。
この記事の筆者

株式会社トゥモロー・ネット
AIプラットフォーム本部
「CAT.AI」は「ヒトとAIの豊かな未来をデザイン」をビジョンに、コンタクトセンターや企業のAI対応を円滑化するAIコミュニケーションプラットフォームを開発、展開しています。プラットフォームにはボイスボットとチャットボットをオールインワンで提供する「CAT.AI CX-Bot」、生成AIと連携したサービス「CAT.AI GEN-Bot」を筆頭に6つのサービスが含まれ、独自開発のNLP(自然言語処理)技術と先進的なシナリオ、直感的でわかりやすいUIを自由にデザインし、ヒトを介しているような自然なコミュニケーションを実現します。独自のCX理論×高度なAI技術を以て開発されたCAT.AIは、金融、保険、飲食、官公庁を始め、コンタクトサービスや予約サービス、公式アプリ、バーチャルエージェントなど幅広い業種において様々なシーンで活用が可能です。